2022年8月10日に行われた、セーフィー株式会社2022年12月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:セーフィー株式会社 代表取締役CEO 佐渡島隆平 氏
セーフィー株式会社 取締役経営管理本部長 兼 CFO 古田哲晴 氏

2022年12月期第2四半期決算説明会

佐渡島隆平氏(以下、佐渡島):みなさま、こんにちは。セーフィーの佐渡島です。本日は決算説明会にお集まりいただき、ありがとうございます。市況そして営業において厳しい部分がありますが、「現場DX」を行い、お客さまの声を集め、新製品も発売し、また未来に向けての投資を十分に行っています。そのあたりも含めて、みなさまと共有していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

まずは決算の部分について、CFOの古田からご説明します。

2022年12月期第2四半期(会計期間)ハイライト

古田哲晴氏(以下、古田):決算のハイライトをご説明します。ARRは63億円、前年同期比40パーセントに近いプラス、課金カメラ台数は15.8万台、前年同期比プラス22.8パーセントです。

売上高は20億円と前年同期からの増加はかなり限定的で、スポット収益は大幅なマイナスとなっています。粗利率は47.2パーセントで、前年同期から大幅に増えて改善されています。これは収益性の高いリカーリング比率が高まったためであり、スポット収益が少なかったことが影響しています。

販売管理費は、従業員数の増加に伴い費用が増加し、3億8,400万円の営業損失となっています。

ARR及び課金カメラ台数の推移

KPIのARRおよび課金カメラ台数の推移については、前年同期比で39.9パーセント増の63.6億円を達成しています。課金カメラ台数は、15.8万台です。

商流別課金カメラ台数の推移

商流別課金カメラ台数の推移です。スライドの棒グラフ最下部の「GO/Pocket」と記載のあるところですが、台数の伸びが限定的で成長が不足しています。一方で、以前からお話ししていた特定卸商流は増加傾向に戻っています。

ARPC(カメラ1台あたりの単価)の推移

ARPC(カメラ1台あたりの単価)の推移ですが、単価の高い「Safie Pocket(セーフィー ポケット)」「Safie GO(セーフィー ゴー)」の伸びが不十分であったことから、平均単価はわずかに下落しています。

ARRと課金カメラ台数の構成

特定卸商流の解約率は4.8パーセントで、過去の水準まで改善が進んでいます。その他の商流については、特に大きな変化はありません。

売上高の推移

売上高の推移です。売上高は、冒頭にお伝えしたとおり20億円です。リカーリング収益は44パーセントと堅調な伸びを示しているものの、スポット収益は大幅に減っています。

売上高構成比およびスポット/リカーリング粗利率推移

売上高の構成比および粗利率についてです。売上高ですが、パートナー経由の比率が従前の60パーセント近くまで戻っています。一方、リカーリングの比率については74パーセントまで大幅に増加しています。粗利率の推移は、リカーリング収益、スポット収益ともに横ばいで、大きな変化はありません。

売上総利益の推移

売上総利益率は47.2パーセントで、利益率としては改善しているものの、粗利額としてはわずかに減少している状況です。

販売費及び一般管理費の推移

販売管理費および一般管理費は、着実に先行投資を積み重ねていることもあり、従業員の増加に伴い増加している状況です。

営業利益の推移

営業損失の金額は四半期ごとに積み上がっており、今期の営業損失額は3億8,400万円となりました。

2022年12月期 業績予想の修正

上期の業績を踏まえ、期初見込みを大きく下回ることから、通期業績予想を見直しています。ARRは修正前の83億円から修正後は75億円で、10パーセント近いマイナスを見込みます。課金カメラ台数は20万台から17万8,000台、売上高は110億円から92億円、売上総利益は47億円から42億円へ修正します。

販売管理費は当初と同様と考えているため、結果としての営業損失の金額は、開示していた上限の10億円からさらに5億円増え、15億円を見込んでいます。

2022年12月期 修正後業績予想 – 売上高

修正後の業績予想について売上高の内訳は、「Safie GO」「Safie Pocket2」などのレンタル商材を中心に新規顧客の獲得および既存顧客への追加販売がいずれも想定を下回っているため、このような修正となっています。

特に今は、ハウスメーカーや製造業界など新しい業界の顧客獲得に想定以上の時間を要しており、順調に進んでいるとは言えない状況です。また「Safie GO」「Safie Pocket2」はレンタル商材であり、一部ですが、一定期間使用された後の返却があることも影響しています。

リカーリング収益対スポット収益の区分では、スポット収益の影響がかなり大きく出ています。修正後の業績予想においても、リカーリング収益は前期比41パーセント増の着地となる見込みです。

2022年12月期 修正後業績予想 –販売費および一般管理費

コストについては、修正前後で大きな変更はありません。S&M(セールス&マーケティング)、R&D(リサーチ&デベロップメント)については、修正前に比べてわずかな増加となりますが、G&A(一般管理費)はわずかな減少で、トータルとしても、開示していた上限の57億円の着地を見込んでいます。

短期的に解消すべき課題と取組状況

このような厳しい決算となったことについては、当社として大きく3つの課題を認識し、それぞれに対して取り組んでいるところです。1つ目の課題は「エンタープライズ大型導入案件の継続的な獲得」です。具体的には、意思決定者に十分に認知されていないことが挙げられます。知名度を上げるため、下期ではマス広告などを行います。

また、エンタープライズ顧客の獲得、さらにそのお客さまからの追加の売上を獲得するためには、エンタープライズ攻略にたけた営業教育を行う必要があります。社内の教育体制および組織の体制を見直し、再構築しています。

2つ目の課題は「各業界の顧客ニーズへ応えるためのタイムリーなプロダクトラインナップの強化」です。新商品の投入もありますが、この後で共有する小売店向けにカスタマイズした「Safie One(セーフィー ワン)」など、業界ごとに適したソリューションパッケージを組み立てて提供していくことに注力したいと思っています。

3つ目の課題は「既存顧客への継続的な価値提供、導入後サポート」です。一部返却という話に触れましたが、当社の製品を導入いただいた後、使い方が十分にわからず返却されてしまう事例がいくつか出ています。オンボーディング・リテンションに責任を持つ組織を設立し、導入後のお客さまのサポートを充実させることに取り組んでいます。

佐渡島:この課題については、当社として短期的、中期的、長期的にしっかり解決していきたいと考えています。当社は小売・建設・スマートビルディングの3つのビジネスユニットとして事業部制にしていますが、営業生産性向上の点から、営業の稼ぐ力の強化に取り組んでいます。

さまざまな業界のお客さまに当社のサービスを使っていただいていますが、防犯カメラや遠隔使用の分野では広くアプローチでき始めているものの、そこからさらにお客さまのDXに向き合うためのコンサルティング・オンボーディングに対しては、当社の力不足な部分があります。

その影響で業界の横展開に時間がかかったことが今回の非常に大きな反省点だと考えているため、コンサルティングも含めて、しっかりとオンボードできるよう、お客さまに向き合った商品展開と組織展開を行おうと考えています。

一方で、お客さまの「映像を使ってDXをしたい」という強いニーズに応えるような商品展開ができつつありますので、そちらについてご紹介させていただければと思います。先週、エッジAIカメラ「Safie One」という新製品を発表させていただきました。こちらは非常に好評です。

成長戦略のテーマ:現場DX

当社の中長期的なテーマは「現場DX」と称しており、「あらゆる産業の現場をDX(デジタル・トランスフォーメーション)する」というコンセプトを持ちますが、従来の防犯カメラからDXカメラに置き換え、DXを推進していく会社に変貌していくという意味からも、新しいビジネスモデルにチャレンジする時期に来ていると考えています。

クラウドカメラを使った現場DXの5ステップ

当然、防犯、遠隔での業務については、当社のプロダクトラインナップでまだまだTAMはあると考えています。1顧客で1,000台、2,000台、業界では何万台と使っていただくようなお客さま像が明確にあるため、新しいソリューションをお客さまと共に作り、作ったソリューションを業界全体に広げていく取り組みは、単価向上に対しても重要で、お客さまのニーズとなっています。そのため、それに応えるような新製品を今まさに作って出しているところです。

例:小売・飲食店における課題

小売・飲食店における課題についてです。オンラインでコマースしていらっしゃる方にとっては、ページビュー、ユニークユーザー、コンバージョンレートを含め、どのような方がどのくらい購入し、どの施策とつながっているかについて容易に把握できるようになっています。

しかし、現場のスーパーなどはオンライン化しておらず、来店者の人数すらも把握できていない小売・飲食店からは「簡単に来客数や属性などを把握したい」というマーケティングニーズが強くあります。

また、当社は売り場の人たちの第3の目、第4の目になりたいという思いもあります。欠品などによって生じる「チャンスロス」の課題も解決したいと思っています。さらに、店舗の運営コスト面では無人化が大きなテーマになっています。無人店舗に対しても、1つのカメラで複数の課題を一気に解決できるような映像ソリューションをDXとして出していこうと考えています。

店舗運営の課題解決に役立つエッジAIカメラ「Safie One」

スライドの写真は新製品のエッジAIカメラ「Safie One」です。「Safie One」はエッジの中にAIを入れることができ、さまざまな賢さを提供できます。工事が不要で店舗に置くだけで使えます。

また最近、店舗が無人化されていく中で、無人店舗でもお客さまと本部や従業員とでコミュニケーションしたいというニーズにお応えするため、音声機能を強化し、ライブでコミュニケーションして「空間がつながる」世界を作れるようにしています。

“賢くなる”カメラ - Store People Detection Pack

「賢くなる」というポイントについてご紹介します。当社としては「AI-App(あいあっぷ)」というフレームワーク上に新しいアプリケーションが載っていくような展開をしようと考えています。

来店されたお客さまの数、そのお客さまがどの棚を見てどのような行動をされたか、レジに並ぶお客さまの様子をリアルタイムに通知することによりレジに並ばない店作りをするなど、店舗運営者にとって必要不可欠なアプリケーションをパッケージして、エッジに書き込み、それを展開します。そのようなオプションをセットにした「賢くなる」カメラのサービスを、9月28日に販売開始します。

“置くだけで使える”カメラ

「置くだけで使える」というポイントについてご紹介します。工事が必要な場合、お店のレイアウトを変えるごとにカメラの置き場所を変えることが必要になりますが、それではDXが進みません。

当社としては、さまざまなアダプターに対応するのもありますが、お客さまにとって便利な新しいワイヤレス規格「Wi-Fi 6(IEEE 802.ax)」やLTEドックを採用しています。いわゆるモバイルの携帯電話と同じような通信が使えるため、電源さえ用意していただければ、お店のインターネット回線がない場所でも、簡単に設置できます。新しいDXを行うにあたり、さまざまな場所に置けるというソリューションによってスケールできると考えています。

“空間がつながる” カメラ

「空間がつながる」というポイントについてご紹介します。無人店舗などでは、オペレーターと現場のお客さまがダイレクトに通話できるようになってきています。実際に使用されている無人店舗運営者のみなさまの声をこのようなかたちでカメラに標準搭載して、新しいお客さまに「無人店舗を作るためには、セーフィーが必要不可欠だ」と思っていただけるものにしたいと考えています。

Safie One活用事例

「Safie One」の活用事例をご紹介します。大手スーパーマーケットのベルクさんと当社で「賢くなるカメラ」とAIを実証実験しています。お弁当や総菜売り場は、お客さまが来た時に欠品があるとチャンスロスになり、作り過ぎてしまうと廃棄ロスになるという関係性があり、非常に粗利のコントロールが難しいエリアで、スーパーマーケットの中で一番腕を試されるポイントだと言われています。

従来、どのエリアにどのようなお弁当を置くかについて、勘が頼りにされてきましたが、暗黙知であった業務ノウハウを当社が定量化することで、勘から脱却できるようになってきています。

例えば、この実証実験では、Aエリア、Dエリアが非常に人通りの多いところにあるため、従来であれば、ここに高単価の商品を置いていました。しかし、実はお客さまの購買行動として、Bエリアをただ通過するのではなく、中に入ったところでいったんしっかり立ち止まって、見て、買えるポイントであり、高単価の商品が売れることがわかりました。

そのようなかたちで、スーパーで毎日働いている人たちの勘所を超えるようなデータ化が、AIによってできるようになってきています。我々の提供する第3の目、第4の目というかたちでみなさまの業務に役立てるように、また、そこにたくさんの知能アプリケーションを書き込むことで、この「Safie One」が貢献できる場所が小売の現場にはたくさんあるということを確信しています。

映像とAIで課題を解決できるアプリケーションを続々提供

先ほどから何度もお話ししているとおり、このアプリケーションをいろいろな知能に書き換えていくところは、IPOのときからみなさまともしっかり共有しているアイデアです。

この「AI-App」というフレームワークを搭載しているエッジAIのカメラに、さまざまなアプリケーションを書き込めます。

また、従来のAIの難点として、1回カメラを置いてしまうと、別の環境にAIを置き直す際、どうしても誤検知してしまうことがあり、AIもそこまで賢くないというところがポイントになっていました。今、我々はデータを大量に再学習できるような仕組みをプラットフォームとして作っています。

この知能がどんどん書き換わって賢くなっていくという状態を実現し、例えばAI関連のスタートアップのみなさまも一緒にアプリケーションを作っていくことによって、我々の膨大な顧客網やデータ、お客さまの課題を活用した「マネタイズできる仕組み」を具体的に構築することができます。

今後、このようなエッジAIのカメラのラインナップも増やしながら、さまざまなアプリケーションを展開し、いろいろなインダストリーに対してチャレンジしていければと考えており、「Safie One」というプロダクトをローンチいたしました。

セーフィー認知度向上に向けた施策

古田からもご説明がありましたが「現場DXするんだ」ということで、いろいろな現場のみなさまにとって、カメラを使って業務を変えていくということが、徐々に当たり前になりつつあります。そのような中でも、意思決定者のみなさまにとって、セーフィーという会社がスタートアップでわからないということがあると、やはり弊社サービスをご活用いただくための意思決定に時間がかかってしまうという現実もあります。

したがって、意思決定者層に対して、認知度の向上に向けた施策を進めています。やはり意思決定者の過半数は、当然セーフィーのことを知っているという状態を目指します。さらに今、自分たちの現場で使っているということがわかれば全店舗に展開していこうといったアイデアが膨らむなど、もっと広がりが出てくると考えています。

「現場DXのセーフィー」というコピーで、映像で働き方を変えていくというところがみなさまにしっかり伝わるようなCMを打っていこうと考えています。CMを打って、認知度を向上させることは、いろいろなスタートアップでもチャレンジしており、成功しているところもたくさんあると思います。ここに我々もチャレンジし、認知度を上げて「現場DX」を知っていただき、賢くなるカメラで刈り取っていくというところを、しっかり行っていきたいと考えています。

我々が目指しているビジネスは、いろいろな映像を活用して、あらゆる現場で使っていただくことです。その人たちの意思決定を、AIやカメララインナップを整えていくことで変えていきたいのです。それが我々の「映像から未来をつくる」というビジョンです。

今回から、ようやく賢くなるカメラというかたちで、アプリケーションでお客さまのDXを支援できるようなハードウエアやデータプラットフォームができつつあります。我々としては、それらを活用しながら量を取るだけでなく、しっかりとコンサルティングして、質の向上、また単価の向上までチャレンジしていきたいと考えています。

お客さまから聞こえてくる声をプロダクトに反映し、PDCAを回していくというのが、スタートアップにとっては非常に大事なポイントだと考えています。そこに真摯に取り組むことで、みなさまからお預かりした資金を有効に投資し、それをスケールアップさせていくところに邁進していきたいと考えています。

我々の成長については、今後もいろいろと紆余曲折あるかもしれませんが、我々としては確固たる意思を持って投資していきますので、みなさまとともに対話しながら、成長曲線を見せることで、みなさまの期待にしっかりと応えていきたいと考えています。

こちらで本日のプレゼンテーションを終わらせていただきます。ありがとうございました。

質疑応答:台数の見通しを引き下げたことについて

質問者:私からは3点あります。まず、課金カメラ台数の見通しを引き下げられましたが、これは商流別にブレイクダウンしていくと、どのようになるのでしょうか? これが1点目です。

古田:こちらの見通しに対する内訳を出していくことは考えていないのですが、この推移から考えると、「Safie Pocket」「Safie GO」が期初想定より伸び悩むかというところと、その他の商品についても特定のどこかで問題があるというよりは、これまでの進捗を踏まえ、期初想定より作り直したかたちになります。強いて言えば、他の商品に比べると、「Safie GO」「Safie Pocket」が総体的に少し弱いと見ています。

質問者:つまり、ハウスメーカー関係、製造業務系などでも顧客の拡大をにらんでいて、そこの部分が少し弱かったということになるのでしょうか?

古田:もともと強かったのは建設業界向けで、その建設の周辺領域にも大きな市場があると思って取り組んできました。その周辺のところが思ったように伸びていないというところが、わかりやすい例かと思います。

建設業界では大手スーパーゼネコン各社に使っていただいている中で、中堅・中小企業のみなさまにも、まだまだ大きな伸びしろが残っている状況です。ここをもう一段、丁寧な対応を行うことによって、まだ伸ばせる余地があると思っています。

質問者:お客さま側の投資意欲が鈍っているわけではなく、営業のところで最終アプローチできなかったというところが、この背景にあるのでしょうか?

佐渡島:その点は私からご説明します。カメラによって現場の働き方を新しくしていくことに対して、まだまだお客さまの理解、そして我々がコンサルティングしながら営業していくところが想定よりも少し遅れている印象です。

建設業界をリフレーミングしてみると、遠隔臨場が進められており、新型コロナウイルスの影響を起因とした国土交通省による法整備もあって、各建設現場の業務点検などを遠隔で行いましょうという流れがあります。

また新たにさまざまなインダストリーで遠隔臨場が導入され、現場に行って点検しなければいけない業務はすべて映像での点検に変えようという動きになっていくと思われます。このように、遠隔で仕事をすることが、法律で禁止ではなく、正しいと認められていけば、その部分はより加速していくと考えています。

しかし、急に現場の業務が映像に置き替わるかと言いますと、なかなかそうもいきません。当社のプロダクトラインナップとしても、もう一歩のところがいくつかありますが、ソリューションラインナップをしっかり整えていくことで、お客さまに向き合い、より広い業界に対してアプローチしていきやすくなります。

実際に、ハウスメーカーや製造系でも成功事例が見えてきているところもありますので、横展開できるようにしっかりコンサルティングしていくことで、業界に踏み込んで入って行き、台数を伸ばし直していくことはあり得ると考えています。

質疑応答:営業体制の再構築の進捗について

質問者:2点目になります。営業体制のブラッシュアップ、再構築は年初から取り組まれていると理解していますが、こちらの進捗や状況についてはいかがでしょうか?もう少し時間がかかりそうなのか、おおよその完成形が見えていて、今後より拡販していく体制というのは見えてきているのでしょうか?

佐渡島:課題は見えてきています。上場後のタイミングでビジネスユニットというかたちに変更しており、しっかりと横展開を広げていくというのが、TAMに対してのアプローチ方法になります。きちんと業界に向き合ったセールスチーム、またエンジニアリングチームを作っていこうということで、そのような体制を整えているところです。

非常によかった点は、お客さまからしっかりとお声を聞けるようになったことです。先ほど「Safie One」の活用事例としてお話ししたベルクさんなど、さまざまな大手小売のみなさまからの声を聞いて、新しいプロダクトができていきます。また、「Safie Pocket」もGPSの機能を強化することで、新たな使い方ができてきます。お客さま見合いでものを作ったり、ものをコンサルティングしたりできるというところは、非常によい点だと思っています。

一方で、人に対してグッと投資してみたものの、そこに対して思ったほどの伸びが出ていないところがあります。業界に深く入り込んでいくための知識や、カメラをただのもの売りのようなかたちではなく、お客さまときちんと向き合ったソリューションとして売っていくところに時間がかかっているのが現状です。

したがって、セールスチームがきちんとお客さまに向き合って営業できるような教育も、しっかりと強化していかないといけませんし、お客さまが課題を抱えているとすれば、そこにもう一歩踏み込んでコンサルティングし、ソリューション化していくことが必要です。

そのようなオンボーディングチームが必要になりますが、教育については、今日言って明日育つものではないと考えていますので、専任のチームを整えて強化しようとしています。

オンボーディングについては、もう見えてきていますので、一定の成果が出始めてきていると思っています。教育については、長期的な目線でしっかりと取り組んでいこうと考えていますし、業界ごとのコンサルティングは少しずつでき始めているのですが、まだ数字につながるところにまでは持っていけていません。

また経営としては、営業全体の生産性の向上も、KPIとして追いかけていかなければいけません。Eコマースを展開しているような中小の方もいらっしゃれば、超大手のエンタープライズの方もいらっしゃいます。

商流ごと、顧客ごとに、しっかりと責任を持って成長率を追いかけられるようなチーム作りをすることで、この成長期待に対してお応えできるのではないかと考えています。そのようなマネジメントを、中長期的にしっかり強化していこうと考え、組織化を進めています。

質疑応答:新製品の「Safie One」や「AI-App」について

質問者:新しい製品の「Safie One」や「AI-App」についてです。最初の立ち上げ段階で大口のお客さまとして見えている部分があるのかという点と、「AI-App」を既存の「Safie PRO」や「Safie Pocket」「Safie GO」に入れ込むことはできるのでしょうか? もしくは、新しい「Safie One」だけに入れられるものなのかについて教えてください。

佐渡島:我々は、お客さまと一緒に商品を作っていくというのが、スタートアップとしてあるべき姿であり、「PMF(プロダクト・マーケット・フィット)」が重要だと考えており、開発のタイミングから大手のお客さまにかなり使っていただいています。

今回、発表させていただいたのはベルクさんの事例ですが、実態としては、こちら以外の大手のスーパーマーケット、またみなさまがご存じの服飾のお店や、いわゆるショッピングモールを持っていらっしゃるような企業さまなど、早いタイミングからカメラをつけながら一緒に製品開発を行っていますので、潜在顧客層はもう見えています。

そこに対してしっかりと解決策を提示できれば、大口のお客さまを獲得できると見て開発していますので、一定は見えてきています。ただし、それを横展開やスケールさせていくところは、もう一苦労、二苦労あると考えていますので、先ほどのコンサルティングのようなかたちで、きちんとお客さまに向き合って全店展開していきたいと思っています。

ここまで「AI、AI」と言われていても、店舗業を行っていらっしゃる方々で「AIを全店展開しています」と自信を持って言えるようなユースケースは、いまだにないと思うのです。それは再学習をしていくような仕組みがなかなかないため、どうしてもPoCで終わってしまうというケースが多くあります。

我々は、全店展開したとしても、しっかりと再学習できるAIプラットフォームを作っています。そこはお客さまに自信を持っておすすめできるプロダクトになっていると考えていただければと思います。

もう1点、「Safie PRO」や「Safie GO」「Safie Pocket」でも「AI-App」のようなフレームワークが使えるかというところなのですが、結論を言うと使えるものも用意しようとしています。コストの違いが出てきてしまうのですが、エッジAIというかたちで、いわゆるチップをカメラの中にプリインストールすることにより、さまざまなアプリケーションを書き換えることができます。

エッジで処理する最大のメリットは、アプリケーションを使用する時に現場のコンピュータおよびカメラのみで処理が終わるため、コストが安いということです。

現在の「Safie PRO」や「Safie GO」「Safie Pocket」のようなかたちで処理をしようとすると、AIチップが載っていないため、サーバーシステムでAIを駆動させていかなければいけません。

サーバーシステムでAIを駆動させる仕組みについて、現在は一部のお客さまに使っていただきPoCは進んでいるため、使用に関しては問題ないかと思いますが、コストとしてスケールできるような状態にはまだ至っていないと考えています。

そのため、今後はエッジAIのカメラのラインナップをしっかりと揃えていきたいと思っており、「Safie One」だけではなく、「AI-App」のフレームワークを使える他社にも展開することで、いろいろなカメラで使えるようにしていきたいと思っています。

この部分が整い始めれば、「Safie GO」「Safie Pocket」等の他のカメラに対してもこの機能がより安価に使えるようになり、さらにDXが進むのではないかと考えています。

例えば「コストはかかっても、今までのエッジAIではないカメラとサーバーのシステムで、PoCをやってみよう」というかたちで行ったとしても、最終的にそれが非常に意味のあるソリューションであれば、3万円前後で発売する「Safie One」にどんどん置き換えていきます。

我々のシステムでは、サーバーで動いているAIをエッジやローカルに落とし直すことができますので、その部分まで可能であればいろいろなPoCがすぐに進みます。そしてコストが高ければ、エッジAIのカメラが増えていくかたちになります。

PoCから社会実装というプロセスを見据えると、エッジAIは非常に大事なポイントになりますし、我々のシステム全体でAIを動かせる状況をしっかりと用意することによって、さまざまなお客さまにAIを使っていただく機会を作っていこうと考えています。

質疑応答:今回の業績予想の修正について

質問者:今回の業績予想の修正について質問です。こちらは上期のパフォーマンスだけではなく、下期の業績にも関わることでしょうか? 上期の部分のみに関わることでしょうか?

古田:こちらは上期の進捗および営業で積み上がっているパイプラインの進捗を鑑みた際に、上期実績分だけではなく、下期の部分も含めて修正というかたちで出しています。

質疑応答:コロナ禍の落ち着きによる受注改善の見通しについて

質問者:日本全体で少しずつ外に人が出るようになってきていますが、これにより商流はプラスに利いていますか? また、受注の見通しは改善されてきているのでしょうか?

古田:人々が外に出るようになってきたのは、おそらく新型コロナウイルスの影響がなくなってきたことによると推測しますが、お客さまやその先の消費者の行動が増えていくことによって、当然、小売店や飲食店での活用も増えていくと思っています。その結果として、新しい店舗をオープンするところも増えてくると思いますので、トータルとしてはプラスだと考えています。

今後、人が外に出ることによって、「遠隔で何かを見る」ことは減るかもしれません。しかし、建設現場の見守りなど「遠隔で見られるところは遠隔で済ませる」というニーズは続いていくと思います。我々はコロナの中で遠隔のニーズが顕在化して業績が伸びたという背景がありますが、人出が増えることでネガティブな影響が出ることはあまり考えておらず、経済が活性化することによりプラスのほうが大きいのではないかと考えています。

受注等の見通しについては、上期にいろいろと仕込んでいたところもありますので、その結果として上期よりは下期のほうが見通しが明るいという状況です。

質疑応答:営業教育によるセールスパフォーマンス改善にかかる期間について

質問者:先ほど、営業をさらに教育するというお話がありましたが、どのくらいの期間がかかりますか? そしてセールスパフォーマンスが改善してくるのはどれくらい期間がかかりそうですか?

佐渡島:まず、オンボーディングしていくことについてご説明します。お客さまの「導入してみたが、実は使っていない」というケースについては、現在、さまざまなお客さまのデータを見ながらオンボーディングを進めており、その部分の改善はすでに始まっています。

また、各業界に深いソリューションを打ち出して、それをDXというかたちで大口の顧客に提供していくという点に関しては、既存のお客さまから順番に対応して、徐々に大口顧客とのリレーションを強化し始めています。

新人が入社して、営業力を身につけられるようにするために「セールス・イネーブルメント」というチームを作り、来年に半年くらいの期間をかけて強化していきます。永続的に、どんな方が入ってきてもしっかりと生産性の高い業務ができるかたちで進める取り組みは、中長期的に十分な時間をかけて進めていきたいと考えています。

質疑応答:外部のセールスチャネルの中長期的な取り込み予定について

質問者:御社の営業チームへの投資という話がありましたが、外部の新しいセールスチャネルを新しく中長期的に取り込むことは考えていますか?

佐渡島:新しいお客さまに対するパートナーシップについては、従来に比べて少し絞ったかたちで取り込んでいます。いいパートナーがいればしっかりとパートナーシップを組んで伸ばすことは現在も行っており、パートナーとの関係強化についても今後は取り組んでいきたいと考えています。

NTTグループさん、セコムグループさん、USENグループさん、キヤノングループさんのように、既存でお付き合いしているパートナーさんだけでも、リレーションをさらに強化することで一緒に売っていくことができるため、まだ非常に伸びしろがあると考えています。

そしてスマートビルディングや公共機関などの新しい分野へのアプローチについては、新しいパートナーシップの開拓が重要になってきます。現在は新しいパートナーの開拓と既存パートナーの関係強化を並行して行っていますので、今後もさらにパートナーが増えていくと考えていただければと思います。

質疑応答:販路拡大が期待される業界および事例について

質問者:小売・建設業界の状況を伺いましたが、他の業界で拡大している、ないしは期待されている業界および事例があれば教えていただけますか?

佐渡島:当社では、「Safie Entrance2(セーフィー エントランス ツー)」という顔認証で入退場を行うクラウド型システムを販売しています。カメラと入退場システムをセットにし、スマートビルディングやビルの中にどんどん入っていくような業界を攻略しようと考え、新規事業専門のチームを作っています。

今日、ここでお話しできる内容は限られますが、我々が狙っているのは、超大型の開発プロジェクトに対して、「Safie」がプリインストールされているような状態を作り、しっかりと導入されるというかたちです。

大手のデベロッパーと一緒に、新しいビルづくりやまちづくりを行うチャレンジを進めており、そこでの受注が増え始めています。そのため、カメラがいろいろな設備の中にプリインストールされている分野については、中長期的に見るとまだ大きなマーケットがあると思っています。

顔認証の入退場については、シェアオフィス等で少しずつ利用が始まっています。シェアオフィスのチケット発行やカードの受け渡しが、顔認証によってまったく不要となりますので、そのような業界に対しては徐々にアプローチできるようになってきています。

また、昨今のコロナ禍において、スタートアップだけではなく、オフィスを機動的に運用したい事業者が引越しをするタイミングで「Safie Entrance2」を導入し、総務担当者の業務が非常に便利になったという事例も出てきています。今日はその事例をご用意できていませんが、次回の発表で新しい業界の事例をご紹介できればと思っています。

また、プレスリリースでも出していますが、最近は公共での交通量調査をAIカメラで行うことも比較的需要があると感じています。公共分野においてはカメラを使うだけではなく、新たな交通量調査のアプリケーションとセットで、レンタルしたり常設したりするところにニーズを感じていますので、このような公共分野についても、今後さらに攻められるのではないかと考えています。

質疑応答:公共交通機関からの案件獲得について

質問者:電車や新幹線内の防犯カメラ設置が義務化されるというお話がありますが、公共交通機関向けの営業や案件獲得について、現時点でのお考えをお伺いできればと思います。

佐渡島:昨今、電車の中でいろいろなトラブルが起きているため、比較的遠隔から状況を確認したいというニーズがあることは我々もキャッチしていますので、各鉄道会社にセールス活動をしているところです。電車の中の設備は、電車自体が20年から30年走り続けるという前提で設備設計されているため、技術適用が非常に厳しいです。今日お話しして、明日急に入るというかたちではなく、各鉄道会社がいろいろな仕組みを検討しながら進めているものと考えています。

報道ではすべての車両で義務化されると言われていますので、我々も鉄道会社への営業に注力しています。しかし、短期的に見たときに、簡単に攻略できるようなものではありませんので、今後徐々に進めていく状況ではないかと考えています。

質疑応答:特定卸商流における今後の解約率の増減について

質問者:特定卸商流について質問です。解約率がだいぶ落ち着いてきましたが、この解約率がまた上昇する場合やその部分のリスクについて、今後気を付けておくべき点はありますか?

佐渡島:我々としても特定卸商流の方としっかり向き合い、数字を見て、先ほどお伝えしたとおり、録画されているかどうかも含めてデータを見ながらオンボードしていますので、このあたりが一定のラインで下げ止まり水準になっていくのではないかと思っています。

ほかの会社と販促方法がまったく違うため多少は上下すると思いますが、解約率が上がっても特定卸商流の方にメリットがあるわけではありませんので、お互いしっかりと手を取り合って、この水準を維持していきたいと考えています。したがって、この点に関してはコントロールできている状態だと考えていただければと思います。

佐渡島氏よりご挨拶

佐渡島:みなさま、本日はお集まりいただきましてありがとうございます。我々としては「現場DX」というテーマのもと、あらゆる産業の現場に対してしっかりとデジタルトランスフォーメーションしていく点はぶれることなく、投資すべきところはしっかりと投資し、営業成績を上げるところではしっかりと生産性を上げていくという目線をもって、みなさまと対話していきたいと考えています。

今後とも成長にご期待いただければと思います。本日はお時間をいただき、どうもありがとうございました。

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