トランプラリーに陰り、地政学リスクが追い打ち
日本取引所グループから、日本株の投資主体別週間売買動向の2017年4月14日の週までのデータが開示されました。注目すべきデータです。
まず、最近の相場のおさらいをしておきましょう。
日経平均は2017年3月2日に年初来高値19,668.01円を付けましたが、3月16日に19,600円台を付けて以降下落に転じ、2017年4月14日は18,335.63円まで下げて終わっています。翌営業日である4月17日に年初来安値18,224.68円を付け、ここからやや下げ止まり始めています。
下げの要因は米景気の減速の兆候、トランプ政権の経済政策に対する失望、円高の進行、朝鮮半島や中東での政治・軍事リスクの高まりなどです。威勢のよい声はすっかり影を潜めました。
では、投資主体別の売買動向を確認してみましょう。
リスクオフで売り越しに転じたのは個人投資家
個人投資家は年初来売り越し基調でした。しかし、3月13日で始まる週から3月31日まで累計5,189億円の買い越しとなりました。日経平均がピークから下げて19,000円前後になるタイミングです。
しかし、4月に入り日経平均が19,000円を割り込んで18,000円台前半まで調整すると買いの手が引き、4月3日‐7日の週は+4億円の買い越しにとどまり、地政学リスクが本格的に高まった4月10日‐14日の週には▲509億円の売り越しに転じました。イメージ的には、リスクオフのためいったん損を確定したと言えるでしょう。
海外投資家は4月に入り買い越しに転じた
一方、海外投資家の3月-4月の動きは個人投資家とは真逆になりました。
海外投資家は、3月は一貫して売り越していましたが、4月に入ると買い越しに転じています。4月第1週は+908億円、第2週は+1,027億円と2週連続の買い越しです。海外投資家から見ると、3月から4月にかけて円高以上に円建ての日本株の価格の下げが大きくなった結果、ドル建ての日本株に割安感が出たからだと思われます。
リスクオフ相場と言われますが、海外投資家はこの期間に実は買い越していたというわけです。
海外投資家の姿勢の変化は相場のセンチメントを変える可能性も
これまで個人投資家は「買い下がり、売り上がり」型、海外投資家は「買い上がり、売り下がり」型が多かったと筆者は理解していますが、足元ではこれとは異なる動きが出ています。
相変わらず日銀の買い越しが突出する日本の株式市場ですが、海外投資家の投資スタンスが買いに転じたことは好ましい変化と言えます。
個人投資家は3月中の買い越しポジションの調整が進めば、下げたところを買い増していく従来のスタンスに戻ることが期待できるのではないでしょうか。投信の売りも4月に入り目立って減少するなど、需給環境は4月以降改善に向かっていると言えそうです。
日本株は来週から本格的な決算期に入ります。業績の安心できる銘柄を中心に海外投資家と個人が積極的に買いに出てくれば、市場のセンチメントは明るくなるのではないでしょうか。
椎名 則夫