ソレキア株、TOB合戦により2か月間で株価が2.5倍に
2017年4月5日、富士通(6702)は電子機器商社のソレキア(9867)へのTOB(株式公開買い付け)価格を、これまでの4,000円から5,000円へ引き上げたと発表しました。
ソレキアに対しては、2017年2月3日にフリージア・マクロス(6343)の佐々木ベジ会長がTOBを表明して以降、以下のように富士通と佐々木氏との間でTOB価格の引き上げ合戦が繰り広げられてきました。
2月3日:佐々木氏が2,800円でTOBを宣言。買い付け予定株数は36.5万株(発行済株数の36%)
3月16日:富士通が3,500円でTOBを表明。買い付け予定株数は73.5万株(発行済株数の72%)
3月21日:佐々木氏がTOB価格を2,800円から3,700円へ引き上げ
3月29日:富士通がTOB価格を3,500円から4,000円へ引き上げ
3月31日:佐々木氏がTOB価格を4,000円から4,500円へ引き上げ
4月5日:富士通がTOB価格を4,000円から5,000円へ引き上げ
ちなみに、佐々木氏がTOBを発表する直前のソレキアの株価は1,942円でしたが、4月5日の終値は4,820円となっており、この約2か月で約2.5倍に上昇しています。また、現時点でフリージア・マクロスはソレキアの発行株数の4.3%、富士通は2.3%をそれぞれ保有しています。
なお、ソレキアは、佐々木氏によるTOBに対して反対を表明する一方で、富士通の提案に対しては賛成を表明しています。このため、今回のTOB合戦では、富士通はホワイトナイト(敵対的買収者に対する救世主)という立ち位置となります。
ソレキアは1958年創業の電子部品・機器商社
ソレキアは、1958年に富士通の特約店、富士電機(6504)の取扱店として創業しています。創業時の社名は小林電材でしたが、2002年に現在の社名に変更しています。1990年に店頭公開を行い、現在は東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場しています(注)。
注:富士通によるTOBが成立した場合、ソレキア株は所定の手続きを経て上場廃止となる予定であるため、東京証券取引所では同社株を3月16日から監理銘柄(確認中)に指定しています。
2017年3月期実績は、売上高が202億円、営業利益が▲1.4億円の赤字、当期利益が▲1.98億円の赤字、BPS(一株あたり純資産)は6,428円でした。
また、富士通エフサス(富士通の100%連結子会社)への売上高は37億円(構成比18%)、富士通からの仕入高は41億円(同39%)となっており、創業以来、富士通との取引関係が続いています。
佐々木ベジ氏は複数の企業の大株主
一方の佐々木ベジ氏(61歳)は、東京都・青ヶ島村出身の実業家です。現在は、機械製造のフリージア・マクロスや土木関連の技研興業(9764)の会長、カタログ販売の夢みつけ隊(2673)の代表取締役となっています。
また、フリージア・マクロスは、プリント配線板メーカーの日本CMK(6958)など複数の上場企業の大株主に名前を連ねています。
今後の注目点
直近の富士通のTOB価格(5,000円)による買い付け予定代金は約37億円です。このため、富士通の企業規模(2016年3月期の連結売上高は4.7兆円)から見て、TOBによる財務負担や業績へのインパクトは極めて軽微になると考えられます。
ただし、TOB価格がさらに上昇し、PBR1倍を大きく上回って富士通が買い付けるという事態になった場合には、ややネガティブに受け止められる可能性はあるかもしれません。
このため、TOBの最終日である4月28日までは、どの程度の価格水準でTOBが成立していくかを注視したいと思います。
また、ソレキアに限らず、PBRが1倍を大きく下回る会社は、なお多く上場しています。今回のソレキアの例からもわかるように、TOB合戦になった場合、そうした企業に投資を行っていれば大きな値上がり益を享受できることになります。よって、「第2のソレキアを探す」という投資アイデアも一考に値するのではないかと思います。
LIMO編集部