実際の長期金利は美人投票的な側面も

先に銀行間の貸し借りと記しましたが、長期金利での貸し借りが実際に銀行間で行われる事は稀で、長期金利で貸したい銀行が長期国債を購入し、長期金利で借りたい銀行が長期国債を売却することによって、長期金利での貸し借りが行われたのと同じ結果となるわけです。

その時の国債の売買は、すでに発行されて今後の利払い額が決まっている国債を売買するわけですが、国債の値段が変化することで金利が変化するのです。

金利3%の国債を100円分持っていると、10年で30円の金利がもらえます。銀行間で金利が上昇し、4%になったとします。国債の金利は変わりませんが、値段が90円に下がるのです。

90円で国債を買った銀行は、10年間で30円の金利を受け取った上に、90円で買った国債が100円で償還されて10円儲かるので、40円の金利を受け取ったのと同じ事になるからです。実際の計算はもう少し複雑ですが。

つまり、国債自体の金利は決まっていて、長期金利が上がると市場で取引される国債の値段が下がり、長期金利が下がると国債の値段が上がるのです。

そうなると、10年間金を貸したい人だけが国債を買うのではなく、投機家も国債を売り買いするかも知れません。長期金利が下がると思えば、つまり国債の値段が上がると思えば、今日国債を買って、明日売れば良いわけですから。

そうなると、人々が長期金利を予想して活発に国債を売買するようになります。短期的に国債の売買で儲けようと思えば、今後10年間の短期金利を予想するよりも、「明日は人々は長期金利についてどう考えているだろう。国債の買い注文と売り注文のどちらが多いだろう」という事を考える方が儲かる、ということになります。ケインズが株式に関して美人投票だと言ったのが、長期金利にも当てはまり得るわけです。

なお、実際に10年間の貸し借りという長期の取引をするならば、実際の10年間の短期金利を予想する必要があるので、美人投票とは関係ありません。その点も、株の長期投資が美人投票と関係ない、というのと同じですね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから>>

塚崎 公義