4. 実際に繰下げ受給をする人は多いのか
計算上では、必ずしもオトクになるとは言えない繰上げ受給。しかし年金額を上乗せする方法としては他にないアップ術になります。
実際に選択する人はどれくらいいるのでしょうか。
厚生労働省の「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金を繰り下げる人は1.0%、国民年金を繰り下げる人は1.6%に留まりました。
反対に年金を65歳よりも早くに受け取る「繰上げ受給」を選択する人は、厚生年金で0.5%、国民年金で11.7%です。
繰上げ受給の場合は早くに年金が受給できるものの、その受給額は1ヵ月あたり0.4%ずつ減額されてしまいます。
どちらも少数派であることがわかりますね。
5. おわりに
年金を上乗せする術として「繰下げ年金」をご紹介しました。制度が普及していない背景には
- 繰下げ受給のメリットが知られていない
- 受給開始までの資産を持っていない
などが考えられます。受給まで無収入になるのは、シニアにとって避けたいことです。「いい制度があればそれを活用できるくらいの資産を持っておく」というのが、理想的な老後生活なのかもしれません。
年金を増やす方法を調べるとともに、老後資金をしっかり貯める努力も行っていきたいですね。
参考資料
太田 彩子
執筆者
株式会社モニクルリサーチ メディア編集本部
LIMO編集部記者/編集者/元公務員
京都教育大学卒業。株式会社モニクルリサーチが運営する、くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」のLIMO編集部において、厚生労働省管轄の公的年金制度や貯蓄、社会保障、退職金など、金融の情報を中心に執筆中。大学卒業後は教育関連企業での営業職を経て、2010年に地方自治体の公務員として入職。「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」「福祉医療」等の業務に従事した。主に国民健康保険料の賦課、保険料徴収、高額療養費制度などの給付、国民年金や国民健康保険への資格切り替え、補助金申請等の業務を担う。特に退職に伴う年金や保険の切り替えでは、手続きがもれることで不利益を被ることがないよう丁寧な窓口対応を心がけた。その後、保険代理店にてマーケティング業務に従事。保険料比較サイトの立ち上げに参加した。乗合保険会社の商品ページだけでなく、保険の知識を普及するためのページ作成にも参加。ニ種外務員資格(証券外務員ニ種)保有。小学校教諭一種免許、幼稚園教諭一種免許、特別支援学校一種免許取得。
はたらく世代のお金の診断・相談サービスを行うマネイロでは、「【計算例付】厚生年金保険料はどのように決まる?ケース別算出方法や受給額を解説」など、お金や年金制度にまつわる記事を発信中。京都府出身。(2024年9月4日更新)