9月を迎え、いよいよ児童手当の特例給付廃止まで1ヶ月を切りました。

内閣府によると、児童手当を受け取っている世帯全体の4%にあたる約61万人の児童に影響が出るとされています。

今回は未だ不満の声が根強い本制度の概要と、少子化対策に与える影響について考えていきます。

2022年10月に開始される児童手当の所得制限について

2022年10月から実施される所得制限は、世帯年収ではなく夫婦いずれかの収入が1200万円を超えると特例給付が支給されなくなる仕組みです。

特例給付とは、児童を養育する人の収入が一定額に達した場合、児童1人当たり月額一律5000円を支給する制度です。

収入額の目安は扶養家族の人数で異なります。例えば扶養家族3人の場合、給与所得が960万円以上になると、児童の年齢にかかわらず月額一律5000円に減額されます。

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出所:内閣府「児童手当制度のご案内」

出所:内閣府「児童手当制度のご案内」

そして10月からの制度改正では、夫婦いずれかの収入額が所得上限限度額を超えた場合、特例給付も支給停止となるのです。

ただし、どちらか一方の収入を基準とするのは不公平、との不満が出ています。

例えば夫婦共働きで、夫の年収が1100万円、妻の年収が900万円で世帯年収2000万円でも、いずれも年収1200万円を超えていないので特例給付が支給されます。

しかし夫の年収が1200万円、妻が専業主婦の場合では、夫の年収が所得制限の基準を超えているため支給停止に。

こうした共働きでない世帯が不利益を被る可能性があるため、一方の収入を基準とすることに不満の声が上がっています。

児童手当に所得制限を設ける理由

児童手当の所得制限で得られる370億円の公費は、政府が掲げる「新子育て安心プラン」の財源の一部に充てられます。

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出所:厚生労働省「「新子育て安心プラン」について」

出所:厚生労働省「「新子育て安心プラン」について」

「新子育て安心プラン」の内容としては、女性の就業率の上昇に対応するため、2021年度〜2024年度の間に約14万人分の保育の受け皿を整備することを掲げています。

ちなみに厚生労働省が公表する資料によると、2022年4月時点での待機児童数は2944人(前年比2690人の減少)。今後の4カ年計画で待機児童ゼロを目指す予定です。

これまでの児童手当の変遷

児童手当の歴史は古く、1972(昭和47)年1月から実施されています。当初は第3子以降の子ども1人あたり3000円(所得制限なし)が、義務教育終了前まで支給されました。

その後は行政改革の中で所得制限が強化されますが、1986(昭和61)年には第2子以降、1992(平成4)年には第1子まで拡大する一方、受給対象年齢は3歳未満に重点化。

その後も数年単位で細かい調整が行われましたが、その中でも大きな変化だったのが2010年の「子ども手当」です。中学校修了までの子ども1人につき一律で1万3000円を支給し、所得制限も設けない画期的な制度でした。

しかし、所得制限の撤廃に伴い、16歳未満の扶養家族に適用可能だった「年少扶養控除」が廃止されたため、実質手取り額は減少。未だに「年少扶養控除」の廃止については不満の声が上がっています。

2012年には再び「児童手当」の名称となり、世帯主の年収が一定以上になると、児童の人数にかかわらず5000円が支給される特例給付が定められました。

そして2022年10月からは、上述の通り夫婦いずれかの収入額が所得上限限度額を超えた場合、特例給付が支給停止になります。

児童手当の所得制限は少子化対策に有効なのか

正直な所、児童手当の所得制限で得た財源を「新子育て安心プラン」に回しても、効果的な少子化対策につながるとは思えません。

そもそも待機児童が増加している原因は、長引く経済不況により社会進出せざるを得ない女性が増加し、それに伴い保育園のニーズが急増したためです。

厚生労働省のデータによると、2020年時点での女性の就業率は3044万人。労働力人口総数に占める女性の割合は44.3%となっています。

このまま経済が低迷していくと、出生率は相変わらず伸び悩むのに対し、女性の就業率はさらに上昇。

仮に待機児童問題が解消されても、子どもを産める経済状況でなければ出生率の改善は難しいでしょう。

「少子化ありき」の経済政策について議論が必要

男女ともに「働きたい」「家庭に入りたい」といった意思が尊重され、なおかつ経済的な懸念なく子どもを産める環境の実現は難しいのが現状です。

付け焼き刃の少子化対策よりも、少子化の現実を受け止めたうえで、人口の変動に耐えうる社会構造の実現が必要となる気がします。

参考資料

小見田 昌