定年後の再雇用と転職の違いはあるのか

最後に、少し俯瞰的に日本の定年制度や労働市場全般について考えてみます。今年はサントリー新浪剛史社長の「45歳定年制」発言が話題になりました。やはり経営者の本音としては“もう終身雇用はムリだよ"ということなのでしょう。

今回の改正高年齢者雇用安定法において、“雇用以外"の就労機会の提供を取り入れているのも、企業側の希望に配慮しているという印象もあります。

高齢化が進み、将来の人手不足が不安視される日本の労働市場の奇妙な点は、その一方で多数の「社内失業者」がいることです。内閣府では、コロナ禍の2020年4-6月期の雇用保蔵(社内失業と同義)を製造業210万人程度、非製造業では440万人程度と推計。同7-9月期でも、製造業140万人程度、非製造業240万人程度としています。

大企業を中心に、早期退職・希望退職の流れが止まらないのも、ある種、当然と言えます。日本の労働市場では、「定年延長」と「早期退職・希望退職」という相反する流れが同時並行しているわけです。

定年後の再雇用も、収入が大幅ダウンし、職位が変わり、職場も変わるなどのケースを考えれば、本来的な意味は転職と同義の気もします。

やはり、いまの日本の働き方は、大きなミスマッチを抱え込んでいるようです。一言でいうと労働市場の硬直性ということに尽きると思いますが、“就社"から“就職"への転換期ということなのでしょうか。

当分、働き方で悩む時代が続きそうです。

参考資料

榎本 洋