2021年11月10日に、医学・科学分野の査読つき論文誌”PLOS ONE”に掲載された、猫に関する実験を含む論文” Socio-spatial cognition in cats: Mentally mapping owner’s location from voice”が話題になっています。

この研究は高木佐保氏(麻布大学獣医学研究科 学振SPD)を筆頭著者としており、猫が「音声が聞こえた位置」をどう認識しているかを検証したもので、猫の生態研究解明の一つとして話題となりました。

今回は、実際に該当論文を読んだ上で実験の概要を解説しています。同種の研究への参加方法もご紹介しますので、猫を飼われている方で興味がある方はぜひご検討ください。

実験の概要について

今回の実験については、動物のsocio-spatial cognition(社会空間認知)をテーマとしています。これは、具体的にはある動物の中において、他の群れのメンバーや捕食者、獲物などといった、様々な立場の生物の居場所をどのように認識しているか、について実験を通して解き明かすということです。

今までの研究は「視覚」……つまり、目の動き方や映像を用いて、これらの認識が研究されてきていましたが、今回の実験では「猫の聴覚」を使って研究したのが新しいポイントになります。

実験では、実験に参加した猫が慣れ親しんだ空間(その猫が住んでいる家または猫カフェ)を用いて行われました。つまり、猫がどこかの実験室に連れ出されたわけではなく、「猫が暮らしているいつもの場所」で実験しています。

そのいつもの部屋の内外に、スピーカーやカメラを設置して、猫の行動を記録する形式です。

1つめのスピーカーは猫が慣れ親しんでいる部屋の外、2つめのスピーカーはその部屋の中のうち、他の部屋や外に通じるドアや窓の近くに置いています。

スピーカー1・2の間隔は最低でも4mとし、どのような人間であっても2.5秒ではスピーカーの間を移動できないような距離に設定しています。