投信1編集部によるこの記事の注目点

  • 市場環境を見てみると、最大のロボット導入先である自動車関連向けが堅調で、2017年も好調を維持する見通しです。その背景の1つとして米国におけるZEV(無公害車)規制の強化があります。
  • 2018年から規制が強化され、ZEVの対象がEV(一部のレンジエクステンダーEVも含む)、PHV、FCVの3つになるため、自動車メーカーは新規制に対応するラインナップ強化を進めています。その準備段階となる17年は関連投資の増加が予想されます。
  • 中国では環境対策として政府がEVへの補助金政策を拡大することに加え、中国版ZEV規制の整備も進めており、早ければ17年から排出権取引制度を導入する可能性が出てきています。

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近年注目を集めるロボット市場。2016年は国内外で産業用ロボットやサービスロボット関連の発表が相次ぎ、17年も大きな動きが予想される。そこで本号より複数回にわたり、16年の動向と17年の見通しを考察する。第1回は国内の産業用ロボット企業について取り上げる。

国内の産業用ロボット企業の販売状況を見ると、16年は円高の影響で売上高が前年同期を下回る企業も見られたが、需要自体は堅調に推移している企業が多く、今後の需要増を見据えて関連各社からロボット製品の増強が発表されている。

グローバルで高いシェアを誇るファナックと安川電機はともにロボット製品の増強を決定。ファナックは茨城県筑西市にある筑波工場の一部をロボットの製造(月産1000台を計画)に転換し、17年4月から生産を開始する。同じ筑西市に敷地約28.7万㎡を16年6月に取得しており、産業用ロボットの新工場を整備する。具体的なスケジュールは未定だが、月産能力は5000台と推定される。

安川電機はスロベニアで組立工場の新設を計画。17年10月に着工し、18年9月の稼働を予定している。そのほか、川崎重工業が半導体ウエハー搬送ロボットの増強を進めており、不二越、ヤマハ発動機、ローツェといった企業も増強を進めている。

国内用産業ロボット企業の主な増強計画

こうした大手・老舗企業だけでなく、ベンチャー企業の動きも活発化している。高性能のロボットコントローラーを手がけるMUJINは、インターネット通販大手アスクルとの提携を発表したことで注目度が一気に上がり、16年10月には第7回ロボット大賞(経済産業大臣賞)を受賞した。

協働型ピッキングロボット「CORO(コロ)」を展開するライフロボティクスは、16年11月にシリーズBで総額10億円の資金調達を完了。同社は15年11月と16年9月にも資金調達を実施し、これまでに総額15億円の出資を得ている。

市場環境を見てみると、最大のロボット導入先である自動車関連向けが堅調で、17年も好調を維持する見通し。その背景の1つとして、米国におけるZEV(無公害車)規制の強化がある。

ZEV規制は一定台数以上の自動車を販売する大規模自動車メーカーに対し、新車販売台数の一定比率をZEVにするよう定めた規制で、現在全米10州で実施されている。ZEVの対象は、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車、超低公害車の5つ。

だが、18年から規制が強化され、ZEVの対象がEV(一部のレンジエクステンダーEVも含む)、PHV、FCVの3つになる。そのため自動車メーカーは新規制に対応するラインアップを強化しており、準備段階となる17年は関連投資の増加が予想される。

加えて、米国ではトランプ次期米大統領が製造業の雇用を米国に取り戻すと何度も発言している。そのため初年度となる17年は積極的な製造業関連施策を打ち出すことが予想され、産業用ロボットのメーカーにとって追い風となる。

中国では環境対策として政府がEVへの補助金政策を近年拡大している。中国版ZEV規制の整備も進めており、早ければ17年から排出権取引制度を導入する可能性が出てきている。人件費の高騰も続いている。こうした要素が相まって、産業用ロボットの需要は17年も増加することが見込まれ、世界シェアの半数以上を占める日本の産業用ロボットメーカーの需要もさらに増加しそうだ。

電子デバイス産業新聞 記者 浮島哲志

投信1編集部からのコメント

2017年は米国のZEV規制対応という大きなイベントがあるので、マーケットの視点からもロボット業界は要注目と言えます。現状は自動車業界向けが主流ですが、そこでの競争が今後、他の領域にどのように広がっていくのかにも注意が必要になるでしょう。 

電子デバイス産業新聞×投信1編集部

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