「カロッツェリア」や「楽ナビ」でおなじみのパイオニアですが、元々はスピーカーやヘッドホンなどの家庭用のオーディオメーカーとしてスタートしています。パイオニアという社名には「先駆者」という意味があり、この名の通り、パイオニアの歴史には、多くの”世界初”の製品が並びます。また、事業領域もオーディオからビジュアル、さらにカーエレクトロニクスへと拡大してきました。

現在のパイオニアは、そうした広がり過ぎた事業領域をカーエレに集中し、再び成長を目指しています。これまでの歴史のなかで蓄積されてきた多彩な知見が、今後飛躍的な拡大が見込まれる自動運転の世界で活用されていこうとしているのです。パイオニアの歴史と現状を見ながら、これからパイオニアがどこへ向かおうとしているのかを考えてみましょう。

目次

1 パイオニアは総合インフォテインメントのリーディング・カンパニーを目指す
1.1 売上高の約8割がカーエレクトロニクス
1.2 パイオニアのカーエレ事業はOEM、市販、地図事業の3つで成長を目指す
1.3 スマホとは補完関係にあるパイオニアのカーナビ事業
1.4 パイオニアの成長機会となる自動運転関連

2. 「音と光のパイオニア」から「カーエレのパイオニア」に
2.1 多くの世界初製品を世に出す
2.2 PDPで経営危機、リストラの歴史、三菱電機などから支援出資を受ける
2.3 パイオニアの転換点となった2009年
2.4 パイオニアは本社を52年ぶりに東京都文京区へ移転

3. パイオニアは2018年3月期に10年ぶりの復配を目指す
3.1 パイオニアの業績本格回復はまだこれから
3.2 株価は同業他社に比べアンダーパフォーム
3.3 パイオニアの今後のカギを握る中期計画

4. 「感動を創り出す」ことがパイオニアの創業者の思い
4.1 パイオニアの創業者は松本望、その親族にはあの美人女優も
4.2 海外経験が豊富な小谷現社長

5. パイオニアが求める人材は自ら考え、仕事に夢中になれる人
5.1 パイオニアはグローバルで活躍するチャンスが豊富
5.2 従業員関連データ

6. 読んでおきたいパイオニアに関連する書籍

まとめ

1. パイオニアは総合インフォテインメントのリーディング・カンパニーを目指す

まず、パイオニアの全体像を見てみましょう。

1.1 売上高の約8割がカーエレクトロニクス

パイオニアの企業理念は、より多くの人と、感動をです。

また、事業方針(目指す姿)は、『総合インフォテインメント』のリーディング・カンパニーとされています。

ここでいうインフォテインメントとは、インフォメーション(情報)とエンターテインメント(娯楽)の両方が融合された車載システムを表しています。パイオニアは、祖業であるオーディオ・ビジュアル技術と、長年培ってきたカーナビ技術を融合し、「快適、感動、安心、安全」をキーワードに世界中の自動車ユーザーに対して優れたカーエレ技術を提供することで成長を目指しています。

なお、パイオニアの2016年3月期売上高は4,496億円でしたが、このうち約80%がカーエレクトロニクスであり、残りの約20%は、FA機器、有機EL照明などの新規事業となっています。

1.2 パイオニアのカーエレ事業はOEM、市販、地図事業の3つで成長を目指す

パイオニアは、カーナビ、カーステレオ、カーAVシステム、カースピーカー、地図ソフトなどを製造・販売していますが、具体的にどのように成長を目指しているのかについて、2016年5月に発表された「中期計画」の内容を参考に、もう少し詳しく見てみましょう。

まず、カーエレ事業を正しく理解するためには、自動車メーカーに直接販売するOEM(相手先ブランドによる生産)と、オートバックスなどの自動車用品メーカーに販売する市販の2種類に分かれており、同じカーエレ製品でも開発・設計方針や市場動向が異なることを知る必要があります。ちなみに、2016年3月期の構成比はOEMが60%、市販が40%でした。

OEMは、自動車メーカーから採用が決定すると大量な需要が継続して見込まれることや、販売経費は比較的少なくて済むというというメリットがありますが、一方で、新車販売の動向に左右されやすいことや、販売が開始されるまでの開発費負担が重というデメリットがあります。

これに対して、市販は広告費などの販売経費はかさみますが、機能やデザインが消費者に評価されたときには大きく販売が伸び高い採算性も得ることができます。ただし、その逆の場合もありうるため必ずしも安定したビジネスとは言い切れません。

このため、カーエレメーカーとしては、OEM、市販の特性を理解し、それぞれに適した戦略を構築し実行していくことが求められます。

下図にあるように、パイオニアはカーエレ事業の売上高を2021年3月期までに4,100億円とすることを目指しています。また、営業利益については、2016年3月期実績の86億円から2021年3月期には250億円へと伸ばす計画です。

この図にも述べられているように、2016年3月期から2017年3月期は、OEM大規模受注に伴う開発費負担の増加によりOEMの採算性は低下し、市販事業が利益の柱となりますが、2018年3月期から2021年3月期には、OEMの台数拡大などにより市販・OEMともに利益を創出する計画が示されています。

出所:会社資料

この計画の前提となる中期戦略ですが、まず、市販事業においては、スマホとの連携強化、先進運転支援システムなどの付加価値提案、音楽によるエンターテイメントの提供などで成長を目指す考えです。

一方、OEMについては、採算性を大きく改善することに力点が置かれた計画となっています。具体的には、AVとナビの一体開発によるカーナビゲーションの収益性改善、モジュラーデザイン化や共通プラットフォーム化の推進、生産工場の自動化等による効率化の推進などです。

ここで注目していただきたいことは、自動車メーカーにとって、カーナビは、これから大きな成長が期待されている自動運転関連で中心的な役割を担う“統合コックピット”へと進化していく可能性が高いということです。

つまり、自動車メーカーにとって、カーナビはもはや単なるアクセサリーではなく、欠かすことができない重要なカーコンポーネントへと変化していくのです。

このため、パイオニアは長年にわたり市販とOMEの両方を手掛けてきた強みを活かし、市販市場で得られたエンドユーザーのニーズに向き合ってきた知見をもとにした積極的な提案を自動車メーカーに行っていく考えです。そうすることで、パイオニアは一段とその存在感を自動車メーカーに対してアピールすることが可能になると考えられます。

1.3 スマホとは補完関係にあるパイオニアのカーナビ事業

ところで、皆さんはカーナビに対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか。仕事であっても、遊びであってもドライブには必需品である一方で、ガラケーやデジカメと同じようにスマホに取って代わられてしまい衰退の運命にあるという懸念をお持ちの方も多いのではないかと思います。

ところが現実は大きく異なります。JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)のデータによると、カーナビシステムは2016年4月から2017年1月までの連続10か月でプラス成長が続いています。また、カーCDなどを含めたカーAVC機器の国内出荷金額は下図に見られるように過去6年間ほぼ横ばいで推移しており、急速にスマホに置き換えら衰退しているという印象はそこにはありません。

出所:JEITA

また、パイオニアの調査によると、新興国では約5割のユーザーがカーオーディオ・ナビゲーションのアップグレードを、「スマホとの接続性」、「機能拡張(運転支援等)」、「音の性能向上」を理由に希望しているとのことです。

つまり、スマホは必需品となってもカーナビとは相互補完の関係にあり、完全に置き換えられてしまうものではないということがこの調査からは読み取れると思います。

今後は、世界的に通信ネットワークを介してクラウドに接続された「コネクテッドカ―」の普及が進むと予想されますが、パイオニアはそうした環境変化を好機ととらえ、スマホと相互補完が可能な製品を提供することで成長を目指すと考えられます。

1.4 パイオニアの成長機会となる自動運転関連

現在、自動車メーカーが最も注力している新技術分野は自動運転関連ですが、パイオニアもこの分野を事業機会としてとらえており、その中核となる製品が「3D-LIDAR(Light Detection and Ranging)」(以下、ライダー)と呼ばれるセンサーです。

ライダーは、周囲に光レーザーを発し、その反射光から空間を3次元的に認識するセンサーであり、現在は非上場の米Velodyne LiDAR社(以下、ベロダイン)が先行しています。ベロダインの製品は現在実験中の自動運転車や、自動運転車の普及のためには不可欠である高精度の地図を整備するための測量車両の多くに搭載されています。

ただし、ベロダインの製品は非常に高精度ではあるものの、メカニカル部品が多く使われていることなどから一台あたりの価格が数百万円と高価であることが普及を加速させるためのボトルネックとなっています。

こうしたなかで、パイオニアは、長年培ってきた光ディスクの技術やMEMSと呼ばれる半導体技術を応用し部品点数を減らすことで、極めて安価かつ高性能な製品の投入を目指しています。

パイオニアは、2017年中にプロトタイプ製作や評価検証を終え、2018年後半からは製品化検証を始め、2020年代に量産を目指しています。

また、パイオニアは自社のライダーを高精度地図の製作にも活用する考えです。先述したように、既にベロダイン社のセンサーは自動運転用の測量車に採用されていますが、測量車が高価であるため現在使われているのは高速道路や専用道路の地図作成に限られています。

しかしながら、将来自動運転が普及するためには、リアルタイムでアップデート可能な地図を全ての道路を対象に作りあげる必要があります。そのためには、高価な専用測量車ではなく一般車両にセンサーを搭載して地図情報をアップデートすることが必要になると考えられ、パイオニアはそうした分野でも利用されることを考慮してライダーの開発を進めています。

ちなみに、パイオニアは2017年2月に、オランダのデジタル地図大手のHERE社と「自動運転時代を見据えてグローバルな地図ソリューションおよび次世代位置情報サービスの提携に合意した」ことを発表しています。

協業のイメージは下図の通りですが、こうした協業が進めば、パイオニアは自動運転に必須となるライダーと地図を合わせて提供できる「自動運転の実現になくてはならない会社」となることが期待できるのではないかと考えられます。

出所:会社資料

2. 「音と光のパイオニア」から「カーエレのパイオニア」に

現在はカーエレ、車載インフォテイメントを主力とするパイオニアですが、創業当時はスピーカーの製造を主力とし、1980年代はレーザーディスク(以下、LD)の大成功により「音と光の未来をひらく」をキャッチフレーズとしたホームAVメーカーとして有名でした。ここでは、そのパイオニアが現在に至るまでの変遷を振り返りたいと思います。

2.1 多くの世界初製品を世に出す

パイオニアは、1938年に福音商会電機製作所という社名で創業者であり初代社長である松本望氏により創業されました。創業製品は、国産初のダイナミックスピーカーです。その後、オーディオ専業メーカーとして地位を固め、1961年に現在の社名であるパイオニアに変更しています。

ちなみに、「パイオニア」という英語の意味は、”先駆者”、”開拓者”ですが、その名の通り多くの世界初製品を輩出してきています。具体例としては以下の通りです。

・1962年:世界初、セパレートステレオ
・1975年:世界初、コンポーネントカーステレオ
・1984年:世界初、LD/CDコンパチブルプレーヤー
・1990年:世界初、市販GPSカーナビゲーションシステム
・1997年:世界初、大型民生用プラズマテレビ(以下、PDP)
・1999年:世界初、DVD-RWフォーマット対応DVDレコーダー

2.2 PDPで経営危機、リストラの歴史、三菱電機などから支援出資を受ける

このような輝かしい歴史を持つとはいえ、パイオニアの祖業である家庭用オーディオ市場では、全盛時代の1980年代においてもソニー、松下電器(現、パナソニック)、フィリップスなどの大手や、日本ビクター(現、JVCケンウッド)やケンウッド(現、JVEケンウッド)などの中堅オーディオメーカーとの競争も熾烈でした。

そうしたなかで、パイオニアは1980年代後半にはLDカラオケに活路を見出し、この成功により1991年3月期の営業利益は723億円の最高益を計上しています。

ただし、好調は長続きしませんでした。LDカラオケは通信カラオケの台頭により駆逐され、家庭用高級オーディオもCD搭載のミニコンポやウォークマンなどに押され苦戦が続きます。

そこで、次の活路として期待されたのがプラズマ・ディスプレイ・パネル(以下、PDP)です。1997年に世界初のハイビジョン対応のPDPを発売後、2004年にはNECからPDP工場を買収し規模拡大に邁進することになります。こうした取り組みにより一時的に国内で高いシェアを確保することに成功はするものの、液晶テレビの台頭により一気に価格競争に巻き込まれ、業績は大きく悪化し経営危機に至ります。ちなみに、パイオニアの2005年3月期から2010年3月期まで6年間の最終損益は連続して赤字となり、累計で▲3,000億円強の赤字を計上しています。

2.3 パイオニアの転換点となった2009年

こうした経営危機に直面し、パイオニアは大規模なリストラを2009年に実行しています。具体的にはPDPやLDからの完全撤退、本社移転(東京都目黒区から神奈川県川崎市へ)、シャープとの光ディスクの合弁会社設立(2014年に解消)、本田技研工業からの出資受け入れなどを実行しています。また、翌年の2010年には、三菱化学とは有機EL照明関連で提携(2017年2月に解消)、三菱電機とはカーナビ分野での業務提携を強化することを発表し、両社から、それぞれ出資も受け入れています。

この時期からパイオニアの主力事業はカーエレという方向性は決まりましたが、それを決定付けたのが2015年に行われたホームAV事業のオンキョーへの譲渡と、DJ機器の米投資ファンドKKRへの事業譲渡です。これにより2016年3月期からのパイオニアは、名実ともに「カーエレのパイオニア」に生まれ変わっています。

2.4 パイオニアは本社を52年ぶりに東京都文京区へ移転

さらに新生パイオニアを印象付ける出来事としては、2016年3月に本社を川崎から東京都文京区の文京グリーンコートへ移転したことです。上述のように、パイオニアは2009年に経営危機により都心の一等地である目黒駅前から川崎へ本社を移転しましたが、今回は52年前の1964年まで本社があった文京区への移転となりました。

なお、川崎工場はJR新川崎駅から徒歩約15分とやや不便な立地にありましたが、文京区の新本社は都営三田線千石駅から徒歩約5分と便利になります。また、パイオニアの主力工場である川越市へのアクセスも良くなることから、今回の本社移転は社員のモチベーチョンアップにつながる可能性が高いと推察されます。

3. パイオニアは2018年3月期に10年ぶりの復配を目指す

続いて、最近の業績や株価についても見てみましょう。

3.1 パイオニアの業績本格回復はまだこれから

上述のように、パイオニアは2000年代後半に業績が急速に悪化し、2009年に大規模なリストラを実施しています。ただし、その後も危機は去ったものの、収益力が急回復することはありませんでした。ホームAV事業は安定した黒字を計上することはできず、また、コア事業と位置付けたカーエレ事業も国内では小型車へのシフトやディーラーオプション市場の拡大、新興国での廉価モデルの拡大などのマイナス影響を受け採算が低下傾向にありました。このため、再び2013年3月期にはリストラを実施しています。

このため、パイオニアの業績は2011年3月期から2016年3月期まで、営業利益は連続して黒字を確保できているものの、同期間の最終損益は2013年3月期に一度だけ赤字に転落しています。

また、配当も2009年3月期から2016年3月期まで8期連続で無配が続いています。

なお、配当については、2017年3月期も無配の予想となっていますが、2016年6月7日付けの日本経済新聞は、パイオニアの小谷進社長のコメントとして、「2018年3月期に1株あたり数円程度の配当を検討する」と述べたと伝えています。

3.2 株価は同業他社に比べアンダーパフォーム

パイオニアの株価はどのような動きを示しているかアルパイン、クラリオンという同業のカーエレ企業と比較してみたいと思います。

下図のチャートは2012年からの過去5年間の推移を示しています。パイオニアは2009年にPDPからの撤退などの大規模リストラを行っていますが、リストラにより経営危機は回避できたものの、高い採算性や成長力は取り戻していません。そのことを示唆するように、パイオニアの株価はこの5年間、ほぼ狭いボックス圏で推移しており、同業2社比べると大きくアンダーパフォームしていることが読み取れます。

パイオニア(青色)、アルパイン(赤色)、クラリオン(緑色)

なお、下図は、最近のパイオニアの時価総額の推移を示したものですが、800億円から1,000億円のレンジで推移しています。

3.3 パイオニアの今後のカギを握る中期計画

これまで述べてきたように、パイオニアはカーエレをコア事業として成長を目指す企業へと転身中です。自動車という空間を楽しむためのインフォテイメントの需要は今後も成長が期待できることや、自動運転という新たなトレンドを考慮すると、方向性としては正しい選択ではないかと考えられます。ただし、上述のように株式市場での評価は今のところあまり冴えません。おそらく、この理由は中期的にパイオニアの業績がどこまで回復しているかを現在の株式市場が見極め中であるためと推察されます。

では、パイオニアは具体的にどのような業績を目指しているかを、再び2016年5月に発表された中期計画の発表資料を見ながら、業績目標を中心におさらいしてみましょう。

下図の通り、まず全社の数値計画としては、2019年3月期で売上高4,500億円、営業利益は200億円、2021年3月期に売上高5,100億円、営業利益310億円を目指しています。2016年3月期の実績が売上高4,496億円、営業利益が73億円ですので、今後3年間、売上高は横ばいを見込むものの、採算性の改善により営業利益を大きく回復させることが目指されています。

また、その計画を達成後の2020年3月期からは売上も利益も伸びる計画となっていることから、今後の3年間は、次の成長に向けて体質を改善し、次の成長に向けての仕込みの時期であるととらえることができると思います。

出所:会社資料

次にセグメント別の内訳も確認しておきましょう。下図の中央部あたりを注目していただくとおわかりのとおり、新規事業が含まれる「その他」セグメントは、2019年3月期でも売上高は950億円、営業利益は30億円に留まる計画です。つまり、ほとんどの利益は「カーエレ」から稼ぎ出される計画になっていることになります。

出所:会社資料

4. 「感動を創り出す」ことがパイオニアの創業者の思い

ここからは、経営者について考えてみたいと思います。

4.1 パイオニアの創業者は松本望、その親族にはあの美人女優も

パイオニア創業の原点は、1905年(明治38年)生まれの創業者である松本望氏が、戦前、生まれて初めて聴いたダイナミック・スピーカーの音に心の底から感動し、「いつかきっと、このような素晴らしいものを作ってやろう。」と決心したことから始まります。

創業者の詳しい生い立ちに関しては、同社のホームページに「創業者 松本望著 回顧と前進」として掲載されています。

ちなみに、パイオニアには現在まで6人の社長がいますが、このうち創業者を除く同族は、3代目社長(1982年~1996年)であり創業者の長男である松本誠也氏と、4代目の伊藤周男氏(1996年~2006年)だけです。

創業者の二男である松本冠也氏は会長には就任していますが、社長にはなっていません。また、現在の社長である小谷進氏も創業家とは無関係です。

なお、余談ではありますが、創業者である望氏の孫であり元会長の冠也氏の長男の松本与氏は、著名ファッションデザイナーで、美人女優の井川遥さんの夫です。

4.2 海外経験が豊富な小谷現社長

現在のパイオニアの社長は2008年に社長に就任した小谷進氏です。小谷氏は1975年明治学院大学経済学部卒業、パイオニアに入社し、モーバイルエンタテインメントカンパニー海外営業部長、パイオニア・エレクトロニクスUSA社長、パイオニア・ヨーロッパ社長、パイオニア執行役員、国際部長、常務執行役員などを歴任しています。こうした経歴から明らかなように、豊富な海外経験と、「外から」パイオニアを見るという経験があったからこそ、過去を振り切り、「カーエレのパイオニア」になるという決断ができたのではないかと推察されます。

5. パイオニアが求める人材は自ら考え、仕事に夢中になれる人

最後に就職を検討されている方に向けて、どのような人材を求めているかについて考えてみます。

5.1 パイオニアはグローバルで活躍するチャンスが豊富

パイオニアの主力事業であるカーエレ事業は、国内だけではなく、先進国、新興国のいずれもが今後の重要な成長市場となっています。実際パイオニアは、海外では、ロサンゼルス(アメリカ)、アントワープ(ベルギー)、上海(中国)、シンガポール、サンパウロ(ブラジル)に地域統括会社を置いており、グローバルに50社以上の海外法人を展開しています。さらに、中国とタイに主力工場、そのほかブラジルなどにも生産拠点を設けており、全世界規模でビジネスを繰り広げています。

このため、日本に留まらず海外で実力を発揮したいとお考えの新卒採用希望者の方は、ぜひ挑戦されるとよいと思います。

なお、パイオニアの求める人材像は以下の通りです。

自ら考え、動き(自発と自律)、仕事に夢中になれる人
・自らの得意分野や専門性を活かし、仕事をしている
・なぜ(Why)? どうやったら(How)? と考え続けられる
・課題に向き合い、努力できる

社会、環境の変化に敏感で、変化に対応しながら成長し続けられる人
・世の中の変化や環境の変化に敏感である
・周りの変化を認識し、その上で自分も変化し続けられる
・変革を恐れない。自ら変革できる

失敗を恐れず仕事にチャレンジし、アクションを起こせる人
・失敗を恐れず新たな領域(地域、分野)にチャレンジしている
・自分の考えを自分の言葉で的確に表現し、対話できる
・常に今以上の自分の姿を意識している

お客様、先輩や仲間と仕事を通じて共に笑顔になれる人
・新しい価値を作り出すことを考えている
・お客様に価値を提供したい、喜ぶ顔が見たいと考えている
・先輩や仲間と力をあわせる大切さ、楽しさを知っている

なお、同社サイトの採用情報のページによると2018年度新卒の採用募集は2017年3月1日から開始することが告知されています。

5.2 従業員関連データ

2016年3月期末の連結従業員数は1万7,046名です。これは4年前の2012年3月期末に比べて約31%減少した水準です。この間、2013年3月期に人員削減を含む全社的な事業構造改革を行ったことや、2015年3月期にDJ機器やホームAV事業の譲渡を行ったことで、相当スリム化が進んでいることが読み取れます。

また、パイオニア単独ベースでの従業員の平均年齢は42.8歳、平均勤続年数は19.15年、平均年間給与は741万円となっています。じっくりと、腰を据えてものづくりに取り組みたい方には、比較的恵まれた環境であることが伺えます。

6. 読んでおきたいパイオニアに関連する書籍

日経業界地図 2017年版

この本はパイオニアだけに絞りこんだ経営書ではありませんが、エレクトロニクス業界やカーナビ業界についてわかりやすく解説されています。また、パイオニアはエレクトロニクス企業ですが、自動車業界との関係が深いため、そちらについても参考にされたらよいかと思います。

まとめ

いかがでしたか。パイオニアがホームAVメーカーからカーエレメーカーに変化したこと、また、自動運転という新しい潮流がパイオニアにとって千載一遇のチャンスになる可能性があることをご理解いただけたのではないでしょうか。これからのパイオニアがどのような「感動」をもたらしてくれるのか、今後も大いに注目していきたいと思います。

LIMO編集部