介護費用は「親の資産から出す」が原則

「介護費用は介護される人の資産から出す」ことを原則と考えましょう。そのためには、親の資産がいくらあるのか知っておく必要があります。

要介護になってからあわてて親から聞き出すのでは遅すぎます。もし親が認知症になってしまうと、親の預金口座が凍結されてしまい、引き出せなくなってしまうリスクもあります。親が元気なうちに、預貯金や保険、年金、不動産など、親の資産がどのくらいあるのかを聞いておきましょう。

ただ、子どもとはいえ、聞きにくい話題でもありますよね。「友達の親が急に入院して、加入している保険がわからなくて困った」という話から、今はこういった便利なものを利用している人も増えていると、エンディングノート(医療や介護、葬儀などの要望をはじめ自分に関するさまざまな情報を書き記すためのノート)等を渡して書き込んでもらうとスムーズにいきやすいでしょう。

また、以下の点についても知っておきましょう。

親の経済状況をみて利用できる施設やサービスを検討する

要介護認定を受けると、介護保険で利用できるサービスや施設など、自分たちでは分かりにくいことを専門家(ケアマネージャー)と相談して、ケアプランを決めて取り組むことができます(ケアプラン作成は基本的に無料です)。

そのときに、親の資産や年金額を大まかに伝え、その範囲で無理のないケアプランを作成してもらいましょう。

介護保険の軽減制度を利用する

介護保険サービスの利用者の負担は原則1割ですが、一定以上所得のある65歳以上の方については、所得に応じて2割または3割負担となります。

また、介護の度合いによって支給されるサービスの限度額が設けられており、介護度が重いほど限度額は大きくなり、限度額を超えた場合は全額自己負担となります。

ただし、自己負担額が高額になると「高額介護サービス費」が利用できます。月の自己負担額の合計が、所得に応じて区分された上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻されます。

さらに「高額医療・高額介護合算療養費制度」というものもあり、1年間における医療保険と介護保険の自己負担額が著しく高額になった場合に、2つを合算して基準額を超えるとその超えた金額が支給されます。

介護費用が足りなくなったら?

介護には想定外の費用が発生することも多く、資金繰りで行き詰まる可能性もないとは言えません。そうなったときに親の代わりに子どもが費用を出すこともあり得ることでしょう。

ただし、子どもの生活費を削ってまで支出するのは賢明ではありません。そのような事態になった場合は、一人で抱え込まず、地域包括支援センターや福祉事務所など市区町村の相談窓口を利用しましょう。経済状況によっては施設の月額費用が安くなるなど、支援制度が利用できる場合もあるでしょう。

参考資料

石倉 博子