近年ニュースで注目を浴びるようになった「ESG投資」。
ESG投資とは、従来の財務情報だけでなく、「環境(Environment)」・「社会(Social)」・「ガバナンス(Governance)」要素の非財務情報も考慮した投資です。
今回は、このESG投資について、実際どれくらい流行しているのか、私たちはどのように向き合っていけばよいのか、という観点から考察していきます。
流行に乗る「ESG投資」
そもそもESG投資が拡大したきっかけは、2006年に国連が投資にESGの観点を取り入れる「責任投資原則(PRI)」を提唱したことにあります。
その後、2008年のリーマンショックをきっかけとしたShort-termism(短期主義)経営の是正や、2015年のSDGs、パリ協定の採択によりESG投資はますます注目を浴びる存在となりました。
世界のESG投資の調査機関であるGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)の“GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW 2020”の調査によると、2020年時点で、世界全体の運用資産に占めるESG投資の割合は35.9%までに達しています。
日本国内でも、2015年に日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名したことから、2016年~2020年にかけて運用資産に占めるサステナブル投資の日本の割合はプラス20.9%と大幅に上昇しています。
流行に乗っている一方で・・・
しかしながら、ESG投資は新たな取組みだからこそ、課題も多く見受けられるのが現実です。
例えば、ブラックロック社の「2020年グローバル サステナビリティ投資調査」によると、2020年、27ヵ国、425の投資家を対象としたアンケートにて、「サステナブル投資を導入する際の最大の課題は何ですか」との質問に対して、全体の回答者の半数以上が「ESGのデータや分析の質が低い、またはそれらの入手が困難」であることを挙げています。
というのも、ESGデータ(非財務情報)を定量化することは難しく、現時点で数値化できる範囲は非常に限られているからです。
また、様々なESG情報開示のフレームワークやガイドライン等が策定されていることにより、測定手法により異なる結果が出てしまうということもあります。
ここから、投資会社がESGへの配慮を誇張して表現することで消費者に誤解を与えてしまうグリーンウォッシュ等の問題も起きています。ESGの標準的な評価指標のニーズは年々増しています。
投資家は「ESG投資」をどのように考え行動する必要があるか
このような現状を踏まえて、投資家はどのように考え行動する必要があるのでしょうか。ESG投資への向き合い方について、シンプルに以下2点を挙げておきます。
日々、ESG投資に関するニュースを追う
欧州を中心に各国政府、各投資機関がESG測定のフレームワークの策定に取り組んでいるため、情報は日々アップデートされていきます。
一例を挙げると、2021年3月にEUにより導入された「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」は、金融機関に対してESGに関する情報開示を義務付けるもので、規制強化に取り組んでいます。
関心を持って最新の情報を追っていくことはとても重要です。
自分の目的に合わせた投資を選択し実行する
ESG投資はリスク・リターンを最大化・適正化するためにESGの影響を考慮するものです。そのなかで、経済的リターンと社会的リターンの両立を目指す「社会インパクト投資」という手法もあります。
また、100%社会的リターンを求めるなら、投資に分類されなくとも寄付などの手法も考えられるでしょう。
ご自身が投資する際に、経済的リターン、社会的リターンをどの程度求めるのかという観点も持ち合わせると、選択の幅は大きく拡がります。
まとめ
このように、様々な選択肢がある中で、投資家は自発的に考え選択する必要に迫られています。
一方で、よりご自身の目標に沿った資金使途を選択することができる自由度は増したといえます。
自分はどういう資産形成をしたいのか、現在直面している社会課題に対してどのように向き合いたいのか。まずはじっくりと考えてみるのはいかがでしょうか。
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