祝GINZA SIX開業

銀座の街では、インバウンド増加による爆買いという大きな特需が消え去りました。また、少子高齢化と実質所得の伸び悩みに苦しむ消費環境で、婦人衣料品の領域でもEコマースという新しい販売チャネルが急速に台頭して旧来の百貨店業界に襲い掛かっています。こうした荒波に百貨店業界が立ち向かうには、自らの旗艦店舗の刷新に頼るしかありません。

J.フロントリテイリング(3086)の旗艦店舗、松坂屋銀座店が閉店したのは2013年6月でした。その跡地に、2017年4月20日、文字通り装いも新たにGINZA SIXが開業しました。銀座6丁目の大型商業施設の誕生です。

GINZA SIXは地下2階~地上6階、および13階の一部に売り場面積4万7千㎡の商業施設と、7階~12階と13階の一部からなるオフィス、さらに屋上庭園と地下3階の観世能楽堂を含む複合商業施設です。

筆者もさっそく見に行きましたが、広々とした空間に、いわゆるイケている店舗が並んでおり、エスカレーターで各フロアを順にめぐっていくのが楽しく感じられます。中でも特に気になったのは、6階にある蔦谷書店です。代官山の蔦谷書店を彷彿とさせる作りで、文化の発信基地としての力を感じます。

銀座は新しい競争へ

「ゴールデンウィークは人が集まるな」というのが第一印象です。

目と鼻の先には銀座4丁目の交差点があり、そこには三越銀座店が構えていて、その先には松屋銀座があります。松坂屋銀座店閉店以降、この2店舗が残存者利益を享受してきましたが、競合店舗が戻ってきたことで競争が始まります。

ちなみに、GINZA SIXは「ラグジュアリーモール」という位置づけで、三越、松屋の店構えとは少し違う顧客を意識していると思われます。GINZA SIX効果で銀座地区全体の集客力が高まると考えられますので、大きくなるパイをどう分け合うかという戦いになるでしょう。

三越は次のようなメッセージで消費者にアピールしています。

GINZA SIXは新生松坂屋銀座店ではない

さて、GINZA SIXを考えるうえで重要な点は、これが松坂屋の店舗ではないということです。

事業主体は同社に加えて森ビル、L Catterton Real Estate、住友商事が参加した共同事業です。松坂屋の売り場はありません。ブランドモールの運営者として収益をあげる、いわば不動産業になるのです。

さらに、上層階では賃貸オフィスをリースし不動産の有効活用をしています。このように、GINZA SIXは新・松坂屋という小売業ではなく、都市型不動産運営を行う事業体といえます。

GINZA SIXが成功するかどうか、その答えは東京オリンピック後に出ると考えるのが常識的でしょう。その頃、都心部の百貨店がどのように消費者から支持されるのか、百貨店専業がよいのか、不動産賃貸の比率を上げるべきなのか、都心のオフィス市況が軟化しないのか。これらの変数が百貨店各社の収益の行く末を決めていくことになりそうです。

椎名 則夫