新興国株に追い風。テクノロジー株では新陳代謝が進んだ1週間
先週(2017年5月8日-12日)の世界の株式市場は、フランス大統領選挙の第1回投票以降相場を牽引してきた欧州株が足踏みに入り、米国株も最高値圏で小動きになるなか、日本株と新興国株の上昇が際立った展開になりました。
主要市場の週間騰落率は、現地通貨ベースでTOPIXが+2.0%、独DAXが+0.4%、米S&P500が▲0.3%、上海総合が▲0.6%でした。日本株は地政学リスクが沈静化し、米ドルが対円で上昇したことが手掛かりとなり続伸しています。
先週の注目点は2つあります。
第1は新興国株の上昇の勢いです。先週の騰落率は、ブラジルのボベスパ指数が+4%、香港のハンセン指数が+3%、韓国KOSPI指数が+2%、インドSENSEX指数が+1%でした。
米国の4月消費者物価指数が落ち着いた数値となり、欧州でもドラギ欧州中央銀行総裁が物価上昇圧力の弱さに言及したため、欧米の長期金利が低下しました。米国では6月の利上げ観測は根強いですが、その次の利上げ時期については慎重な見方が増えています。
このため米欧景気は腰折れしない程度に成長を続けるが利上げが切迫しているわけではないという見方が強まり、経済成長期待の高い新興国の株式が上昇したと言えそうです。株式市場が最高値圏にある米国に、FBI長官解任で改めて政治リスクを感じた投資家がいたのかもしれません。
第2は、米国のテクノロジー株の新陳代謝ともいえる動きです。このところ注目されるアップル株(AAPL)は+5%上昇しましたが、これ以外にもエヌビディア(NVDA)が+23%急騰し、アマゾン(AMZN)、ネットフリックス(NFLX)、テスラ(TSLA)、アルファベット(GOOG)も堅調でした。テンセント、アリババもしっかりです。
一方、インテル(INTC)やIBM(IBM)、あるいはGE(GE)などは大きく値を崩しています。ビッグデータ解析、AI、自動運転、フィンテックなど、新しい技術テーマで優位性を持つ企業に市場の関心がますます集まっています。
なお、上海総合指数は下落が続き年初来の騰落がマイナスに落ち込みました。
アウトルック:半導体ブームと米国消費実態を確認する週に
今週(2017年5月15日-19日)は主要国の景気の体温を確認する展開が予想されます。米国では4月住宅着工件数、4月鉱工業生産指数、欧州では5月ZEW景況感指数、5月消費者信頼感指数、日本では1-3月GDP、中国では4月小売売上高や鉱工業生産指数などの発表が予定されています。
ただし、こうした指標の予想値はおおむね巡航速度での経済成長を想定しています。実際の数値に大きなサプライズがなければ、これまで通り新興国株、テクノロジー株、欧州株に注目が集まる展開が予想されます。
今週はむしろ決算が注目です。半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)、米小売のホーム・デポ(HD),ウォルマート(WMT)、農業機械のディーア(DE)や、テンセント、アリババの決算発表が予定されています。テクノロジーブームを支える半導体製造装置の動向、米経済を支える消費動向などを占う重要なデータであり、市場の関心は高いと考えられます。
椎名 則夫