2022年5月12日に行われた、アステリア株式会社2022年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:アステリア株式会社 代表取締役社長/CEO 平野洋一郎 氏
アステリア株式会社 常務執行役員 営業本部長 マーケティング本部長 熊谷晋 氏

アステリアの主力事業

平野洋一郎氏(以下、平野):みなさま、こんにちは。本日は、アステリアの通期決算説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。ただいまより、通期決算説明についてお話しします。

まず、アステリアの主力事業ですが、創業時より行っているソフトウェア事業が中心です。そして、2017年から始めているデザイン事業、2019年から始めている企業投資事業の3つが私たちアステリアの主力事業です。

そして、この3つの事業は、基本的に2つの新しい事業がソフトウェア事業の成長を支えるという構造となっています。それでは、3つの事業構成に沿って本日の決算説明を行います。

売上収益と営業利益

決算概要です。すでに本日15時に開示していますが、2022年3月期通期決算をご説明します。なお、当社の会計基準は国際会計基準(IFRS)となっています。

まず、今回の決算概要、ハイライトです。売上は2桁の増収、そして営業利益は最高益を更新しています。売上収益は、前期比10.4パーセント増という結果となりました。

売上収益は予想値の29億円を超え、29億6,800万円です。デザイン事業は減収となりましたが、それにもかかわらずソフトウェア事業がさらに伸び、結果として前期比10パーセントを超える2桁増収となりました。

営業利益は、前期比320.3パーセント増、つまり倍率にすると4倍強を記録しました。ソフトウェア事業が好調であったことに加え、企業投資事業も好調に推移し、大きく利益を積んでいます。

売上(トップライン)好調の要因

売上好調の要因として、ソフトウェア事業の特に3つの製品が大きな伸びを記録したことが奏功しています。ソフトウェア事業単体では、トップラインは前期比17.2パーセント増と大きな伸長となっています。

まず、主力の「ASTERIA Warp」という製品が幅広い分野でDXの活発化に支えられました。このデジタル化に伴い、電子帳簿保存法などのさまざまな法律改正も行われており、このようなことが追い風となっています。

そして、新しい製品の「Platio」「Gravio」については、コロナ禍での現場のDXニーズや、遠隔化、自動化への対応の増加により伸長しました。

利益大幅増(最高益更新)の要因

利益が大幅に増加し最高益を更新した要因は、企業投資事業において、通期合計で40億円を超える評価益を計上することになったためです。この通期は、出資先のうち4社で評価益の変更が発生しています。

その中でも、Gorilla Technology Inc.(以下、Gorilla社)は台湾のAI最大手の会社ですが、評価益に一番大きな影響を与えています。また、利益の増加要因には、投資事業だけでなく、為替差益やアーンアウトの戻し益などもこの中に入っています。

各事業の通期業績

先ほどお伝えした3つの事業についてご説明します。ソフトウェア事業は、前期比17.2パーセントの増加で、25億円を超えています。「ASTERIA Warp」や、サブスクリプション製品も非常に好調です。

デザイン事業は、前期比82.5パーセントと、残念ながら前年割れという結果となっています。今のところ海外のみの事業ですが、特に欧米のコロナ禍による顧客企業のダメージが影響しました。一方で、第4四半期には北米で新規顧客を獲得することもできています。

企業投資事業は先ほどお伝えしたとおり、合計で40億円を超える評価益を計上しています。

ソフトウェア事業

事業の中心となるソフトウェア事業の中身をもう少しお話しします。主力の「ASTERIA Warp」ですが、今回はライセンス販売が絶好調と言える伸びを示しています。前期比42パーセント増で、これは上場以来、初めての伸びで、非常に伸長しました。

これを踏まえて「ASTERIA Warp」全体のビジネスも過去最高となり、売上高は約22億円となりました。サブスクリプション版の「ASTERIA Warp Core」も3割以上増加しています。サポートも初の10億円台を突破し、「ASTERIA Warp」ビジネス全体で大きく伸びたことで、全体をけん引しています。

ソフトウェア事業

ソフトウェア事業のほかの製品ですが、「Handbook」は、いよいよ新製品を第4四半期に発表、そして発売しました。「Platio」は3日でアプリを作ることができる製品ですが、新しいCMなどのテレビ展開、交通機関やタクシーでの展開により、プロモーションを積極的に行っています。このようなことが奏功し、幅広い業界から強い引き合いをいただいています。

「Gravio」はAIを搭載したIoT統合エッジウェア、IoTをつなぐ製品です。こちらはまだ市場的には少し早い状況ですが、AI、そしてIoTといった領域のパートナー協業でビジネスを拡大してきています。また、自動化、遠隔化などの新しい働き方への対応も進めています。

ソフトウェア事業 MRRの推移と解約率

ソフトウェア事業の中で特に注目されているサブスクリプション製品の状況についてお話しします。サブスクリプションは4製品、4形態あります。

「ASTERIA Warp」ビジネス全体の販売の4割くらいはライセンス版ですが、「ASTERIA Warp Core」というサブスクリプション製品もあります。スライドの一番左側に24ヶ月の月次の伸びを示していますが、しっかりと伸びています。また昨年後半に大きく伸びているということがわかると思います。

2つ目の製品の「Handbook」は、2月28日に「Handbook X」という新世代を出荷しました。これまで月次が伸び悩み、そして一部下がるという状況でしたが、これから先は大きく伸ばしていこうと考えています。

3つ目の製品の「Platio」は、100パーセント、サブスクリプション製品で、こちらも月次で出しています。数値は今回からご報告していますが、この24ヶ月で5倍の伸びを示しています。「Platio」は非常に多くのユーザーを獲得しつつありますので、当社史上最大のプロモーションを継続していきます。

最後に「Gravio」ですが、こちらもすべてサブスクリプション製品です。24ヶ月で10倍と、非常に大きな伸びを示しています。

販売管理費の推移と内訳

費用のうち、販売管理費の推移と内訳です。すでにご報告していますが、中期経営計画の初年度に当たるのが2022年3月期でした。中期経営計画に基づき大きな伸びを実現するために、人件費、採用費、広宣販促費に先行投資を行いました。

中期経営計画どおりに推移しており、結果として、人件費、採用費や広宣販促費も伸びています。

販売管理費の変化/構成比の推移

一つひとつの費目の状況を分析します。まず、人件費は、順調に伸びています。全体の費用の割合は若干下がっていますが、しっかりと費用をかけて有力な人材、優秀な人材の獲得に努めています。

旅費交通費はスライドのとおり、大きく下がっています。前期比では少し上がっていますが、コロナ禍前の状況からは大きく下がっており、私たちは基本的にテレワーク主体の働き方にシフトしていますので、今後は元のように大きな数字に戻ることはありません。

広宣販促費は、中期経営計画で特別予算も取り、大きく伸ばしています。特に「Platio」「Gravio」の新製品、さらに「Handbook X」の新製品投入にあたり、今回の利益から捻出する特別予算で全体の3割という大きな投資をしています。

地代家賃についてもテレワーク主体の働き方、あらゆる場所で働けるという働き方によって、減少傾向となっています。

売上収益から営業利益までの内訳

売上収益から、営業利益までの内訳はスライドのとおりです。売上原価があり、販売管理費、投資先評価益が40億円強計上されています。

のれんはすでに開示していますが、This Place Limited (以下、This Place社)のここ2年間の業績を鑑みて、のれんの減損を行い、最終的に営業利益は34億4,500万円となっています。

営業利益/税引前利益/当期利益

営業利益から税引前利益、当期利益になります。今回、特筆すべき点は金融損益です。金融損益には為替差益が大きく出ています。また、This Place社の買収にあたり、5年間のアーンアウトが終了したため、その精算で戻し益が発生しており、これもプラスに作用しています。

その他、税引前利益から税金等を引き、当期利益は25億1,000万円と、上場来、そして創業来最高の当期利益となっています。

経営指標の推移

定点観測でご報告している経営指標の推移について、ご説明します。売上総利益率は84パーセントまで上がっています。営業利益率は、今回は投資益がありますので、100パーセントを超えるという珍しい数値になっています。

サブスクリプション製品の売上を伸ばしていくという経営方針を立てていますが、ライセンス売上が非常に伸びたというミックスの影響により、0.2パーセント下がるという結果となりました。海外売上も長期的に伸ばしていきたい項目ですが、デザインサービスは前期割れで、海外売上比率も下がっているという状況です。

財政状態計算書

これらの結果を踏まえた財政状態計算書ですが、自己資本比率も非常に高く、7割を超える状況です。積極的な今後の投資に耐えうる、極めて健全な財務体質であるということがわかるかと思います。

キャッシュ・フロー計算書

キャッシュ・フローはスライドのとおり、積極的な投資、財務活動をしていることが反映されていますが、それでも18億1,600万円の現預金を有しています。非常に機動的な投資も迅速にできるという状況です。

期末配当

期末配当です。3月に予想値を発表しましたが、それを今回確定値とし、1株あたり4.5円配当します。

中期経営計画[STAR]達成に向けて

数値を支えるさまざまな出来事、トピックスについてお話しします。今回は中期経営計画「STAR」の初年度のご報告をしました。3年後には、売上収益は45億円、調整後EBITDAは10億円の計画を立てています。

初年度の結果は、売上が29.7億円、営業利益が34.5億円で、この大きな利益を今後トップラインの成長にしっかりと投資していきます。

今年は、45億円という売上収益を達成していくための仕込みの年でした。2022年度はすでに始まっていますが、仕切りきって投資をしっかり行い、最後の仕上げの年につなぎたいと考えています。

核となる人材獲得の状況

45億円という売上収益を実現していくのは人材です。人材もしっかりと採用し、育成しています。新卒採用は、2020年度(2021年春入社)から始めていますが、新年度も採用し、今後も継続する計画です。

また、働き方の多様化ということで、熊本や名古屋のオフィス、さらには本社の移転、今年4月にはデザイン事業部という新しい事業も開始し、多彩な人材をそろえる計画です。

核となる人材獲得の状況

核となる人材獲得も中期経営計画の重点目標に沿って進めていきます。今週月曜日( 5/9)にはCXOという新しい役職と、その初代の着任のニュースを発表しました。CXOはChief Transformation Officerの略です。

最近ではDXという言葉を聞かれる方も多いかと思いますが、DXはデジタルトランスフォーメーションの略で、トランスフォーメーションを略してXとされています。このXを使い、チーフ・トランスメーション・オフィサー、CXOとしました。

CXOに着任したのが富士通の理事で、主席エバンジェリストの中山五輪男(なかやま いわお)です。富士通以前にはソフトバンクに所属し、「iPhone」の日本上陸の時から、孫正義氏と中山がAppleに認められたエバンジェリストとして、日本のスマホ業界をけん引してきました。

今回、アステリアのCXOとして、私たちが製品戦略の中に据えているノーコードを、全国に、ひいては世界に広めていくエバンジェリストの役目を担います。ソフトバンク時代、そして富士通時代に、年に200回、300回の講演をこなしてきた中山が、これからはノーコードを世に広めていくという役目で、アステリアのプロダクトサービスをけん引していきます。

働き方の多様化による採用強化

さらに新しく優秀な人材を獲得するために、働き方の多様化も進めています。コロナ禍でテレワークが当たり前になってきましたが、私たちは一歩進めて、5種類の働き方をすでに実践しています。

テレワーク、オフィスワークだけでなく、サテライトオフィス、バーチャルオフィス、さらにはリゾートオフィスといった働き方を組み合わせることで、効率的に、しかも能率を上げて結果を出していくことができます。

実際、この働き方にしてから、全体の4分の3の社員が生産性が向上したと感じていますし、実際に業績も上がっています。なぜなら、働き方における無理、無駄が排除されてきているためです。

企業投資事業 2021年度通期概況

みなさまご注目の話題に入っていきたいと思います。3つの事業の中で、Gorilla社の件などで多数のご質問もいただいている、企業投資事業からご説明します。スライドには、四半期ごとに上部から下部に、どのようなことが起こったかという通期の状況がまとめてあります。

通期で40億円強の評価増となり、Asteria Vision Fund Inc.(以下、AVF)の出資先企業は6社となっています。第4四半期の部分をご覧いただくと、すでにご報告したSpace Exploration Technologies Corp.(以下、SpaceX社)に加えて、この3月に他1社に約2億円強出資しており、これを加えて6社となります。この他1社は、契約上残念ながら社名も概要も出せませんが、これをもってほぼ「AVF-1」の出資は終了となります。

企業投資事業 第4四半期の新規投資先は2社

第4四半期の状況は、繰り返しになりますが、SpaceX社に200万米ドル、そして他1社に200万米ドルを出資しています。これは、基本的には当社の「4D」という戦略に沿って出資しています。他1社のご説明ができないのが残念ですが、第4四半期に新たに出資したSpaceX社について再度簡単にご説明します。

企業投資事業 分散型衛星インターネットに着目

SpaceX社は、ロケットの打ち上げ会社として有名ですが、私たちが「4D」の中で注目しているのはそこではなく、「スターリンク」という分散型衛星インターネットです。スターリンクは、数万機という衛星を地球の周りに並べ、地球上どこからでもインターネットにつなぐことができます。

私たちが出資した直後にウクライナ侵攻がありましたが、ウクライナのインターネット網をスターリンクでつなぐということも瞬時に可能になっているわけです。これまでのように、リアルな回線を引いたり鉄塔を建てることなく、どこでもすぐにインターネットがつながるところに私たちは注目しています。

企業投資事業 Gorilla社の上場は4〜6月を予定

みなさまからのご質問の多いGorilla社について、スライドにまとめています。昨年、Gorilla社はNASDAQ市場へ上場することを発表しました。正確に言うと私たちが発表したのではなく、Gorilla社が合併予定のGlobal SPAC Partners Co. (以下、Global SPAC Partners 社)が発表し、私たちはGorilla社の株主としてそれを受けているという状況です。

NASDAQ上場に関するこれまでの経緯は、スライドに記載しているとおりです。現時点では前回ご報告した上場見込みの日程は第2四半期と開示されています。第2四半期はカレンダーどおりですので、4月から6月の間にNASDAQ市場に上場予定ということです。

これらの情報は、すべて米国のSECのサイトに載っていますし、私たちがみなさまにご説明する情報としては、スライドのとおりです。このような説明会等を待たずとも、サイトに新しい情報が載りますので、もし最新情報にご興味のある方は、サイトをウォッチしておいていただければと思います。

現時点では、すでに5月になっていますが、4月から6月にNASDAQ上場予定と公表されているという状況です。

デザイン事業 コロナ禍ダメージも黒字を継続

デザイン事業です。顧客企業がコロナ禍で影響を受けているため、前年割れを続けてきました。累計では通期でも前年割れなのですが、実は第1四半期、第2四半期が前年割れ、第3四半期、もしくは第4四半期単体で見ると前期を超えています。まだリカバーしきったとはまったく言えませんが、リカバーの兆候が少し見えているという状況です。

売上は下がりましたが、このビジネスのみで通期で黒字と、うまくマネージしています。つまり迅速なコスト削減なども行っているということです。また、第4四半期にはアメリカでの活動拠点をカリフォルニア州ロサンゼルスに移動し、現時点でIT企業2社の顧客を獲得できています。

まだ社名をみなさまにお伝えすることはできませんが、私たちの計画どおり、コロナ禍に強いIT企業にシフトし、顧客の獲得もできているといます。

また、4月に日本でデザイン事業部を新設し、日本でのデザインサービスの開始準備をしています。

ソフトウェア事業 ASTERIA Warp: 主力製品が大きく成長

一番大きな部分であるソフトウェア事業です。金額が大きいため、4つの製品に分けてご説明します。主力製品の「ASTERIA Warp」は、大きく成長しました。先ほど、全体のライセンス売上で4割強という話をしましたが、ほかのサポートなども入れても、売上は前期比20パーセント増に迫る大きな売上になっています。

「ASTERIA Warp」ビジネスのいわゆるリカーリング売上、継続売上比率も55パーセントを超える非常によい状況になっています。導入社数は1万社に迫り、各四半期で記載できないほどの新しい事例、パートナー、アダプターなどを発表しています。また、この年度も15年連続市場シェアNo.1を獲得しています。

ソフトウェア事業 積極販促:パートナートップ対談

他の製品と同じく積極的に販売促進も行っています。トップパートナーのパナソニックインフォメーションシステムズ、日立ソリューションズなどとトップ対談をしたり、新しい中部のローカルキングと言われるトーテックアメニティなどと協業を進めています。

ソフトウェア事業 ノーコードの理解と市場を広げる

マーケティングの側面として、ノーコードをさらに積極的に推進し、ノーコードゲートという新しいサービスのWebサイトを作っています。従来の言い方をするとポータルですが、ノーコードのさまざまな情報が集まるサイトです。アステリアのノーコードツールだけでなく、他の企業のノーコードツール、ソフトウェア、サービスなどもここで収集ができます。こちらは2022年4月にグランドオープンしています。

ソフトウェア事業 Handbook: 2021年度通期概況

「Handbook」についてです。お待たせしていましたが、前半は、新世代の「Handbook X」をずっと準備していました。「Handbook X」は、ここのところずっと停滞していた「Handbook」のMRRの頭打ちの状況を打破するというミッションを帯びて出荷されています。

新しい世代ですので、今後10年以上通用するアーキテクチャとして開発されています。準備期間を経てロゴや作戦も決まり、第4四半期の2月28日にはテレビCM、交通広告、芸能人を招いた発表会など、これまでにないくらいの規模で大きく展開しています。

そのようなことが奏功し、すでに1万5,000ダウンロードを達成しています。これはかなり前倒しに達成している状況です。

ソフトウェア事業 10年以上通用するアーキテクチャ

「Handbook X」は今後10年以上通用するアーキテクチャとしていますが、これについてご紹介します。これまでの「Handbook」は、いわゆる中央集権型の設計になっていました。「階層・規律・統制」型の組織に合ったものでしたが、これからは「自律・分散・協調」型の社会や組織になっていきます。このようなところに非常にマッチした製品になっているということです。

これは、ヒエラルキーで古いルール、そして固定化、肥大化したような組織ではなく、自由で、必要に応じて作ることができる組織、そして必要に応じて切ることのできる組織までカバーする製品です。

ソフトウェア事業 10年以上通用するアーキテクチャ

「Handbook X」はモバイルを最大活用し、個人やチームをパワーアップします。テレワーク、ワーケーション、コミュニティ、そして新しい形態の副業/複業などもカバーしていきます。

ソフトウェア事業 Handbook X 市場の拡大

これまでの「Handbook」はどうしても大企業や中堅企業というユーザーが多かったのですが、この「Handbook X」は新しいアーキテクチャにより、中小企業、コミュニティ、さらには個人のフリーランスなどの方々までつなぐ領域を拡大します。

ソフトウェア事業 Handbook X 市場の拡大

この領域には非常に大きな市場があります。それぞれ、これまでの「Handbook」では考えられないほど桁違いに大きな市場があり、このようなところを狙っていきます。

ソフトウェア事業 アステリア史上最大のプロモーション

アステリア史上最大のプロモーションを「Handbook X」でも行っています。ビデオをご覧ください。

いかがでしょうか? テレビで、もしくはタクシーや駅で見たという方もいるかもしれません。「Handbook X」は、新しい10年に向けてローンチしました。

​​

ソフトウェア事業 Platio: 2021年度通期概況

1年間で「Platio」もいろいろな事柄がありました。4月末には導入社数は200社を突破しています。事例も数多く、続々と発表しています。そして、企業や自治体でさまざまなアプリを作っていただいています。

「Platio」の世界を広げるために、「Platio Connect」「Platio One」という製品を発表し、ノーコードの中の4つの分野で「Platio」がNo.1を獲得しました。

ソフトウェア事業 アステリア史上最大のプロモーション

史上最大のプロモーションの一環として、日経ビジネスやネット系のJBPress、日本経済新聞で全面広告を打つなどして、ノーコード、「Platio」を幅広く認知させる活動をしています。

ソフトウェア事業 Gravio: 2021年度通期概況

通期では「Gravio」もさまざまな展開をしています。4月には日本だけでなく国外のグローバルGravioチームを創設し、日本の組織名をグローバルGravio事業部としました。その後は、CO2センサーパックの出荷やさまざまな連携・提携を行っています。

直近では、高校で新しく「情報Ⅰ」の授業が始まるため、授業での活用などを進めています。4月にはシンガポールにBizDev事業開発部を創設して、英語圏の事業開発を行っています。

売上も前年比170パーセントと増加しました。前期は新型コロナウイルスの影響でかなり大きく伸びましたが、さらに伸びており、事例も続々と発表しています。

バーチャルオンリー株主総会

製品以外のコーポレート全体のお話です。近々、株主のみなさまには招集通知を送付しますが、産業競争力強化法の改正に基づき、バーチャルオンリーの株主総会を初めて開催します。

バーチャルオンリー株主総会では、当社のブロックチェーンの技術を使い、非常に透明性の高い株主総会を実施しますので、ぜひ、オンラインでご参加ください。

このようなアクティビティにおいても、当社は脱炭素型、カーボンオフセットなどを積極的に推進しています。今年も、カーボンオフセットで「実質、二酸化炭素排出ゼロ」の株主総会を行います。

企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)に係る大臣表彰

さまざまなアクティビティにおいて、地方創生の寄与で大臣表彰を受けています。地方創生担当大臣の野田聖子氏からスライドのようなかたちで表彰を受けています。すでに4桁の企業が企業版ふるさと納税を行っていますが、その中から選ばれた非常に数少ない企業の1社として表彰を受けました。

単なる寄附にとどまらず、当社のDXもしくは技術力を活かし、地方自治体に貢献している点が評価されました。

IR優良企業賞2021 「 IR優良企業奨励賞 」

IR優良企業賞2021 で「IR優良企業奨励賞」を受賞しました。インターネットなど新しい技術やブロックチェーンを使って積極的な発信と対話を行っている点や、海外に向けても始動している点が評価されました。

これからも株主、投資家のみなさまとのコミュニケーションを大切にし、将来に向けて一緒に挑戦していきたいと考えています。

以上で、2022年3月期通期決算説明会を終了します。本日はご清聴いただきまして、誠にありがとうございました。

質疑応答:投資事業について

司会者:「Gorilla社のNASDAQ上場への展開は現状どのようになっていますか? SECによると、企業結合を完了しなければならない期日を、2022年4月13日から2022年7月13日に延長していますが、6月までの上場で変わりはないのでしょうか?」

平野:Gorilla社の上場については、実際にSECのサイト上で公開されている発表がすべての情報です。ご質問にあったように、Global SPAC Partners社と合併する期日が7月13日に延びており、これも公開されています。

実際の上場見込みは第2四半期で、4月から6月の期間のため、変わりありません。

質疑応答:上場について

司会者:「NASDAQ統合指数は年初来最安値の状況ですが、仮にこの状況下で上場すると、総合的にはマイナス要素のほうが大きいのでしょうか?」

平野:NASDAQ市況はたしかによくない状況ですが、これによって株価がどの程度影響を受けるかは、はっきりとわかりません。もちろん全体の傾向が株価に影響しますが、Gorilla社の評価額「708百万米ドル」という設定は、他のAI企業の予想PERなどに比べるとかなり低く設定してあります。

バッファーがある設定のため、今のNASDAQ市場の状況そのものが非常に悪いとは考えていません。

また、目の前ではNASDAQの市況は悪く見えますが、アメリカの伸びを考えると、悲観するような状況ではないと考えています。上場することで、影響を受けるかもしれませんが、上場そのものにはあまり影響がないと捉えています。

質疑応答:Gorilla社の評価ついて

司会者:「Gorilla社の評価ですが、708百万米ドルの評価がされた昨年末と比べるとハイテクEFTは6割と、アステリアが評価益計上のリリースを出した1月時点と比べると5割ほど下げています。実際に上場した時はマーケットで価格が決まると思いますが、それまでは現在の評価のままでしょうか? 円高を考慮してもかなり厳しい価格になると思いますが、いかがですか?」

平野:マーケットの状況は何とも言い難いところです。すでに合併側のGlobal SPAC Partners社はNASDAQ市場に上場しています。これが悲観的であれば、現在の10ドルから割り込み、株価はもっと下がっていくはずですが、Global SPAC Partners社の株価は下がっていません。

Gorilla社の合併や今後の計画を発表していますが、株価は下がっていないという事実を直視していただきたいと思います。そこから先の株価について、私自身は言及できませんが、事実としては知っていただけたらと思います。

質疑応答:株価の4桁定着について

司会者:「以前、『株価の4桁定着には何が必要だと思いますか?』というご質問をした後に、株価は一度4桁となりましたが、その後はまた戻ってしまい、4桁が遠くなってしまいました。再度お聞きしますが、株価4桁定着にはどのようなことが必要だと思いますか?」

平野:4桁定着に関しては、マーケットの状況もありますが、やはり個々の企業の状況が一番です。まずは業績、それに加えて将来性が重要です。

株価が4桁を割った時は、デザイン事業で将来の信頼を失ったと考えていたため、ここを復活させることで、信頼を再度得ることができるようにトライしています。

ベースとなる業績では、当社の根幹の事業であるソフトウェア事業をしっかりと伸ばすための中期経営計画を立てています。現在のマーケット状況が継続すると仮定しても、中期経営計画を達成すれば、4桁には間違いなく到達すると考えています。

質疑応答:配当について

司会者:「配当金、配当性向が低いのが非常に目立ちます。配当性向3パーセントほどでは印象が悪く、また、昨年より大きく利益が伸びているにもかかわらず、増配となりません。配当性向は2桁に遠く及びませんが、気にしていないのでしょうか?」

平野:配当に関しては、3つのファクターがあります。1つ目は、今回利益が大きく出ていますが、これは会計上の利益です。Gorilla社株の現金化については、当社は大株主のため大量に売るようなこともできません。さらに上がったところを狙うとなると、現金化に少し時間がかかります。配当には現金が必要なため、難しいのが現状です。

全体の話になりますが、2つ目は制度上の制限があります。配当は単体、つまりアステリアの余剰金の範囲でしか出すことができず、そこには複雑な10以上のパラメーターがあり、その範囲内での配当になります。

今回は利益が大きく出ているため、利益に対する配当性向は、通常よりもかなり低くしています。

3つ目は、配当に対する考え方です。当社は成長企業という位置づけのため、配当を増やして株主に還元することよりも、株価を伸ばすことで還元しようと考えています。利益を再投資し、その中で残るものを株主の方々とシェアするという考えです。

これ以上、事業がなかなか伸びない、ここから先成長が難しいとなれば、この方向を転換して配当性向をもっと重視することになりますが、再投資のほうが株主のみなさまへの還元が大きいと考えています。

質疑応答:米ドルに対する為替感応度について

司会者:「アステリアの米ドルに対する為替感応度を教えてください」

平野:円安になり、今回はかなり為替の差益が出ている状況です。しかし当社の場合は円とドルだけではありません。This Place社はロンドンにあるため、グレート・ブリテン・ポンドに依存しており、一部子会社などは中国にありますので、そのあたりが複雑に絡み合っています。

単純な係数で円ドルから収益を計算することはできませんが、この程度の円安になると億単位で為替益が出ていることをご報告します。

質疑応答:業績見通しについて

司会者:「今期の業績見通しを開示しないことが非常に不満です。いつ開示するのでしょうか? 至急開示してください。開示して当然で、開示しない貴社の姿勢は不満です。こちらの業績見通しはいつ開示するでしょうか?」

平野:今回は業績予想を発表していません。そもそも業績予想は何のためにするかと言いますと、投資家保護のためです。業績予想が大きく外れるようなことがあっては、投資家保護になりません。

今回業績予想が出せない理由は、Gorilla社の上場を控えているためです。Gorilla社の株価がいくらになるかは予想できません。このことが当社の業績に大きく影響することはわかっていますが、予想ができないものをベースにした見通しは立てられないため、現時点では業績予想を出していません。

何か出してほしいというお話もありますが、これはあまりにも危険だと考えています。目的の投資家保護につながりません。昨年9月末に発表したように、合理的に業績予想を立てられるようになった時にみなさまに開示します。

当社がこのような状況を抱えていることは仕方がないことで、投資が組み込まれている企業では開示しないこともあります。私は、希望的観測を出すことのほうが不誠実だと考えているため、合理的な数字になるまで公表は控えます。

質疑応答:昨年の振り返りと今期の目標について

司会者:「今回は過去最高の決算発表で、中期経営計画達成に向け順調な進捗ということで喜ばしい限りです。今期予想については非開示とのことですが、昨年の振り返りと今期のセグメント別、ソフトウェア別、製品別の目標などがあれば教えてください」というご質問です。

平野:初年度のトップラインの伸び、利益の創出は、2年度、3年度に向けての大きな仕込みができたと考えています。それぞれの目標値は、申し訳ありませんが開示していません。いずれも、ソフトウェア事業のトップラインを伸ばしていくために、マーケティングについては人材を含めてこれまでにない投資をしています。

投資事業は、Gorilla社の上場益が今年も見込まれると考えています。数字がなかなか読めませんが、さらにソフトウェア事業につぎ込んでいきたいと思います。そして、3年目には中期経営計画を達成したいと考えています。

デザイン事業に関しては、コロナ禍の影響を受けたお客さまからのシフトが徐々に進んでいます。米国でも、拠点をカリフォルニアに移してIT企業を獲得し、日本でも事業部を組んで準備を始めました。新しい活動のリカバリーをしっかり進めていく方針ですので、第2年度もご期待ください。

質疑応答:減損について

司会者:「今回減損をされたのは、来期の見通しも非常に厳しいということでしょうか?」

平野:今回の減損の対象はThis Place社で、買収の時にのれんが発生していたため、結果的に減収となった2022年3月期の同社の業績を鑑みて企業価値を算定し、のれんの減損となったものです。ここから先落ちていくと考え減損を行ったわけではありません。

今後、落ちていくのであれば今回のような金額ではなく、「もうダメではないか」という大きな金額になります。一昨年や去年の状況を見て企業価値を再算定したことになります。

質疑応答:海外の売上高について

司会者:「XMLによるノーコードがアステリアの差別化ポイントで、他社が容易に追いつけないのであれば、ノーコード市場が立ち上がっている今のうちに、市場が20倍ほどある海外市場に早く打って出るべきではないでしょうか? 『日経ヴェリタス』3月20日号の円谷教授と平野さんの対談記事に、「創業当初から海外の売上高は5割を目標にしていましたが、現状は2割」とあります。海外企業とコラボすることで加速できると思いますが、海外売上比率5割はいつごろ実現するのでしょうか?」

平野:ノーコードについて少し誤解があるようなので補足します。当社のノーコードはXMLだからできているものではなく、創業時にXML専業ということでスタートし、「ASTERIA Warp」のベースの技術として使用していることを1つの強みとしてきました。

XML自体は今や普通で差別化にもならないような技術です。当社はXMLを長らく使ってきたため知見が多いのですが、グラフィカルに描いた絵やフローチャートをプログラム化するには、柔軟性を持ったノーコードはきわめて難しい一面があります。ここは「ASTERIA Warp」でもなかなか真似をされないところです。

海外に関してはこれまで何度かトライしており、今回のトライは、実は3回目になります。1回目は2000年で、「ASTERIA Warp」が出る前に、海外の投資家なども含めて展開しましたが、海外のドットコムバブルの崩壊により難しくなり撤退しました。2回目は、2005年からシリコンバレーで研究開発をメインに行いましたが、収益化が難しく2009年に撤退しました。

現在はネットワークをベースにして海外で展開しています。サンフランシスコにあったExtentech Inc. (Extentech社)を買収し、何社か出資しています。This Place社も、シアトルや香港で「Gravio」「Handbook」などで協業しています。

海外の売上を伸ばしていく時期については、一日も早くというところですが、主力の「ASTERIA Warp」がなかなか難しい状況です。これは「ASTERIA Warp」が日本のシステムインテグレータという非常に厚い層に支えられている製品であることが1つの要因です。このようなことは欧米ではほぼなく、エンド企業がコンサルタントもしくは自前のエンジニアを雇って行うため、日本と構図がかなり異なります。

また、「ASTERIA Warp」が今年で20周年になり、20年間、日本のお客さまの要望に応えてバージョンアップをして進化しているため、日本の要望にきわめて合ったデザインになっていることも要因です。画面のデザインだけではなく構成なども含めて、このままでは海外に持っていくことができません。

本当は今回の「Handbook X」のように新しいアーキテクチャで作り直す必要があります。これについてはR&Dでトライしているため、しかるべき時期にお話ができると思います。今年度のような近い時期に発表できませんが、意欲的に研究開発していますので、ぜひご期待いただければと思います。

質疑応答:投資について

司会者:「現在、株式市場では、売上成長より利益が優先されている傾向ですが、来期も本業は積極的に投資を行っていく予定でしょうか?」

平野:売上より利益が優先されていると概して言えるかというとそこまでではないと考えています。特にIT業界、クラウド周りでは、赤字でも売上が伸びるほうが評価されるところも数多くあります。当社はいくつも製品がある会社ですので、バランスよくミックスで利益を創出しています。

「ASTERIA Warp」「Handbook」はキャッシュ・カウで、大きな利益を出しています。「Platio」「Gravio」単体ではまだ開発費を回収できていない状況ですが、そのようなところに投資して次の製品を開発していきます。

世界を目指しながら日本で幅広く普及していくことを考えると、利益を大切にして投資を控えるのでは、将来が見通せません。これからもアステリアは投資を重視していきます。

質疑応答:製品について

司会者:「『ASTERIA Warp』の売上が4割伸びたようですが、アステリアが選ばれたポイントがあるのか、理由を教えてください。また、今期も同じように売上が伸びるのでしょうか? サブスクリプション製品はまだポテンシャルがあると思うのですが、どれくらい伸びますか?」

熊谷晋氏(以下、熊谷):「ASTERIA Warp」は非常に好調に推移しました。全体として世の中にはDXおよびノーコードの流れが起きているため、これを追い風にビジネスを伸ばせたことが非常に大きなポイントと考えています。

ノーコードツールはユーザビリティが評価され、「ASTERIA Warp」は、その点における評価が非常に高いツールであることが1つ大きな追い風になりました。

4割の部分については、ライセンスと呼ばれる比較的高単価な商品で伸びました。コロナ禍が始まったタイミングで、企業の中でIT投資が少し止まってしまう会社が多かったと思いますが、2021年度はこのような投資の流れが再び戻ってきたことが、ライセンスが伸びた大きな要因と考えています。

今期については、ライセンスは一時売上ですので確実ではありませんが、大きな流れとしてDX、ノーコードの流れは続いているため、ご期待に沿って4割という非常に高い目標に追いつけるように伸ばしていきたいと思います。

また、サブスクリプション製品については、非常にポテンシャルがあると感じています。さらにこの部分を伸ばしてビジネスを牽引できるようにがんばっていきたいと思います。

質疑応答:「Gravio」と今後の見通しついて

司会者:「『Platio』は2倍の伸びということですが、『Gravio』はどうでしたか? 今期の見通しについても教えてください」

熊谷:「Gravio」もほぼ2倍の伸びとお考えください。今期の見通しの詳細はお伝えすることは難しいのですが、「Platio」「Gravio」はほぼ同じ時期にリリースされたものの、「Platio」に比べるとパートナービジネス、代理店の開拓に少し遅れました。しかしながら、販売体制としては整ってきたため、ぜひ今期のビジネスにご期待いただければと思います。

質疑応答:売上高成長率について

司会者:「ノーコードの競合であるヤプリと比較すると、売上高成長率が低いように思います。財務状況がよいアステリアは、先行者利益を確実にするために、ヤプリより高い成長率を目指すべきではないでしょうか?」

平野:ヤプリとの比較ということで、同社はマーケティング的には私たちとかなり近い「ノーコードでアプリを提供する」というメッセージを出しています。しかし、私たちとヤプリとでは狙っている領域がかなり違います。

ヤプリの場合は、スマートフォン向けのエンドユーザーアプリ、マーケティング用のアプリを作っています。従来は外注していたようなものをノーコードで提供できるとしており、価格帯は1件あたり数百万円から数千万円となっています。

一方「Platio」は、アナウンスのとおり1社あたり2万円からとなっており、幅広くカバーを行っていく製品です。案件を取っていくのではなく、幅広く使っていただくことを目指しています。また、エンドユーザー向けの製品ではなく、社内の業務アプリを作り、増殖していくかたちでアプリの利用が広がっていきます。

そのため、比較対象としてメッセージは近いのですが、業態がかなり違うということをご理解いただければと思います。

今後も私たちは、プロダクトにあったマーケティングを実行し、「Platio」を伸ばしていきます。今回のCXOの着任も非常に大きなプラスになり、さらなる広がりになると思いますので、どうぞご期待ください。

熊谷:「先行者利益を確実にすべきではないか」というご意見は、ごもっともだと思います。そのような意味ではマーケティング戦略だけではなく、本年1月に「Platio Connect」という製品を、つい先日は「Platio One」という新サービスもリリースしています。これによって、先行者利益をより強固なものにしていきたいと考えています。

質疑応答:半導体不足の影響について

司会者:「世界的な半導体不足に陥っていますが、『Gravio』などの製品出荷に影響はないのでしょうか?」

平野:世界的な半導体不足、ひいてはいろいろな電子機器の不足について、現時点では「Gravio」のセンサーに影響はありません。

質疑応答:ノーコードの市場規模と他社の参入について

司会者:「3月2日の個人投資家説明会で、『XML以外でもノーコードは実現できるものの、XMLのノーコードは技術的に難しく、アステリアに追随するのはそう簡単ではない』とのご説明がありました。XMLは2000年頃から普及し始めており、技術力のある会社であれば、XMLを使ったノーコードビジネスに参入できるように思います。ノーコードの将来の市場規模は、技術力のある会社にとって魅力がないのでしょうか?」

平野:私から紛らわしいご説明を行ってしまった気がしますが、XMLとノーコードとは、本質的にはあまり関係ありません。私たちがXMLの技術を使って「ASTERIA」という製品を作った後、ノーコードを作るのは難しいという認識が業界内に生まれましたが、XMLでなければノーコードができないということはまったくありません。

先ほどお伝えしたとおり、XMLの技術そのものは、当時、差別化になりましたが、今は差別化になるものではないと考えています。

ノーコード自体は今も非常に難しいもので、「ASTERIA Warp」「Platio」のような製品開発は簡単にはできないと考えています。マーケットはまだ新しいため、このアドバンテージをフルに活かしながら、さらにマーケットを獲得し、数多くの企業の変革に貢献していきたいと考えています。

熊谷:「ノーコードの将来の市場規模は、技術力のある会社にとって魅力がないのでしょうか?」というご質問にお答えします。「GAFAM」と呼ばれているような企業、例えばマイクロソフトやAmazon.comなどの企業も、実はノーコードの領域に参入しています。

そのような企業にとっても魅力的な市場ですし、私たちはそこと直接競合しないような領域を選定しながら、ビジネスを展開しています。広い意味で、ノーコードは非常に魅力的な市場だと考えています。

質疑応答:デザイン事業部の営業活動について

司会者:「デザイン事業部が新設されましたが、現時点では稼働しているのでしょうか? 日本における営業活動は、This Place社から出向などされるのでしょうか? どのような営業活動になるのか教えてください」

平野:日本でのデザイン事業部は、4月からスタートして稼働を始めています。まずはお客さまの獲得や、いろいろなリサーチなどから始めており、すぐに売上が上がるということはありませんが、ロンドン拠点のメンバーがプランニングしながら、日本のスタッフがリサーチを行っている状況です。

スタッフの活動に関しては、今後さまざまな打つ手がありうるということで、まずはチームの作り方をデザイン事業部のメンバーと話し合っているところです。

質疑応答:デザイン事業部の見通しについて

司会者:「国内のデザイン事業は当初から黒字が出る見通しですか。それともまずは育てていく予定でしょうか?」

平野:状況次第とは思いますが、中期経営計画の内容から、まずはしっかりと「売りができる」ことを大切にしたいと考えています。

あまりにもスモールスタートで「絶対に赤字にしない」というスタンスでは、やはりスケールが難しいため、本体の余力を使ってマーケティングなどを行い、しっかりと顧客を獲得していくことにも注力していきます。立ち上げる以上は、柱の1つとして育てていきたいと考えています。

質疑応答:This Placeの大型案件について

司会者:「以前話していたThis Place社の大型案件の進捗はいかがでしょうか?」

平野:This Place社CEOのDusanが、以前話したことだと思います。大型案件という言い方ではなく「ご期待ください」ということでしたが、先ほどお伝えしたとおり、第4四半期でアメリカの会社を顧客獲得しています。

Dusanからお伝えしたとおり、多くの方がご存知の会社ではあるのですが、現時点ではまだお客さまの了解が取れていない状況で、ある程度このプロジェクトが進捗し、お客さまの了承が取れた段階で開示できることになります。

そのため、「顧客獲得しているものの公開できないステータスである」というご報告にとどめます。

質疑応答:事業のシナジーについて

司会者:「デザイン事業と既存のソフトウェア事業のコラボで、シナジー効果はあるのでしょうか?」

平野:デザイン事業とソフトウェア事業自体が、何かを一緒に行うことはもともと考えていません。何を進めようとしているかと言いますと、デザインやコンサルティングの戦略の能力を活かして、ソフトウェアにそれを取り込むということです。

今後、ソフトウェアがデザインファーストになる時に、そのノウハウを取り込むことを目指しており、実際に「Handbook X」にもそれが活かされ、「Gravio」については人員も活かされています。

デザイン事業からお客さまに何かを提供することに関しては、知見を個別のお客さまに提供するというかたちで、直接関係があるものではありません。

今後は、当社のソフトウェア製品をユーザーとして使うようなことは、海外展開が増えていけばあり得ると思いますが、初めからそこを合致させようということではないため、そこははっきりお伝えしておきたいと思います。

質疑応答:This Place社の減損について

司会者:「This Place社について、追加の減損はないとおっしゃっていたと思いますが、なぜ今回減損になったのでしょうか? This Place社に関して、毎回見通しが甘いような気がします」

平野:This Place社の追加の減損について、のれんがある限り減損は発生します。以前、私から減損がないとお伝えしたのはImagine Intelligent Materials Limited (Imagine社)で、これは全額減損済みの旨を開示していますが、今後、This Place社の減損がないということはテクニカル的にもないと思います。

のれんに関して、今回は6億円ほど減損していますが、のれん自体はまだ残っているため、事業の進捗次第では「まだありうる」ということです。しかし、これについては原則、ビジネスの状況に応じて減損ということもありますが、一方で、当社の体力および利益力などによって、必要であれば早めにこのような処理を行うこともできます。

減損は当然、ないに越したことはなく、一気にリカバーしたほうがよいのですが、もともとの売上・利益規模がかなり大きかったため、2年間の数値がのれんをキープできなかったということです。

質疑応答:円高の追い風について

司会者:「This Place社は円高の追い風があったと思いますが、どのくらいあったのでしょうか?」

平野:This Place社に関する円高の追い風について、具体的な数値は開示していません。対UKですので、実は円ドルほどポンドは動いていません。そのため、円ドルで換算される何割、何パーセントという数字より少し低く計算していただければと思います。

売上自体は四半期ごとに固定されてきており、第1四半期から第3四半期まではほとんど影響がないため、資料の第4四半期の数値を円ポンドの係数でかけていただければ、おおよその数値はご理解いただけるかと思います。

質疑応答:ステーブルコインについて

司会者:「暗号資産が大暴落しており、原因の1つはドルに連動したUSDT(テザー)の下落にあると報道されていますが、貴社が投資されている日本円に連動したJPYCへの影響はいかがでしょうか? また、今後のステーブルコインの展開はどのようにお考えでしょうか?」 

平野:暗号資産の大幅な下落ということですが、過去のチャートを見ていただくと、上がったり下がったりという状況です。今の暗号資産の相場を鑑みて、現時点で何らか将来の判断をすることは適切ではないと考えています。

下落については、USDTも要因の1つと言われていますが、それだけで上下しているわけではありません。暗号資産市場を全体から見ると、USDTの規模はそこまで大きくなく、要因の1つであったとしても、それが原因のすべてではないとご理解ください。

その上で、当社がJPYCをどうするのかというところですが、まずアステリアは、ブロックチェーンの取り組みとして、仮想通貨以外を扱うと明言しています。アステリア本体では仮想通貨、いわゆる暗号資産のビジネスを行わない一方で、投資先や、ブロックチェーン推進協会のような関係先で手がけることはあります。

JPYCもその1つで、これは日本円に対して安定したデジタルマネーですが、現時点で仮想通貨、もしくはUSDTの価格の下落がダメージにつながっている状況ではありません。

USDTやUSDCなどは暗号資産として一般的にやり取りされているものですが、JPYCは実は建てつけが違います。日本の法律においては暗号資産という分類ではなく、他の法律をベースにしており、影響を受けにくいという構造があって、JPYCに関しては現時点でのダメージは少ないです。

今後は、ステーブルコインが非常に重要な位置づけになってきます。ある意味、政府とのせめぎ合いのようにもなりうるのですが、このイノベーティブなところにいかに取り組んでいくかが非常に大事です。

アステリア本体では取り組みませんが、出資などを通じてイノベーティブな領域をウォッチし、私たちの糧になるようなところは取り込んでいきたいと考えています。

質疑応答:開発中の製品について

司会者:「可能であれば、開発中の新製品の動向をお聞かせいただきたいのですが、いかがでしょうか?」

平野:開発中の新製品についてはなかなかお伝えできませんが、すでにお話ししているところでは、まだ世の中に出していないもので、アステリア製のブロックチェーンがあります。

これは「Gravio」などの当社製品や、社内のサービスで少し使用していますが、まだリリースしていません。暗号資産以外でどのように「ブロックチェーンならではの価値」を出していくかについて、かなり長い時間をかけて研究を続けており、これをいつか、サービスもしくは何らかの技術として提供することができるのではないかと考えています。

それ以外にもいろいろな研究開発を行っていますが、こちらは「お楽しみに」ということで、今回は1つだけご紹介しました。

質疑応答:資料の開示について

司会者:「本日の決算について、補足資料は開示されないのでしょうか?」

平野:私が使った資料について、Web上で公開されていませんが、この後、なるべく早く公開したいと思います。資料はいつもどおりWebにアップしますので、よろしくお願いします。

質疑応答:人事について

司会者:「本日より中山五輪男氏がCXOに就任されますが、アステリアの発展に大きく寄与されると大いに期待しています。どのような経緯で今回の入社に至ったのか、差し支えなければ教えてください。お互いによるラブコールなのでしょうか?」

平野:中山の就任会見は「YouTube」で公開しています。こちらを見ていただければ、中山がどのように考えてアステリアに入ったか、私とどのようなお話をしたかがわかると思います。

そこで中山自身が話した内容ですが、私たちが取り組んでいるノーコードが日本の企業を変える要になるとして、「救世主」という言葉を使っていました。ノーコードこそが、日本の企業を変えていくということです。

これまで他の会社でいろいろなDXの支援などを行っていましたが、ある意味で限界を感じ、世の中ではエンジニア不足などと言われる中で、「どうしたらよいのか」を解消する答えがノーコードだと中山は感じて、アステリアにジョインしてくれました。

そのため、中山はCXOという役割ですが、まずは「ノーコードの伝導師」として全国各所でお話しします。

プロダクトとしては「Platio」「ASTERIA Warp」、少しニッチなところではIoT関連で「Gravio」において、「コーディングせずにコンピューターを動かすことができる」「エンジニアが何万人足りないと言われて何十年経っても、解決しないところに解決策を提供していく」といったことに中山が賭けて、当社にジョインしてくれました。

中山はこの業界内で非常に著名な人物ですので、私自身ももちろん、以前から「ご一緒したい」と何度もお話ししていました。そこにノーコードという非常に大きな、今後の未来に向けた重要な接点があったということです。

質疑応答:組織改編について

司会者:「組織改編には企業の現状と将来への意志が表れると考えています。4月度の組織改編にて、特に伝えたい意図や意志があればお聞かせいただけませんか?」

平野:この4月の組織改編は、実はそこまで大きいものではありません。昨年の4月に大きな改編を行ったためです。当社はそれまでプロダクト割の組織でしたが、ファンクションカットし、縦型の箱を横型にするような、大きな変更を行っています。そのため、この4月にはそこまで大きく変更していません。

また、当社の製品がかなり増えてきた中で、さらにここからサービスを増やしていこうとしています。「Platio」「Platio Connect」「Platio One」も含め、いろいろな派生系も今後増えていく中で、一つひとつを舞台にすることは非常に非効率になります。

4月の組織改編は、まさにマルチプロダクト化、マルチサービス化を通じて、さらに市場も広げていくということに適応した、スケーラビリティの高い組織にするという意図があります。

加えてこの4月は、あまり大きくないとはいえ、デザイン事業部が新しく作られました。こちらは日本におけるデザイン事業を進めていくためのスタートポイントとなっています。

今回のCXO就任も非常に重要な点です。先ほどお伝えしたとおり、当社の製品は幅広く多くの企業で使ってもらうことを目指しており、どこかの企業から大きな案件を取ってくるというソフトウェアではありません。それを行っていくための意志が、今回のCXO採用に表れていると考えていただければと思います。

質疑応答:中期経営計画の達成見込みについて

司会者:「中期経営計画の達成見込みはいかがでしょうか? 進捗を教えてください」

平野:まさに今日の一連のお話については、進捗報告という意味合いを込めてお伝えしたつもりです。中期経営計画についてはすでにお話ししていますが、4つの重点ポイントがあります。

「STAR」の頭文字の4つで、「S」はサステナビリティ(Sustainability)、「T」はトップライン(Top-line)、「A」はアクイジション (Acquisition)、「R」はリファイン(Refine)です。

この4つを、中期経営計画期間の3年間でいかに進めていくかが重要です。今日は決算発表の場ということで、数字に関するご説明が多かったのですが、サステナビリティも少し含めてお話ししました。

アクイジションについて、一番大きなところはM&Aですが、投資先とのコラボレーションについても、AVFに加えて、当社本体の投資チームが働きかけているところです。

リファインも大事な要素で、今までのものをどんどん磨いていきます。例えば「Platio One」「Platio Connect」という新しい製品サービスにもあてはまるものです。

このように、「STAR」それぞれのポイントで見ていただいてもよいかと思います。この1年でさまざまな進捗があったため、このようなポイントについてもご質問いただければと思います。

平野氏よりご挨拶

平野:本日は長い時間、当社の決算発表をご覧いただき、誠にありがとうございました。質問にはすべてお答えさせていただきました。

本日の発表の内容を、スライドでまとめています。決算発表のサマリーです。一番大切な数字は、増収となりました。この中期経営計画では、毎回2桁増という数字目標を掲げています。今回は前期比10.4パーセントの増収の2桁増を達成することができました。

利益は過去最高益で、営業利益は前期比で4倍を超えました。第3四半期、第4四半期と同様に、今期もさらに先行投資を行い、中期経営計画を達成していきたいと考えています。

次に、ソフトウェア事業と企業投資事業が好調だとご説明しました。残念ながら、デザイン事業が前期割れでしたが、四半期ごとに見ると第3四半期、第4四半期は前期より上がっている状況ですので、この状況を続けていきたいと思います。さらに、カリフォルニアのIT企業や日本などにおいても積み増していくことを考えています。

最後に費用面です。今回は費用が非常に増えていますが、これは中期経営計画に沿った先行投資です。特に、マーケティングと人材に積極投資しています。

マーケティングにかかるのは一時的な費用ですが、今回の大きな利益を原資にして、この期間は特別に、4億円強かけています。テレビCM等でいろいろなプロモーション等を行っており、今年度および来年度に効果が出てくることになります。

人材についても先ほどお話に加えて、新しい、非常に優秀な人材からの応募もかなり来ている状況です。これが今年度、来年度につながっていくと考えています。

最後になりますが、私たちは挑戦を通じて、大きな成長を目指していきます。安定を目指すのではなく、挑戦を旨としています。さらにこれからの時代は、未来のことを考慮したSDGsが非常に重要です。人に優しい、社会に優しい、そして地球に優しいSDGsを重視した経営を行います。

このような決算発表になりましたが、これからの中期経営計画の第2年度にあたり、さらに投資に注力をして、達成に向けて邁進していきたいと考えています。これからもアステリアへのご支援・ご指導のほど、よろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。

記事提供: