4月7日(金)に発表された米雇用統計には数字的な弱さはあったものの、米経済の好調さという基本トレンドに変化は見られませんでした。しかし、FOMC議事録でテーパリングの議論が開始されたこと、さらに米国によるシリアへのミサイル攻撃や北朝鮮問題といった地政学リスクも表面化しています。

為替市場では今後、テーパリングおよび地政学リスクという2つのテーマを踏まえての行動が必要とされます。

先週の為替動向振り返り

先週は7日発表の米雇用統計が注目されました。結果的には若干数字の悪化はあったものの、失業率が4.5%に低下するなど米国経済は堅調と言えます。雇用統計発表後、ドル円は円安方向に転じていますが、週を通じて見れば高値も安値も更新せず、ドル円は大きな値動きのない週となりました。

ユーロドル市場は3日から6日までレンジ相場が継続し、7日に下方向にブレイクした状態です。しかし7日も、1日で100pipsも動いておらず、全体的には為替市場に大きな値動きのない週となっています。

注目すべきファンダメンタル要因

先週は、今後の為替市場に大きな影響を与える可能性のある2つのファンダメンタル要因が浮上しています。

(1)テーパリングの具体化

4月4日に3月のFOMCの議事録が公開されました。既に為替市場は2017年の利上げは織り込み済みですが、議事録で注目されたのはテーパリングの議論が具体的になされていた点です。テーパリング=FRB資金の金融市場からの引き上げであり、実際にテーパリングが始まれば、為替市場を始め金融市場に対し大きな影響が生じる可能性があります。

(2)地政学リスクの急浮上

6日には米軍がシリアに対するミサイル攻撃を実施。為替市場および株式市場では一時的に波紋が広がったものの、大きな影響はありませんでした。しかし、米ロ関係改善期待もある中での親ロシア国・シリアへの米国の軍事行動により、今後新たな地政学リスクが生じることになりました。

また、ミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮に対し、トランプ政権はオバマ政権時よりも一歩踏み込んだ発言を行っています。先週行われた米中首脳会談においても北朝鮮問題が議論されたようであり、韓国大統領選で親北朝鮮政権の誕生の可能性もある現在、米国の北朝鮮に対する武力行使の可能性すら取り沙汰されています。

今週の為替市場の注目点

今週も各種指標の発表がありますが、まずは10日にFRBイエレン議長の会見が予定されています。FOMC議事録で明らかになったテーパリングについて具体的な言及がなされるかどうか、特に注目したいと思います。

なお、欧米諸国では今週末から来週明けにかけてイースターの祝日となるので、週後半に向け為替市場は値動きが少なくなる可能性が高いと考えられます。

ドル円市場については、雇用統計で円安方向に進んでいますが、テーパリングや地政学リスクが浮上する中、先週の高値111.40円付近を超えて112円を目指す値動きとなるかどうかに注目です。

まとめ

先週は今後の為替市場を大きく動かす可能性のあるテーマが2つも浮上した週となりました。値動きの少ない週が続いていますが、テーパリングの長期的な影響、そして地政学リスクの顕在化による短期的な影響について、今後十分注意したいところです。

LIMO編集部