猫は飼い主の声をちゃんと覚えている?

実験は3種類行われ、それぞれ下記のような条件が設定されています。

実験1

飼い主の声(または猫カフェで主に世話をしている人の声)を2つの場所のスピーカーから連続して再生することで、見かけ上「瞬間移動」したかのように認識させる(違う音条件の時は見知らぬ人の声)

実験2

親しい猫の声をスピーカーから流して、同種の声でも同じような社会空間認知処理が行われるかどうかを検証(違う音条件の時は別の猫の声)

実験3

対照条件として、社会的ではない物理的な音(電子音)を用いた。実験1、2で見られた反応が社会的な刺激に特有のものかどうかを検証するため(違う音条件の時は別の電子音)

そして、それぞれの実験に参加した猫は下記の通りです。猫カフェの猫や、家で飼育されている猫が対象になっています。

ただし、「カメラの範囲外に猫がいた」「実験機材の不調で音が十分に出なかった」ことなどから除外されているデータもありますので、検証に使えるデータ範囲はさらに狭まっていることに注意が必要です。

  • 実験1:50匹(うち、18匹に何らかの実験エラーあり)
  • 実験2:45匹(うち、8匹に何らかの実験エラーあり)
  • 実験3:47匹(うち、11匹に何らかの実験エラーあり)

この3つの実験の結果、「猫は人間の声で位置関係を把握している可能性が高い」一方「猫の『にゃー(meow)』音がテレポーテーションした時はそこまで反応しない」ことがわかっています。ただ、今回の実験では、特に実験2(猫の鳴き声)・実験3(電子音)において改良の余地があることから、今回得られた「猫は人間の声で位置関係を把握している可能性が高い」仮説を検証するために、同様の実験が何度か行われることが予想されます。

心理学などの実験の場合、1度で有意な差が出るデータを得られないことが普通です。何度か実験を繰り返し、各実験で得られた結果を踏まえて実験内容を改良していくことで、「仮説を知見」に変えていくことができます。

したがって、今の段階では「人間の声で位置関係を把握している可能性が『高い』」としか言えないというのが、今回の実験に対する正しい受け止め方です。とはいえ、一人の猫飼いとしては「猫が飼い主の声をちゃんと覚えているかもしれない」という情報はうれしいものでした。