堅調な株価の背景にある4大ポイントとは?

コロナが完全に収束したわけではないにもかかわらず、日本製鉄の株価はなぜ強い勢いで持ち直すことができたのでしょうか。ポイントは、以下の4つだと考えられます。

1. 世界的な経済回復期待

コロナの蔓延をきっかけに世界経済は大きく停滞しましたが、ワクチンの普及や各国の財政支援を背景に経済回復に向けた期待は高まりつつあります。

たとえば現状、米国ではバイデン政権が巨額な景気刺激策・インフラ投資計画を検討しており、これらを通じた大きな鉄鋼需要が期待されています。こうした政府の助力もあって、鉄鋼需要には明るい兆しが見えつつあります。

また、世界的にワクチン接種が進んでいるほか、経口薬開発の可能性なども出てきており、こうした側面からも経済回復に向けた期待は高まっています。

2. 中国の粗鋼減産

世界最大の粗鋼生産量を誇る中国において、今、減産の機運が高まっています。世界鉄鋼協会の統計によると、世界64カ国・地域の10月の粗鋼生産量は前年同月比10.6%減の1億4570万トンとなりました。肝心の中国は、環境対策による電力制限を進めて減産していることが影響し、23.3%減と大幅な減産となりました。

世界最大の生産量である中国が減産を進める中、鉄鋼の需給改善を通じて日本製鉄は利幅の拡大が期待できる状況となっており、実際に足元の利益拡大にも寄与しつつあります。

3. 脱炭素姿勢の好感

日本製鉄は中期経営計画の中で、脱炭素を目的に「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050 ~ゼロカーボン・スチールへの挑戦」と題した取り組みを進めています。具体的には、2030年までにCO2総排出量を30%削減し、2050年にはカーボンニュートラル(100%削減)を目指すものです。

ESG投資の普及を背景に日本製鉄のこういった取り組みは株式市場でも高評価されていると考えられ、実際に日本製鉄はESG投資のための株価指数「FTSE4Good Index Series」「FTSE Blossom Japan Index」の構成銘柄に4年連続で採用されています。

4. 再編による経営合理化期待

鉄鋼業界は典型的な成熟産業であり、業界全体としては各プレーヤーが統廃合し、生産を合理化する流れが強まっています。

実際、日本製鉄は今年、同業の東京製綱の株式を公開買い付け(TOB)によって20%近く取得しました。この取り組みはその後、独占禁止法の観点において公正取引委員会から指摘を受け、株式持ち分が10%以下になるよう東京製綱株式を売却していく方針に切り替えられました。

とはいっても、こうした取り組みを通じて日本製鉄の経営が徐々に合理化され、利益率が改善されていくといったシナリオには注目が集まっていることでしょう。