米国がシリアを攻撃したが、相場の動きは限定的
2017年4月7日の東京株式市場で、日経平均株価の終値は、前日より67円57銭高の18,664円63銭となりました。
7日はまさに地政学的なリスクの高まりに対して、株価が振られる展開になりました。午前10時過ぎに、米軍が6日、シリアのアサド政権が化学兵器を使用した疑惑に対して、同国へのミサイル攻撃を行ったと伝わりました。
これを受けて、東京市場ではリスク回避の動きが起こり、安全資産とされる円や日本国債が買われました。それまで1ドル=110円90銭台で推移していた円相場は110円15銭近辺まで急伸しました。
アサド政権が化学兵器を使った疑いがあるものの、まだその証拠は見つかっていません。それにもかかわらず、トランプ政権が即座に軍事行動に動いた背景には、政策が暗礁に乗り上げているトランプ大統領の焦りがあるという見方もあります。「強い米国」を誇示し、支持率の回復を図ろうとしていると考えられます。
トランプ氏大統領は、3月下旬には、看板政策だった医療保険制度改革法(オバマケア)の代替法案を撤回しました。5日に公表された3月14~15日開催分の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、メンバーの中にトランプ政権の財政政策の時期や内容について不安視する意見があることを明らかにしました。
ただ、7日に発表された米雇用統計では、失業率が9年10か月ぶりの水準に改善するなど、米国経済が順調に回復しているという見方が広がっています。7日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落したものの、値動きは小幅でした。
一方、日本を見れば、為替の影響もあって、世界の市場の中で日経平均だけが大きく下げる展開が続いています。6日には、終値ベースで年初来安値を更新しました。北朝鮮の動向もあり、先行きは不透明です。
ただし、為替や地政学リスク以外の材料では地合いは決して悪くはなく、好業績の銘柄は買われています。当面は個別の物色銘柄の押し目を狙いたいところです。
25日移動平均線と75日移動平均線のデッドクロスが形成される
今週の動きをテクニカル面から見てみましょう。先週末の3月31日に大きな陰線となっていたことから、今週初の動きが注目されるところでしたが、3日はほぼ十字線のはらみ線となりました。ここから反転することも多いのですが、実際には、さらに翌日から下落が続きました。
結局、今週は陰線が続き、5日移動平均線で上値を抑えられるような形になりました。7日には、25日移動平均線と75日移動平均線のデッドクロスが形成されました。
下放れとなるか底入れか、判断が難しいところ
今後の動きはどうなるでしょうか。懸念されるのは、25日移動平均線と75日移動平均線のデッドクロスが形成されたことです。
さらに注目すべきは、昨年末以来、3か月以上にわたり上下幅1,000円前後のレンジでもみ合っている状態だったレンジの下限である1月18日の安値(18,650円)を割り込んだことです。6日には終値ベースで18,597円となりました。7日にはザラ場ベースながら、18,517円と、それをさらに更新しました。
ただし、7日は十字線に近いはらみ線となっており、下げ一服のようにも感じます。その点では、ここから急速な下放れとなるか、底入れの押し目狙いか、判断が難しいところです。
来週初に5日移動平均線で上値を抑えられるようであれば目線は下になるでしょう。逆に、ここから反発するようであれば再びレンジに戻ることになります。
下原 一晃