財政赤字が巨額である事をイメージさせようと、家計の赤字に喩える事があるが、ミスリーディングなので避けるべきであると筆者は考えます。(経済評論家 塚崎公義)。
財政赤字を家計に喩えるのはミスリーディング
財政赤字が巨額であることを印象付けようとして、財務省は「国の財政を家計に例えると、収入が○万円しかないのに○万円も支出しているようなもの」という説明をしています。
たしかに身近な家計に例えて、金額の単位も兆円ではなく万円にすると、財政が大幅な赤字となっている事が強く印象づけられるわけですが、これはミスリーディングなので、不適切な説明だと言えるでしょう。
家計の赤字を減らすためには、収入を増やすか支出を減らす必要があります。今より多く働いて収入を増やし、今より節約して支出を減らせば良いわけですね。では、国が収入を増やしたり支出を減らしたりしたら、何が起きるでしょうか。
国が収入を増やすためには増税をしなければなりませんから、国を形成している国民に負担を強いることになります。専業主婦がパートに出て稼いでも、家族には迷惑がかからないのに、国が増税すると国民に迷惑がかかるのです。
国が支出を減らすためには、たとえば公共投資を減らす必要があり、公共投資によって作られるはずだった公園が作られなくなったり公共投資に雇われるはずだった人が雇われずに失業したりしかねないわけです。一方、家計の一員が飲み屋に行く回数を減らしても、困るのは飲み屋であって家族ではありません。
ミスリーディングでない例え方としては、「父ちゃんの財布が空だから、母ちゃんにも生活費を負担してもらったり子供にも小遣いを我慢してもらったりするべき」とでも言うべきなのです。