近頃SNSなどでたびたび叩かれる「専業主婦」という生き方。

一昔前なら疑問さえ抱かないほど当たり前のすがたでしたし、「ワーママvs専業ママ」なる風潮があるらしいとは言われるものの、それ以外で叩かれるほどではありませんでした。

なぜこれほどまでに専業主婦は叩かれるようになったのでしょうか。その背景を見ていきます。

いつから専業主婦は肩身が狭くなったのか

専業主婦叩きが増えた理由は定かではありませんが、いつから時代は共働きが主流になったのでしょうか。

厚生労働省の「令和4年版厚生労働白書」によれば、1980年には専業主婦世帯が1114万世帯、共働き世帯が614万世帯。

当時は専業主婦が主流であり、女性が働けば「子どもを保育園に預けて働くなんて」なんて叩かれがちな時代だったでしょう。

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出所:厚生労働省「令和4年版厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保-(本文)」(2022年9月16日公表)

出所:厚生労働省「令和4年版厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保-(本文)」(2022年9月16日公表)

しかし1990年代に世帯数は逆転し、2021年には共働き世帯が1247万世帯となり、専業主婦世帯は566万世帯にまで減っています。

数字だけ見れば、専業主婦という生き方がマイナーになったことも叩かれやすくなった一因とも言えそうです。

年金、収入…お金面でも起こる専業主婦叩き

専業主婦世帯が減ったことに合わせて、「お金」の面でも専業主婦が叩かれやすくなっています。

たとえば、年金について。

2022年10月には、パートの厚生年金の適用が拡大されました。2024年にはさらに拡大される予定となっており、扶養内で働く女性はだんだん減るでしょう。

また、先日は国民年金の保険料の支払いが45歳までになることや、iDeCoの加入が69歳までになることが検討されると報道され、公的年金への不安が具現化されるような法改正案がたびたび出ています。

それにあわせて叩かれやすいのが、国民年金の第3号被保険者である専業主婦。

日本の年金は、国民年金と厚生年金の「2階建て」となっています。

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出所:厚生労働省「令和4年版厚生労働白書」

出所:厚生労働省「令和4年版厚生労働白書」

国民年金の第3号被保険者は会社員や公務員に扶養される専業主婦が加入するもので、保険料を払う必要がありません。

そのため専業主婦が叩かれやすくなるのですが、公的年金の支給基準は世帯収入と人数で決まるため、一人あたりの賃金水準が同じ世帯であれば、どの世帯類型でも年金の総額が同じになる仕組みとなっています。

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出所:厚生労働省「第9回社会保障審議会年金部会」資料4「2019(令和元)年財政検証関連資料

出所:厚生労働省「第9回社会保障審議会年金部会」資料4「2019(令和元)年財政検証関連資料

世帯で見ると専業主婦が優遇されているわけではないのですが、世間では保険料を払わないからずるいという公式になってしまっています。

また、平均年収が上がらず、物価高も相次ぎと日本は経済的に厳しい状況が続くため、専業主婦が叩かれやすくなっているのでしょう。

専業主婦の苦悩。その肩書きで苦しい思いをする人も

一口に「専業主婦」といっても、その肩書きの裏にはさまざまな家庭があります。

専業主婦が向いているから選んでいる方もいれば、転勤族の方、乳幼児をワンオペ育児する方、医療ケア児や障害児を育てている方、持病を抱えたり重い病気を抱えている方、両親や義両親の介護中の方など、それぞれ抱える事情は異なります。

それでも「専業主婦」という肩書きに一括りにされてしまうため、今回のように叩かれることに。肩書きは使用しやすいものの、その奥にあるものが見えなくなる点については何とも不自由だと言えますね。

夫婦や家族の在り方は千差万別、家族の数だけあるもの。実際にその立場にならなければわからないことは、数え切れないほどあるでしょう。だからこそ、周囲の人が言えることは本当に少ないのかもしれません。

もちろん、専業主婦が合っているからと希望する方もいます。家事や子育てに専念し、家族を支えることを得意とする女性も一定数おり、それも一つの生き方でしょう。

生き方や働き方の多様化が広がる現代において、一つの生き方である専業主婦を叩く風潮がある間は、まだ多様化という言葉が独り歩きしている状態と言えるのではないでしょうか。

何をしても叩かれがちな結婚後の女性。本当の多様化を

そもそも、結婚後の女性がどの立場であれ叩かれるのは、今にはじまったことではありません。

今は価値観の過渡期で昭和から令和の考えが混在しており、正社員で働けば「子どもがかわいそう」、パートで働けば「気楽でいいね」、専業主婦なら「働かないの?」などどの立場でも何かしら言われがちです。

実際にその立場になれば、専業主婦なら孤立感や専業主婦であることへの罪悪感に悩んだり、パートでは育児も仕事も中途半端になることに悩んだり、正社員では家事育児が思うようにできないことに悩んだりするもの。

それぞれが日々奮闘し、悩みながら生きているのです。

結婚後の生き方の種類が多い女性だからこそ叩かれるのかもしれませんが、生き方が多様化する今、結婚後の女性を叩く風潮はせめて令和の時代で終わりにしたいものですね。

参考資料

宮野 茉莉子