2022年11月11日に発表された、HENNGE株式会社2022年9月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:HENNGE株式会社 代表取締役社長兼CTO 小椋一宏 氏
HENNGE株式会社 取締役副社長 天野治夫 氏

2022年9月期決算説明

小椋一宏氏(以下、小椋):みなさま、こんにちは。HENNGE株式会社代表取締役社長の小椋でございます。当社グループの決算説明動画をご視聴くださいまして、ありがとうございます。

本日は、取締役副社長の天野より、2022年9月期の通期業績についてご説明した後、私から2023年9月期の業績見通しと成長戦略についてご説明します。どうぞよろしくお願いします。

連結業績サマリー (対前年同期比、12か月累計比較)

天野治夫氏(以下、天野):天野治夫でございます。それでは2022年9月期の連結業績についてご説明します。

連結業績サマリーは、スライドのとおりです。2022年9月期はHENNGE One事業の売上高が若干予想を下回ったため、第3四半期の説明会でお伝えしたとおり、連結売上高は通期業績予想に対し、若干の未達となりました。

営業利益以下の各段階利益については、通期業績予想を上回る結果となりました。

売上高の推移

連結売上高の四半期ごとの推移は、スライドのとおりです。HENNGE One事業の売上高については、すべてリカーリングの性質の売上高であり、これまでと変わらず四半期ごとに増加する傾向となっており、順調に推移しています。

売上高 (対前年同期比、12か月累計比較)

連結売上高の前年同期比は、スライドのとおりです。HENNGE One事業の売上高は、主に第1四半期に新プランに関する既存のお客さまへの対応に営業工数がかかったことで、新規のクロージングに影響が出てしまいました。そのため、通期業績予想には達しなかったものの、第2四半期以降は順調に増加した結果、前年同期比で堅調に推移しました。

売上総利益の推移

売上総利益および売上総利益率の四半期ごとの推移は、スライドのとおりです。

売上総利益 (対前年同期比、12か月累計比較)

売上総利益および売上総利益率の前年同期比は、スライドのとおりです。引き続き、売上総利益率は高い水準を維持しています。

営業費用の構造 (対前年同期比、12か月累計比較)

営業費用の構造の前年同期比は、スライドのとおりです。広告宣伝費については、HENNGE One新機能に関連した広告やTVCMなどのコンテンツ制作、各種イベントを実施した結果、前年同期比で同水準の費用を計上しました。

業務委託費については、新プランの販売促進や各部署の人員不足を補うために増加しました。

営業費用の構造 (対前四半期比)

営業費用の構造の前四半期比は、スライドのとおりです。第4四半期においても、2022年9月期の方針で掲げていたとおり、今後の成長につながると考えられる活動を中心に、費用を投下しています。

広告宣伝費については、2022年8月より新たなキャンペーンを開始し、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の主要ターミナル駅で交通広告を展開した結果、前四半期比で大幅に増加しました。

人件費については、2022年7月の社内制度の見直しなどにより増加しました。

その他販管費については、主に積極的に採用活動を実施したこと、また、行動制限の緩和に伴い、出張が増加したことなどから、前四半期比で増加しています。

売上高と営業費用の推移

売上高と営業費用の四半期での推移は、スライドのとおりです。

従業員(アルバイトを含まず)の構成

2022年9月期末時点での従業員の構成と人数は、スライドのとおりです。

従業員(アルバイトを含まず)の推移と構成

従業員数の過年度からの推移は、スライドのとおりです。2022年9月期は3月以降、海外からの入国制限が緩和されたことで、海外内定者が入国できるようになり、主に研究開発人員が増加しました。

また、新卒、中途ともに採用活動は順調に進捗しましたが、入退社数のバランスが悪化した影響により、第3四半期の決算説明会でご説明したとおり、期初目標の50名純増には届かず、第4四半期は前期末比30名の純増となりました。引き続き、体制強化に課題が残っている状況です。

キャッシュ・フローの状況 (対前年同期比、12か月累計比較)

キャッシュ・フローの状況です。営業キャッシュフローはHENNGE Oneの契約実績の増加などにより、前年同期比で大幅に増加しました。そのため、現預金残高は前年同期比で順調に伸びています。

事業トピックス

次に、事業の進捗についてご説明します。事業トピックスはスライドのとおりです。

第4四半期の広告宣伝活動について

第4四半期には、スライドに記載しているような広告宣伝活動を実施しました。2022年7月に開催された「Japan IT Week 名古屋」に出展しました。

また、2022年8月より『ウルトラマン』をイメージキャラクターにしたキャンペーンを強化し、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の主要なターミナル駅周辺で交通広告を展開しました。

ご紹介した活動以外にも、来期以降のARR成長に資する多層的な広告宣伝活動を実施しました。

HENNGE One KPIのハイライト (対前期末比、12か月進捗)

KPIの進捗についてご説明します。前期末からのHENNGE Oneの各KPIの進捗は、スライドのとおりです。

HENNGE One KPI (対前年同期末比)

また、HENNGE OneのKPIの前年同期末比は、スライドのとおりです。

HENNGE One 平均月次解約率の推移

平均月次解約率は、スライドのとおりの結果となりました。引き続き、非常に低い水準を維持しており、理論上の平均契約年数は30年以上になっています。

HENNGE One 契約企業数と契約ユーザ数の推移

契約企業数と契約ユーザ数の四半期ごとの推移は、スライドのとおりです。引き続き、営業体制の強化に課題が残っていますが、新規契約企業数は順調に増加しています。

契約ユーザ数は、販売パートナーとの連携強化により、前四半期に引き続き、当四半期も比較的小規模な企業のご契約が多かったことから、ご覧のような増加幅となりました。

HENNGE One ARRとARPUの推移

ARRとARPUの四半期ごとの推移は、スライドのとおりです。当四半期のARPUは2021年10月以降、新規顧客に対しては新料金プランで販売していることや、2022年9月期末時点において、約2,000社の既存顧客のうち3割弱が新プランへ移行したことなどの複合的な要因で上昇しています。その結果、ARRは堅調な水準での着地となりました。

2023年9月期の方針

小椋:続いて、2023年9月期の通期業績見通しについてご説明します。2023年9月期の方針は、HENNGE Oneの中期的なARR成長の加速を目指し、積極的なマーケティング活動を継続しつつ、人材獲得力の向上による体制強化を図ることです。

HENNGE One事業については、契約企業数とARPUの向上によって、ARRの年間20パーセント以上の持続的な成長を目指します。

マーケティング活動については、お客様とのリアルな対話を重視する各種イベントを開催するなど、大手企業、販売パートナー、既存顧客など特定の層に重点をおいたアプローチを試みます。

また、引き続き、当社や当社サービスの認知向上のための幅広い広告宣伝、例えばネット、雑誌広告、交通広告、TVCM等も実施します。

人員計画については、今後の成長のための全方位的な採用を行い、全社で45名以上の純増を目指します。新規顧客獲得体制強化のため、特にIT営業経験者を重点的に増強します。また、昨年度に引き続き、人材獲得力の向上に資するような各種施策を検討していきます。

連結業績見通し (通期)

連結業績見通しは、スライドのとおりです。HENNGE One事業については、今後も中期的に20パーセント以上の成長を目指していきます。

2023年9月期は、引き続き、マーケティング活動を継続しつつ、人材獲得力を強化していきます。これらの活動の結果、今期の営業利益や当期純利益は増益を見込んでいます。

売上高の推移 (通期)

事業別の売上高の実績および2023年9月期の見通しは、スライドのとおりです。

営業費用(原価+販管費)の推移 (通期)

広告宣伝費と広告費を除いた営業費用の実績および2023年9月期の見通しは、スライドのとおりです。

広告宣伝費については、2023年9月期の方針にも掲げているとおり、当社や当社サービスの認知向上のための幅広い広告宣伝活動を実施することにより、これまでと同程度の水準で広告宣伝費の投資を行っていきます。

広告宣伝費を除いた営業費用については、主に従業員の増加や人材獲得力強化にかかる費用等、来期以降の成長のための費用投下を積極的に行っていく予定です。

Vision

最後に、当社の成長戦略についてご説明します。HENNGEの経営理念は「テクノロジーの解放」です。私たちはテクノロジーが大好きで、テクノロジーが世の中を良くしていくと強く信じています。

この力をできるだけたくさんのお客さまに届けることによって、世の中を少しでも良い方向に動かしたいというのが私たちの思いです。

HENNGEは創業以来25年以上、この「テクノロジーの解放」を理念として掲げており、さまざまな分野、さまざまな方法でテクノロジーを解放してきました。

その結果、SaaSはテクノロジー解放のための最もフェアで洗練された効率的な手段であるという考えに至っています。

そのため、私たち自身もSaaSを提供していますし、お客さまのSaaS活用を通した変革を応援していきたいと考えています。

LTV最大化

このようなテクノロジーの解放を通して、私たちがお客さまに届けているテクノロジーの総量、理念の実現の証左となるのがLTV(Life Time Value)、すなわち私たちが保有している契約の総価値です。

私たちの成長戦略は、このLTVの最大化を目指しています。現在、平均契約年数「Y」と売上総利益率「r」はすでに高い水準にあります。したがって、LTVの最大化にはARRの最大化が必要という状況です。

そのため、私たちは直近の営業利益の水準にこだわりすぎることなく、将来への投資を積極的に行い、ARRを積み増していきたいと考えています。

ARR最大化

ARRは、さらに3つの要素に分解できると考えています。契約企業数の「N」、平均ユーザ数の「n」、ユーザあたり単価のARPUです。

成長戦略の進捗 (HENNGE One)

HENNGE Oneにおける3つのKPIの実際の推移は、スライドに記載のとおりです。HENNGE Oneを主力とする当社グループのビジネスは、基本的にサブスクリプションモデルです。

当期中に獲得した契約は、解約されない限り積み上がり 翌期以降の売上の基盤となっていきます。スライドのとおり、HENNGE OneのARRは順調かつ安定的に積み上がっていることがわかると思います。

ARRの安定的な成長が見られる一方で、分母の拡大による成長率の鈍化が課題となっていました。しかし、2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大によって企業の行動様式が大きく変化しており、これからSaaSやクラウドの利用が拡大していくと確信しています。この機会を捉えるべく、ARRの成長率の変曲点を作るための3ステップをまさに今、実施中です。

1ステップ目は、2021年9月期に実施しました。全国のデシジョンメーカーや販売パートナーなど、より幅広い層にHENNGE Oneの強みやHENNGEブランドを認知してもらうため、積極的なマーケティング費用の投下を行い、また新機能をリリースし、新プランを発表しました。

2ステップ目は2022年9月期の施策で、2021年度に発表した新機能と、それに基づくHENNGE Oneの新プランを、主に新規顧客向けに展開しました。入退社数のバランスが悪化した影響で人員不足の状況が続いたため、ARR成長率は20パーセントに若干届かなかったものの、新規のお客さまのみならず、一部の既存のお客さまにも新プランを導入していただくことができ、「N」、ARPUともに堅調に増加させることができました。

3ステップ目である2023年9月期には、この新機能と新プランを既存のお客さまにも展開していきます。これらの3つのステップを通して、「N」、ARPUの両方に作用する成長サイクルを作っていきたいと考えています。

2023年9月期以降の成長戦略

これまでにご説明したような活動を通して、CAGR20パーセント台中盤となる、中期的なARR成長を実現します。まずは、HENNGE OneのARRで100億円以上の水準を目指します。認知度や接触可能な潜在顧客の数を向上させつつ、営業体制や販売パートナーとの連携を強化し、新機能の開発とリリースを行い、HENNGE Oneの付加価値を上げていきます。

このようなサイクルを継続的に行うことで、その先も成長を続けていけるようなモデルを確立したいと考えています。

お客様の変革を応援するHENNGE One

HENNGE Oneは、2011年に単一の機能からなるサービスとしてスタートして以来、機能を徐々に追加し、これまで5つの主要機能と1つのオプションからなる、IDaaSとして展開してきました。2022年10月には3つの新機能を追加し、2022年4月には、さらに新たな機能として「HENNGE Connect」を追加しました。

また、2023年9月期もHENNGE Oneの新機能をリリースしていくだけでなく、HENNGE Oneユーザ企業のニーズに合った新サービスも提供していく予定です。

今後も、お客さまに届けるテクノロジーの総量を最大化するために、SaaS活用の分野で必要となる機能をどんどん追加し、SaaS活用によるお客さまの生産性向上を強力にバックアップしていきます。

SaaSプラットフォームとしてのHENNGE One

HENNGE Oneは、お客さまがSaaSを活用すればするほど価値が高まる性質の、IDaaSを中核としたプラットフォームです。今後も私たちは、日本全国の企業でクラウドサービスの利用が拡大する流れを後押しするとともに、そのような流れの中でSaaS各社との連携を深めながら、SaaSプラットフォームとしての成長を図っていきたいと考えています。

以上、駆け足でしたが、当社の2022年9月期通期決算についてご説明しました。本日はお忙しい中、当社の決算説明動画をご視聴くださいまして、誠にありがとうございました。

質疑応答:2四半期連続で契約企業数の獲得が高水準な背景と今後について

質問者:HENNGE Oneの契約企業数について、第4四半期もSMB(Small and Medium Business)中心の契約であったとのことですが、第3四半期にはSMB中心の契約だが継続性はないとのご説明でした。しかし、今回の第4四半期も第3四半期と同様に過去の水準よりも高く、前四半期比プラス74社となっています。2四半期連続、高水準で獲得できているということは、継続性がないのではなく、過去の取り組みの成果が表れてきているのでしょうか? 背景と今後の見方について教えてください。

天野:スライドに記載のとおりではあるのですが、四半期ごとにどのような規模の会社を獲得できるかについては、2四半期連続の数字を見ただけではわからないと考えています。

これから先、現在の平均ユーザ数の規模を上回るような案件が多く獲得できる四半期も出現してくると見ています。そのため、今後も引き続きスモールサイズの数字がずっと続いていくわけではないと考えています。

小椋:代理店との協業の成果が少しずつ出てきており、それが底堅くなってきていると現場としては感じています。

天野:ベースの数として、四半期ごとに中小型案件を安定して獲得できるようになってきていると思います。

質問者:フォローアップでうかがいたいのですが、過去のイベントの取り組みによって、御社への引き合いが分母に溜まり、成果として出てきていると考えてもよいでしょうか?

天野:大型の広告宣伝を開始して2年が経過し、3年目も同規模のマーケティングを行っていく予定です。その中で、当然、事業が拡大していることに加え、パイプラインについても一定の拡大傾向にあるとご理解いただいてよいと思います。

質疑応答:2023年9月期のARRの前提について

質問者:2023年9月期のARR、N・n・ARPUの前提とその中身について、イメージで構いませんので可能であれば教えてください。特に料金改定の影響がARPUに寄与すると思います。2022年9月期、既存のお客さまの3割弱が料金改定したということで、残りのお客さまの料金改定がARR成長率20パーセント以上という目標に寄与していくものなのでしょうか?

天野:毎期ご質問いただくのですが、ARRの構成要素ごとの目標数字はお伝えしていません。申し訳ありません。

先ほどのご質問とも関連しますが、「n」に関してはコントロールできない数字だと認識していますので、基本的には「N」、ARPUによってARRを高めていきたいと考えています。そのうちARPUに関しては、新しいプランへの移行促進と新規販売によって、より高めていきたいと考えています。

質疑応答:2022年9月期のARR成長率が20パーセントに届かなかった要因について

質問者:母数が大きくなっている中で、2022年9月期のARR成長率18パーセント程度と、ARR成長率が変わらないのは素晴らしいことだと思っているのですが、御社が目指す20パーセントを割っているのは、何がボトルネックになっていると考えていますか? ご説明の中で営業人員不足というお話もありましたが、ボトルネックになっていると感じる部分はどのあたりでしょうか?

小椋:スライドにも記載のとおり、やはり営業人員不足が最大のボトルネックだと思っています。2022年9月期に関しては、期初の計画で50名くらい純増する予定だったものの、入退社数のバランス等が想定どおりにいかなかったことがあり、思うように営業力を強化できなかったことが反省点です。

2023年9月期に関しては、計画どおりに強い営業体制、カスタマーサクセス部隊を作っていくことが、一番の課題だと思っています。同時に、成長率を上げていくことも課題だと考えており、そのためには、「N」だけではなくARPUも一緒に向上させなければならず、キーである営業人員を安定的に獲得し、その人員がしっかり成長し、提案力を上げていく母体を作る必要があります。

2022年9月期は、採用は堅調に進捗した一方で、他のSaaS企業や米国企業に引き抜かれたことから、入退社数のバランスが悪化してしまいました。

そのため、引き続き採用にしっかりコミットしていくとともに、既存の社員をリテンションできるような魅力的なキャリアプランを社内に作っていくことなどをしています。

つまりボトルネックは営業力で、向上させたいのは契約企業数の「N」とユーザあたり単価のARPUですが、結局のところ、ARPUを上げていくためには、対お客さまのフロントにいるセールス、あるいはカスタマーサクセスの機能を充実、強化させることが重要だと思っています。

質疑応答:ARR成長率の角度が変わる時期について

質問者:御社の事業は前期、前々期が種まきの年で、環境としても、これから刈り取りの年に近づいていくと思います。その中で御社が、このボトルネックを解消され、成長角度が変わっていく時期は、どのあたりだとお考えでしょうか?

小椋:2023年9月期の見通しについては開示しているとおりです。一方で、2025年9月期までに100億円のARRを目指す目標もありますので、成長角度をさらに上げ、成長率、成長スピード自体を加速していく必要もあります。

成長加速のキーの1つは、コロナが本当の意味で収束を迎え、企業のIT投資のステージがもう一段階進むことだと捉えています。

しかし、当初の見通しにあったような、コロナが早急に終わり、みんながクラウドを活用したワークスタイルに移行するという道筋にはまだ至っておらず、想定より時間がかかっています。

一方で、営業部隊の組成やセールス力の強化についても、思ったように進んでいないところがありますので、見通しとして、今後2年から3年の間にこれらの課題が解消され、それに合わせて私たちの成長が加速していくというようなシナリオを描いています。

質疑応答:広告宣伝費が今後減る可能性について

司会者:「広告宣伝費が減り始めるきっかけ、または計数目標は何でしょうか?」というご質問です。

天野:大きな金額で広告宣伝費を計上し始めて3期目に入りますが、2024年9月期以降の広告宣伝費の水準については、それまでの効果を確認しながら、毎期考えていきたいと思っています。

小椋:広告宣伝費を投下すると、それ以上に成長が加速し、獲得できるARRも多くなっていくという理想的な状態が続いている限り、広告宣伝費を投下したほうが将来のARRを積み増せる状況だと理解しています。

計数目標は公表していないのですが、今のところ、広告宣伝費を投下することで翌期のARRも伸びている状況ですので、広告宣伝費を絞るきっかけは起きづらいと考えています。

質疑応答:新サービス「tadrill」の強みや狙いについて

司会者:「顧客の地域ごと、業界ごとで引き合いが強く、今期伸びそうなサービスは何でしょうか? 『tadrill』について、どのような強みがあって、何向けで、どのような成長を狙っているかについてお教えください」というご質問です。

小椋:地域、業界ごとの動向は公表していませんが、実地の肌感覚からお伝えすると、東京は比較的課題が先進化しています。一方で、東京以外の地域ではクラウドの導入など、手前の段階のお客さまが多いと感じており、どの地域に関しても、クラウドへの移行、あるいはクラウド活用に関する課題があると思っています。

現在、東京、名古屋、大阪、福岡、さらに台湾で拠点を構えサービスの展開をしていますが、いずれの地域についても、伸びていく手応えを感じているところです。また、コロナが収束するかもしれないという状況の中で、海外にも行きやすくなっているため、海外展開も積極的に行っていきたいと思います。

「tadrill」について、HENNGE Oneと呼ぶかどうかは別ですが、私どもが常に行っている活動の中では、お客さまのクラウド活用の先にある課題をすべて先回りして取り除くことが大きな狙いです。2,200社余りのお客さまが利用される中で、お客さまがよく直面している課題に対して率先して取り組んでいきたいと考えています。

このような取り組みから派生する新しいサービスは、HENNGE Oneの一機能として実装されることもあれば、異なった課題に対するサービスとして違う売り方を試してみたり、新しいブランドとして切り出していくなど、いろいろな可能性があります。

現在のお客さまの深刻なお悩みとして、標的型攻撃があります。ニュースでも報道されていますが、標的型攻撃によって会計システムが攻撃を受けて決算ができないといったことも起こっています。

標的型攻撃については、社員になりすまして飛んでくるメールをどのように防ぐかという課題があり、これに対しては、技術的にメールの属性などでフィルタリングし、機械学習やベイジアンなどによってメールを解析して取り除くような対応が考えられます。例えば、HENNGE OneのCloud Protectionという機能などでも、機械的に取り除いているのですが、一方で、すり抜けてきてしまうものが1個でもあった時に、それをどのように防ぐのかという難しい課題が残っています。

これは技術で解決するにはかなり課題のある分野で、最近では送り手が社員になりすまして過去のメールを引用しながらウイルスを送るといった高度な手口も増えており、お客さまはすごく悩まれています。

それに対して私たちが開発し販売を開始したのが「tadrill」というサービスです。お客さまに対して、すべて機械で打ち返すという方法も考えていますが、それだけでなく、社員個人個人がそれを見つけた時に「今、こんな攻撃が来ている」ということを、すばやくみんなに知らせるようことができるようにします。あるいは、メール攻撃らしいものを見つけた場合、むやみにそのメールを信用せず、いったんそれを疑うという姿勢をとれるようになるための避難訓練のようなことも行います。

したがって「tadrill」はHENNGE Oneのような、「完全にソフトウェアで全部打ち返す」というものとは少し性質が違います。

「tadrill」の強みは、他にはあまりない独特の新しいアプローチにより課題解決しようとしているところにあり、さらに、すでにカスタマーが利用しているHENNGE Oneと、シナジー効果があるサービスであり、私たちのブランドの強みを訴求しやすいことだと考えています。

想定として、今のところ「tadrill」の拡販にそこまで確信を持っているわけではないですが、お客さまの課題を解決できる新しいサービスだと思っていますので、お客さまにどんどん紹介して、販売していきたいと思っています。サービスとしては、そのような位置づけになっています。

実は「tadrill」は、発表が昨日(2022年11月10日、https://hennge.com/jp/info/press/20221110_tadrill.html)だったのですが、2022年9月期から何社かのお客さまにおいてベータテストを実施しており、おかげさまでかなりのご好評を得ています。また、先月終わった「HENNGE NOW!」のイベントでも発表したところ、「tadrill」は情報システム管理者の方々にかなり刺さっている機能だとわかりました。私としてはかなり期待しており、思い入れのあるサービスになっています。

小椋氏からのご挨拶

小椋:2022年9月期に人員体制が整えられなかったことが、大きな反省点になっています。2023年9月期はそこをしっかり乗り越えて、すでにある強い顧客基盤を活かし、成長の軌道に乗せていきたいと思っています。ぜひ成長を見守っていただければと思います。

本日はお忙しい中、当社の決算説明動画をご視聴くださり、どうもありがとうございました。

なお、当社では決算でご質問いただくことが多いのではないかという想定質問「2022年9月期決算 Q&A」をIRサイトで開示していますので、そちらも合わせてご覧いただければ幸いです。

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