新聞紙上などでは、太陽光発電ビジネスに関わる業界に厳しい目を向ける論調が目立つようになりました。最初にクリアにしたいのは、太陽光発電ビジネスにおいて設備の設置・運営サービスを提供する企業側と、投資家として参入する側の2種類の参加者が存在するということです。

前者については、確かに再生エネルギー固定買取制度開始より短期志向で運営されている企業もあり、事業の継続性に問題が指摘される企業もあります。しかし、これはどこの業界にもある玉石混交の問題です。一方、後者については、国内外の投資家が依然として旺盛な投資意欲を見せています。

一部の富裕層はすでに太陽光発電投資をうまく活用し、資産運用の手段として生かしています。資産運用としての太陽光発電を少し探ってみましょう。

太陽光発電投資は魅力的なのか?

そもそも、実際のところ太陽光発電は魅力的なのでしょうか?

太陽光発電を投資対象とする参加者は、企業と個人に分けられます。50kw以上の発電能力を持ち、電気事業法上で高圧連系分類される大規模設備投資が必要な投資案件は、ほぼ企業が独占している状態です。一方、個人は10kw以上50kw未満の小規模発電所の案件(低圧連系)に投資するのが一般的です。

一部の中小企業では、この低圧連系を投資対象とし、税制メリットを追求するところもあります。また、住宅街でも一般的になった一般家庭の屋根を活用した太陽光発電もありますが、投資対象としては規模が小さすぎるので、ここでの議論の対象とはしません。

太陽光発電ビジネスの懸念点としてメディアが指摘しているのは、電力会社による買取価格が低くなっているので投資妙味を見出せない投資家が増加する結果、同産業に従事する企業(たとえば発電設備の施工業者など)の収益環境が厳しくなるという論理です。

確かに、制度開始時のような利幅の大きなビジネスにはなっていないのは事実でしょう。また、太陽光発電による電力の買取価格はどんどん低くなっています。ただ、それ以上に太陽光パネルやその他の設備費、造成コストなどが低下してきたのも事実です。

その結果、投資家が期待できる収益水準に大きな変化は起きていないのです。それよりも、陽当たり条件の良い好立地の取得や、電力会社による連系拒否のリスクなどが従前より高くなっていること、さらに一番大きな税制メリットがなくなりつつあることが、太陽光発電を投資対象として検討する上で最大のリスクとなっています。

太陽光発電における税制メリットとは何か?

国としても、温室効果ガスの削減や持続的なエネルギー源獲得の観点から、太陽光発電や風力発電に代表される再生可能エネルギーの導入拡大を進めてきました。

太陽光発電投資を拡大させるために提供してきた税制メリットの代表的なものには、グリーン投資減税や生産性向上設備投資促進税制というものがあります。諸条件の適用については税理士にご相談いただく必要がありますが、償却による税の繰り延べ効果が活用できる点が大きなメリットとなっています。

税制メリットのイメージ

低圧連系では、平均的には2千万円前後の投資を1単位とし、投資物件として提供されていることが多いです。税制メリットを単純化すると、たとえばこれらの投資金額の50%を投資した年度において即償却することができます。

仮に、給与所得1,500万円の個人投資家が2,000万円の太陽光発電物件に投資したとします。税制メリットを活用し、2000万円の50%、つまり1,000万円を償却すれば、 1,500万円の収入に対して1,000万円のコストが発生することになります。すると、1,500万−1,000万=500万となり、その投資家の課税所得が500万円にまで引き下げられます。

1,500万円に課税される所得税と500万円に課税される所得税は大きく異なることは容易に想像できます。

富裕層には複数単位を単年度に投資をするケースが多いのが特徴です。税制メリットを活用すると、投資した年度内でかなりの投資金額を償却できるというわけです。減価償却は、現金の出費がない計算上の出費なので、現金をより多く手元に残したい投資家にとってメリットがあるのです。

もちろん、税制メリットだけではなく、投資対象としての魅力がある(つまり、ある程度の投資利回りが期待できる)ということがあってこそ、太陽光発電投資は活況を呈しているのでしょう。

太陽光発電投資のリスクは?

太陽という自然を相手にするところはリスクでもありますが、投資として見た場合の最大のリスクは、電力会社による買取価格が20年という長期にわたり固定されていることでしょう。インフレリスクにはかなりもろいことがわかります。

太陽光発電投資にマッチするインフレ対策としては、毎月発生する収益を株式に積立投資をすることが良いかもしれません。積立は非常に優れた株式投資手段でもありますが、幸いなことに太陽光発電のキャッシュフローパターンに合致する投資手段でもあります。

他の再生エネルギーはどうか?

風力発電に関しても似た構図での投資が可能ですが、風力発電投資はまだまだ実績が小さいことや、太陽光よりも風の予測が難しいこともあり、電力会社による買取価格が高いにもかかわらず、風力発電投資は拡大していません。

今後、発電効率が非常に高い設備が登場したり、発電実績のデータの蓄積や予測手段が充実すれば、このエリアの投資も急拡大するのではないでしょうか。

 

小田嶋 康博