【安田記念直前】競馬の馬券の払戻金が雑所得となる場合は

平成29年12月15日(2017年12月15日)の最高裁判所の判決概要は以下の通りです。概要内容を引用しながら、一つずつチェックしていきましょう。

所得税法上、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得で、営利を目的とする継続的行為から生じた所得は、一時所得ではなく雑所得に区分されるところ、営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である。

愛好からくる趣味ではなく、営利を目的とした継続行為による所得は雑所得だとしています。

これを本件についてみると、被上告人は、予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小の組合せにより定めた購入パターンに従って馬券を購入することとし、偶然性の影響を減殺するために、年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入することを目標として、年間を通じての収支で利益が得られるように工夫しながら、6年間にわたり、1 節当たり数百万円から数千万円、1年当たり合計3億円から21億円程度となる多数の馬券を購入し続けたというのである。このような被上告人の馬券購入の期間、回数、頻度その他の態様に照らせば、被上告人の上記の一連の行為は、継続的行為といえるものである。

馬券を組み合わせで購入することで「偶然性の影響を減殺する」としています。

これは、株式投資でいう「ポートフォリオで様々な銘柄に分散投資をする」発想に似ています。それぞれのイベントの起こりうる確率と期待値の掛け算、それと各イベントを累計していった結果だと思います。

そして、このケースでは、年間当たり3億円から21億円の馬券を合計6年にわたって購入していたとしています。

そして、被上告人は、上記6年間のいずれの年についても年間を通じての収支で利益を得ていた上、その金額も、少ない年で約1800万円、多い年では約2億円に及んでいたというのであるから、上記のような馬券購入の態様に加え、このような利益発生の規模、期間その他の状況等に鑑みると、被上告人は回収率が総体として100%を超えるように馬券を選別して購入し続けてきたといえるのであって、そのような被上告人の上記の一連の行為は、客観的にみて営利を目的とするものであったということができる。

以上によれば、本件所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として、所得税法35条1項にいう雑所得に当たると解するのが相当である。

このケースでは、この6年間で毎年利益を出していたとしています。そして、金額は少ない年で1800万円、多い年で2億円とのこと。

「回収率が100%を超えるように馬券を選別して購入し続けたといえるのであって」としていますが、株式投資の世界などでは、回収率100%を目指したとしても、なかなかこのような結果にはならないでしょう。

最高裁判所の判決は、こうした「結果」をみて「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」とすることで「雑所得」という結論になっています。