着実に上昇する米国株、その一方で日本株は停滞気味
トランプ政権の誕生が決定した昨年11月9日以降、米国株は好調に推移しています。代表的な株価指数の1つであるNYダウは1月26日に史上初の20,000ドルを付け、その後も上昇トレンドが続いているのはご承知の通りです。
一方、日本株に目を向けると、株価は一進一退しながら停滞の様相が深まっています。特に、年初から為替相場に不透明感が残るため、外需セクターの株価は冴えない動きとなっています。
低迷が続く自動車株の中で、三菱自動車の株価が好調に推移
代表的な輸出関連銘柄である自動車株も低迷が続いていますが、その中で好調な株価パフォーマンスが目立っているのが三菱自動車(7211)です。
2016年末の終値と2月27日の終値を比べると、日経平均株価がわずかに下落、TOPIXが+1%上昇となり、株式市場自体は概ね横ばいです。
そして、自動車株の主力銘柄を見ると、トヨタ自動車(7203)が▲7%下落、ホンダ(7267)が+3%上昇、日産自動車(7201)が▲6%下落、富士重工(7270)が▲11%下落、マツダ(7261)に至っては▲18%の大幅下落となっています。ホンダがやや健闘していますが、海外事業が柱である主力銘柄の多くが、株価低迷を余儀なくされていると言えましょう。
ところが、三菱自動車は+11%上昇となっており、+7%上昇したスズキ(7269)や、+9%上昇の日野自動車(7205)を押さえて、自動車株では堂々の第1位となっています。
日産自動車の傘下に入って経営再建を図る三菱自動車
ご存知の通り、三菱自動車は昨年4月に発覚した軽自動車の燃費性能データに係る不正問題により、極度の販売不振に陥り、補償対応などで資金繰りが切迫した結果、経営危機の一歩手前まで追い詰められました。
その後、日産自動車から34%の出資(約2,370億円)を仰ぎ、日産傘下として再出発しています。しかし、正式に日産傘下に入ったのは昨年10月下旬ですから、特に目新しいニュースではありません。年明け以降の三菱自動車の株価好調の理由は何でしょうか?
1月下旬から2度にわたる株価上昇の“波”が来ている
実は、三菱自動車の株価チャートを見ると、1月下旬頃から第1弾の上昇局面を迎え、そして、2月下旬から第2弾の上昇局面にあることが分かります。
そうです、今回の株価好調には2つの要因があると考えられます。
業績ボトムアウト、10-12月期は3四半期ぶりの営業黒字を達成
1つ目は、1月下旬に発表した第3四半期累計(2016年4-12月期)決算です。前述した燃費不正問題の影響により、厳しい業績となりましたが、足元は回復傾向が出始めていることが判明したのです。
実際、終わった直近3か月間(10-12月期)は、3四半期ぶりの営業黒字に転じました。確かに、対前年同期比では未だ大幅減益(営業利益は▲81%減)ですが、悪化に歯止めがかかったと見られた可能性があります。
そして、今回達成した営業損益の黒字転換により、まだうっすらとですが、来期(2018年3月期)の“V字回復”が見え始めたと言えます。
日産のゴーン社長退任人事が電撃的に発表
2つ目は、日産自動車の社長交代人事です。2月23日の早朝、日産のカルロス・ゴーン社長が退任するというニュースが電撃的に発表されました。
ゴーン氏は日産で代表権のある会長職に留まるものの、日産の経営から離れるという内容でした。そして、その大きな理由の1つが、既に代表取締役会長に就任している三菱自動車の経営再建に注力するためなのです。
今後は、日産、ルノー、三菱自動車の3社によるアライアンス(提携)を強化していくという方針ですが、大きなターゲットが三菱自動車の再生にあることは明らかです。
ゴーン氏による三菱自動車経営再建のギアが上がった?
これにより、“いよいよ、ゴーン氏が三菱自動車の再建に本腰を入れ始めた”、“18年前に瀕死の状態だった日産を復活させたゴーン・マジックが再び起きる”という大きな期待につながったと考えられます。
確かに、昨年10月にゴーン氏が三菱自動車の代表取締役会長に就任した際も、ゴーン氏の経営手腕に対する期待が大きい一方で、日産・ルノーの経営と掛け持ちができるのか、少なからず疑問があったと思われます。
しかし、今回の人事発表により、ゴーン氏が三菱自動車の経営再建にどの程度関わるのか?という懸念は大きく後退しました。それどころか、“予想以上に早い時期に三菱自動車の復活劇が見られるのではないか”という期待がさらに膨らんだと言えるでしょう。
三段跳びなるか。次の「ジャンプ」に注目
三菱自動車の株価は、1月下旬の決算発表での業績底打ち期待で上昇し、日産のゴーン社長退任発表を受けて、さらに上昇している段階です。まさしく、三段跳びの「ホップ」「ステップ」と来て、次の「ジャンプ」に注目が集まるでしょう。
その「ジャンプ」とは、三菱自動車の再生に向けた具体的なプログラムです。ゴーン会長がどのような手法でこの再生プログラムを描くのか、株式市場の期待は日に日に大きくなりそうな雰囲気です。
LIMO編集部