2. 老後に必要な資金を把握するポイント

国民年金と厚生年金の受給額や老後の生活費の平均を見てきましたが、では、実際に自身にとって必要な資金はいくらなのでしょうか?

ここからは、老後に必要な資金を把握するポイントについてまとめています。

2.1 年金支給額を把握する

一般的に老後の主な収入は公的年金となるため、65歳から受給できる老齢年金や企業年金の支給額をまず把握しましょう。

前述したように、厚生年金の受給額は平均およそ14万円、国民年金の受給額は平均5万円ほどです。

自営業や農業など国民年金のみ加入している人の場合、老後に受給できるのは国民年金だけとなります。

2019年度の国民年金の満額は月額およそ6万5000円のため、夫婦2人で満額受給したとしても合計13万円の収入にしかなりません。

公的年金だけでは赤字が予想される場合は、老後資金をためるか、老後も仕事を続ける必要があるのです。

2.2 支出額を把握する

次に、1ヶ月当たりの支出額を把握しましょう。

毎月の生活費以外にも、入院費・手術費や介護費用をはじめ、住宅のリフォーム費用や葬祭費用、自動車の買い替え費用なども考える必要があります。

一般的には老後、最低限の日常生活を送るのであれば夫婦2人世帯で月額平均22万円ほど、ゆとりある生活を送りたいのであれば月額平均36万円ほどかかるとされています。

2.3 シミュレーションで計算してみる

「老後の毎月の収入」と「老後の毎月の生活費」がわかったところで、以下の計算方法でシミュレーションしてみましょう。

  • (老後の毎月の生活費 – 老後の毎月の収入)×老後の生活期間

「老後の生活期間」については、いくつまでと予想しづらいため、20・25・30年の3つのパターンで考えてみるのもおすすめです。

たとえば、「老後の毎月の生活費」を1ヶ月当たり30万円、「老後の毎月の収入」としてサラリーマン世帯は1ヶ月当たり26万円、自営業者世帯は1ヶ月当たり12万円とします。

その場合、以下のようなシミュレーションが可能です。

サラリーマン世帯に必要な老後資金

  • 老後生活期間20年の場合:(30万円 - 26万円)×240ヶ月=960万円
  • 老後生活期間25年の場合:(30万円 - 26万円)×300ヶ月=1200万円
  • 老後生活期間30年の場合:(30万円 - 26万円)×360ヶ月=1440万円

自営業者世帯に必要な老後資金

  • 老後生活期間20年の場合:(30万円 - 12万円)×240ヶ月=4320万円
  • 老後生活期間25年の場合:(30万円 - 12万円)×300ヶ月=5400万円
  • 老後生活期間30年の場合:(30万円 - 12万円)×360ヶ月=6480万円

上記のシミュレーションによって、自身にとって老後に必要な貯金額の予想ができます。

3. 老後に持ち家を活用するためのポイント

老後資金の準備に不安を感じる人は、持ち家の活用もおすすめです。

ここからは、持ち家を活用するためのポイントを紹介していきます。

3.1 リフォームを検討する

老後も持ち家で暮らす予定であれば、バリアフリー化を目的としたリフォームがおすすめです。

足腰が弱った高齢者にとって、些細なことがケガにつながる場合があります。

敷居の段差をなくしたり、階段のステップをゆるやかにしたりと、バリアフリー化しておくと安心です。

バリアフリー化を目的とするリフォームであれば、自治体によっては補助金を受けられるところもあるため、自己資産があるうちに実行できないか検討してみましょう。

3.2 持ち家の売却や賃貸利用を検討する

持ち家を売却したり賃貸利用したりすることで、老後資金に充てる方法もあります。

不動産を賃貸利用するときは、リフォームしてから貸し出すと借り手が見つかりやすいでしょう。

しかし、リフォーム代が高くついたことで、家賃収入では賄いきれなくなり、損をするかもしれません。

損をしないためにも、不動産の価値や、最終的に受け取れる金額がいくらになるのかは事前に把握しておきたいところです。

一方で、売却する場合は、一度にまとまった金額が入るため、新居の購入費用や介護施設への支払いなどに充てられます。

老後の人生設計や持ち家の状態などを踏まえて、メリットが大きいと感じる方を選びましょう。

3.3 リバースモーゲージを検討する

リバースモーゲージとは、持ち家を担保に融資を受けられる融資制度です。

住人の死後、持ち家を売却して返済に充てられる仕組みとなっています。

持ち家に住み続けたいが、年金で生活費を賄えない人にはおすすめの方法です。

ただし、「利用できる年齢が決まっている」「固定収入の有無」など、融資が受けられるか条件が設けられているため、まずは自身の家が対象となるかを確認するとよいでしょう。