米税制改革案に期待をつないだ1週間
先週(2017年4月17日-4月21日)の世界の株式市場は前々週の全面安から少し落ち着きを取り戻し、まちまちとなりました。主要市場の週間騰落率は、現地通貨ベースでTOPIXが+2.0%、S&P500が+0.8%、独DAXが▲0.5%、上海総合が▲2.2%でした。
先週は中東や北朝鮮情勢には大きな変化はありませんでした。しかし23日にフランス大統領選挙の第一回投票を控え、パリでテロがおきるなど政治的不透明性に注意を怠れない市場環境が続きました。
リスク警戒は続きましたが、混迷に至らずに市場が落ち着いたのはムニューシン米財務長官の発言でした。1つは長期的にはドル高が米国の国益にかなうという先々週のトランプ大統領によるドル高修正に対する牽制発言、もう1つは税制改革案を早期に提示するという発言でした(4月26日に予定されています)。
このところトランプ政権の経済政策に対する期待感が後退したうえ、米国景気に減速懸念が出ていましたので、税制改革の進展は渡りに船の材料になり、4月に入り2週連続で下落していたS&P500は反発しました。
米国以外では、円高一服と海外投資家の買い越し姿勢が確認された日本株が上昇しました。欧州市場では先のムニューシン発言にもかかわらずドル安ユーロ高が進みましたが欧州株は小幅安で終わりました。一方、中国では大規模減税を用意する傍らで新設特区銘柄に対する投機的動きへのけん制や銀行・保険に対する監視強化が進められ上海株は大きく下げています。
米国ではいよいよ決算が本格化しました。発表した銘柄の週間騰落率を見ると、ビザ(V)、ハネウェル・インターナショナル(HON)アメリカン・エクスプレス(AXP)の上昇が目立つ一方、IBM(IBM)、ジョンソン&ジョンソン(JNJ)、フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)、ベライゾン・コミュニケーション(VZ)、ゴールドマンサックス(GS)が大きく下げました。業績に対して株価の目線が厳しいというのが率直な印象です。
アウトルック:材料が豊富。米税制改革、米企業決算、日銀が特に重要な週に
今週(2017年4月24日-4月28日)は、重要な材料が続くヘビーな週になります。
具体的には、フランス大統領選第一回投票(4月23日)、北朝鮮人民軍創設85周年(4月25日)、米税制改革案提示(4月26日)、欧州中央銀行理事会(4月27日)、日銀金融政策決定会合および経済・物価情勢の展望レポート(4月27日)、米2017年1‐3月期GDP速報値(4月28日)となります。さらに米国の決算が山場を迎え、日本でも決算が本格化します。
変数が多いので単純化は難しいのですが、最も重要と思われるのは、米国の税制案が議会に受け入れられる内容でかつ政策効果の大きいものなのか、またこの発表によって材料出尽くし感が出るかだと思います。希望がつながる場合であれば、GDP統計にFRBの利上げのペースを探りながら物色動向が決まっていくと思います。
そのためにもアップル(AAPL)、アルファベット(GOOG)、マイクロソフト(MSFT)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、フェイスブック(FB)、エクソン・モービル(XOM)などの決算がしっかりしていることが求められます。
なお、米国の経済政策の枠組みが固まれば、通商・通貨政策の方向性も見えてきます。5月11-13日にG7財務大臣・中央銀行総裁会議を控えており、為替動向が注目を再び集めそうです。この文脈で見ると、今週の黒田日銀総裁の会見は非常に重要になりそうです。円安誘導とは受け止められない新しいデフレ策を出してくるのか目配りしておきたいです。
最後になりますが、26日ごろが新月にあたりますので、軍事面の注意も必要になるでしょう。
椎名 則夫