「老後のお金」は自分で作る時代に

日本の年金について見てきましたが、単純に各国の年金制度を比較することは難しいです。

しかし、日本においてはOECD加盟国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、日本)の中で高齢化比率が一番高く、平均寿命は一番長く、出生率は一番低いと年金を支える条件としては一番厳しいと言えるでしょう。

もちろん人生は一度きり、平均寿命の長さはとても素晴らしいことですが、元気で過ごすためにはお金も必要となるのが現実です。

この高齢化の状況ですが、日本の総人口は2008年をピークに徐々に減少する一方、高齢者人口は増加し続けています。これに伴い、年金の受給者が増える一方で、年金保険料の支払者が減ることで、公的年金の所得代替率の低下が懸念されています。

所得代替率は公的年金の給付水準を示す指標で、現役男子の平均手取り収入額に対する年金額の比率により表されます。

2019年のモデルケースでの計算は以下の通りです。

所得代替率61.7% =(夫婦2人の基礎年金13万円 + 夫の厚生年金9万円)÷ 現役男子の平均手取り収入額35.7万円

2019年に公表された将来の公的年金の財政見通しでは、日本の経済成長が最も進むシナリオの場合であっても、2046年度の所得代替率は51.9%程度と、現在の所得代替率 (2019年度、61.7%)から10%程度低下するとされています。

現状の年金でも多いとは言えない中、将来においても既に減ることが予想されているのです。

世界的にも年金制度の「持続可能性」と「給付の十分性」のジレンマがあり、解決策の一つとして、公的年金給付の削減を補完する私的年金制度のカバー率の向上等を奨励しています。

公的年金だけでは不足すると考え、まずは私的年金の制度を利用しましょう。個人型確定拠出年金 (iDeCo)および企業型確定拠出年金(企業型DC)、国民年金の加入者は国民年金基金制度がありますね。

掛け金の上限が決められていることもあり、私的年金を足しても老後資金が不足しそうな場合には個人年金なども活用し、資産をつくっていきましょう。

限られた収入で質素に暮らせればいいという考えもありますが、その場合でも長生きすることを考え介護費用や医療費等はしっかり準備しておきたいものですね。

人生100年時代、平均寿命が伸びた今、併せて資産寿命も伸ばせるよう自助努力をしていきましょう。

参考資料

齋藤 英里奈