週末2月10日の東京株式市場は急騰、大発会に次ぐ今年2番目の上昇率

安倍首相とトランプ大統領の日米首脳会談を控えた2月10日、週末の東京株式市場は急騰しました。日経平均株価は一時、前日比+488円高となる場面があり、終値も+471円高(+2.5%上昇)の19,378円で引けました。なお、上昇率は大発会(1月4日)以来となる今年2番目です。

NY株式市場で最高値を更新したこと、円安が進んだこと等で、一気に買いが優勢となったと考えられます。もちろん、日米首脳会談に対する期待感もあったでしょう。

さて、ちょうど1年前の今頃、株式市場で何があったか覚えているでしょうか?

一般に、1年前のことを明確に記憶している人は少ないと思われます。ましてや、日々値動きが変化する株式市場の出来事を覚えている人は、さらに少ないかもしれません。

ちょうど1年前、暴落に見舞われていた株式市場

ちょうど1年前、株式市場は連日の暴落に見舞われていました。日経平均株価の騰落率を振り返ると、2016年2月9日が▲5.4%下落、10日が▲2.3%下落、12日が▲4.8%下落となり、3日間で▲12.1%下落しました(いずれも終値の前日比、以下同。なお、11日は祝日で休場)。

2月8日の終値は17,004円でしたが、2月12日の取引時間中には一時14,865円まで下落しています。なお、12日の終値は14,952円でした。

ブレグジットや“まじトラ!”ほどの衝撃度はなかったが…

“あー、確かに、そんな下落もあったね”と記憶がよみがえった方も少なくないと察します。

無理もありません。昨年起きた株価暴落としては、6月24日の英国EU離脱(ブレグジットショック)や、11月9日のトランプ当選ショックが、あまりに衝撃的だったからです。

確かに、ブレグジットショックは▲7.9%、“まじトラ!”ショックは▲5.4%、それぞれわずか1日で大幅下落しました。稀に見る大きなニュースが起きて暴落するという、非常に分かりやすいシチュエーションだったと言えます。しかし、いずれも翌日は急反発しています。

1年前に起きたのは、正しく記録的な暴落だった

実は、1年前に起きた暴落、つまり、2月9日~12日の3営業日(11日は休場)での▲12.1%下落は、記録的な暴落だったのです。

3日間での下落率で見れば、アベノミクス始動以降で最大であり、2015年8月下旬に起きた“中国ショック”の▲11.1%を上回っています。そして、リーマンショック後の大混乱が沈静化した2009年1月以降で見ても、3日間の下落率としては2番目に大きいものでした。

なお、最大の下落率は、週末を挟んだ2011年3月11日~15日に、東日本大震災、及びそれに伴う原発事故発生時に記録した▲17.5%です。

日経平均株価の過去2年間の推移

その記録的な暴落を引き起こした理由は?

では、この記録的な暴落を発生させた理由は何だったのでしょうか。暴落が起きた記憶も曖昧だとすれば、その理由を思い出すのはもっと難しいかもしれません。

結論から言うと、1年前に起きた暴落には、これと言った明確で大きな理由がありませんでした。当時に指摘された理由は、原油価格下落に伴う中近東の政府系ファンドからの換金売り、米国の利上げ本格化、中国の経済成長鈍化に伴う景気失速、大手銀行の信用不安による欧州危機の再来懸念、などでした。

しかし、記録的な暴落を説明するには、どれも説得力が欠けていますし、その多くが後付けのような印象もあります。

指摘されていた理由はどれも説得力に欠けるものばかり

まず、中国の景気悪化は既に2015年に大きく懸念されており、米国利上げの影響も2015年末に第1弾が実施済みであるため、新たな理由とは考え難い状況でした。また、欧州問題も“目新しい”材料ではなくなっていたと思われます。

一番もっともらしい理由が、中東の政府系ファンドによる換金売りでしたが、これも推測の域を脱していなかったと見ていいでしょう。仮に、中東政府ファンドの換金売りがあったとしても、ここまでのインパクトは起きたでしょうか。

明確な理由がなく起きた暴落は、再び引き起こされる可能性も

今となっては検証することも難しいのですが、こうした些細な懸念材料や色々な憶測が積み重なった結果、投資家のリスクオフモードが一気に加速し、売りが売りを呼ぶ結果だった可能性があります。投資家の不安心理が拡張して、ある意味で一線を超えたと言えるのではないでしょうか。

そして、こうした暴落時には、短期筋を中心に、大きな利益を上げている投資家が必ずいるのです。彼らが暴落を導いたと言うのは邪推なのでしょうか。

そして、最も重要なことは、こうした株価暴落は、またいつ起きてもおかしくないということです。日米首脳会談という大きなイベントを通過し、トランプラリーの再発進という楽観論が支配的になりつつある今だからこそ、1年前の記録的な暴落を振り返ってみるのも必要かもしれません。

 

LIMO編集部