バブル景気の頃に「新語・流行語大賞」にもノミネートされた「24時間戦えますか」という言葉。批判されることもなかった時代はすっかり過去のものになり、長時間労働に対する世間の見方が大きく変わりました。
働き方改革は公民問わず様々な職場で見直しが進められていますが、とくにブラック職場の代表格としてあげられているのが学校です。
単に授業を行い生徒の学校生活を指導するだけでなく、放課後には部活動、会議や研修会が行われ多忙な一日を過ごしています。そしてこの流れは昭和の頃に比べて劇的に改善したとは言い難い状況です。
今回は、子どもにとって身近な大人である「学校の先生」こと教員の働き方改革を考えていきます。
「学校の先生」超多忙で改革必須の認知度は浸透しているが
ブラック職場問題は世間から冷たい目で見られます。しかし、教員の仕事は「学校で子どもの勉強を指導し、集団生活を送る上で大切な社会的な責任等を学ばせる」という子どもや親と密接に関わるという特殊な業務だけでなく、教員の働き方には脈々と受け継がれてきた「形」があります。
時代が移り変わりICT機器の浸透があったとしても、教員の仕事の流れは劇的な変化を遂げてはいません。さらに、いじめ問題やモンスターペアレンツ対応などが起きることもあります。
そのため「児童生徒の指導に集中できる」「授業の準備に時間をかけられる」、短期間で業務をスリム化するという「働き方改革」を断行できない難しさも抱えています。
とはいえ、メディア等で教員の激務が度々取り上げられていることもあり「ブラック職場」「超多忙な職場」だという認識は広まっています。その代表的な業務が部活動です。
中学や高校では、土日も休み返上で部活動に携わる教員の働き方がクローズアップされています。
平日は遅くまでそして休日は部活動に顔を出さないといけないなど、教員の働き方改革の目玉の一つとして取り上げられてきました。
こうした問題を是正するため国も動き出しています。
まず公立中学校の部活動で、2025年度までに従来の教員が顧問を担当する形から地域のスポーツクラブなどに部活動の指導を委託する方針を固めています。高校でも将来的な地域移行を目指しており、部活動に関する教員の働き方は一歩前進しています。
学校の先生はサービス残業が当たり前
しかし、部活動に比べると停滞しているのが放課後の勤務、いわゆる残業に関する問題です。
例えば、小学校では運動会や学習発表会、校外学習などの準備の他にも、中学校や高校に比べて頻繁に行われる単元テストの採点もやらなければいけません。
教員の勤務時間は地方公務員法第58条が適用され、休憩時間を除き「労働時間は週40時間を超えない」ことが定められています。民間企業の場合、出社時間は職場により異なりますが、概ね8時半から9時です。
一方、学校の登校時間は朝の8時から8時半くらいが多く、それに伴い教員の出勤時間は7時半から8時がボリュームゾーンになります。
職場に来る時間は早いものの「週40時間、1日8時間」で収めるには、子ども達が下校してから夕方の5時の間に全ての業務を終わらせて帰宅する必要があります。
つまり、1時間から1時間半の間に仕事を片づけるという実現不可能に近い労働環境です。そして、問題を複雑化しているのが残業代に関する問題です。
1971(昭和46)年に制定された「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(略称・給特法)により、残業代は残業時間の長い短いに関係なく「教職調整額」として給料の4%分が支払われています。
ただし、以下の4つの業務は「超勤4項目」として残業代の支払い対象になっています。
- 実習
- 学校行事
- 職員会議
- 非常災害
このように、残業扱いとなる業務は極めて限定的です。
つまり、教員は決まっている給与の中に残業代が含まれているという大前提のもとで職務に当たっているのです。
公立学校の教員が学校で夜遅くまでテストの採点をしたり、授業の準備や配布するプリントを印刷していても、それは完全なるサービス残業になります。
賃金問題や労働時間、そして教師不足に直面する
月に何十時間残業をしても、月収の4%分しか支給されない。月収30万円であれば、時間に関係なく残業代の支給額は1万2000円になります。
サービス残業ありき、かつ複雑な給与体系は不明瞭な点も多く、現況の労働の違法性または是正を訴え残業代に関して裁判となったケースもありますが、給特法を理由に原告側の請求が認められることはありませんでした。
法律の問題からも、公教育の職場では昭和の「サービス残業をして当たり前」という風潮が令和になっても色濃く残っていることになります。
そして、労働環境や賃金問題の改善が見通せない中、教員や非常勤講師不足も深刻で現役の教員にのしかかる負担は年々増しています。
文部科学省が今年1月に発表した「『教師不足』に関する実態調査」によると、2021年5月1日時点での公立の小中高特別支援学校で不足している教師は2065人にのぼりました。
公教育を担う教職員不足は、子どもの教育への影響に直結します。教員採用試験の低倍率が進むのは、公教育の過酷な労働環境のイメージの悪さも一因といえるでしょう。
魅力ある職場へと変身し教員の成り手を増やするためにも、時代に合った労働環境や給与体系の見直しが待ったなしです。

