2021年11月12日に行われた、​​HENNGE株式会社2021年9月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:​​HENNGE株式会社 代表取締役社長 小椋一宏 氏
HENNGE株式会社 取締役副社長 天野治夫 氏

2021年9月期決算説明会

小椋一宏氏(以下、小椋):みなさまこんにちは。HENNGE株式会社代表取締役社長の小椋でございます。本日は当社の決算説明動画をご視聴くださり、誠にありがとうございます。本日は、取締役副社長CFOの天野より、2021年9月期の通期業績についてご説明した後、私から2022年9月期の業績見通しおよび成長戦略についてご説明申し上げます。どうぞよろしくお願いします。

天野治夫氏(以下、天野):天野治夫でございます。2021年9月期の業績について、ご説明します。

連結売上高(対前年同期比、12か月累計比較)

天野:連結売上高は、スライドのとおり順調に推移しました。

連結業績サマリー(対前年同期比、12か月累計比較)

連結業績サマリーは、スライドのとおりです。2021年9月期の通期連結売上高は、HENNGE One事業が若干予想を下回り、プロフェッショナル・サービス及びその他事業が若干予想を上回りましたが、おおむね期初の通期業績予想どおりの結果となりました。営業総利益以下の各段階利益は、通期業績予想を上回る結果となりました。

売上総利益(対前年同期比、12か月累計比較)

売上総利益も、引き続き高い水準を確保しています。

当期純利益(対前年同期比、12か月累計比較)

当期純利益は、昨年度と比較すると、スライドのグラフに記載したとおりになります。

営業費用の構造(対前年同期比、12か月累計比較)

営業費用の構造を昨年度と比較すると、スライドのグラフに記載したとおりになります。

営業費用の構造(対前四半期比)

対前四半期比は、スライドのとおりとなりました。当第4四半期では、来期以降の成長につながると考えられる活動を中心に、費用を投下しています。

その他販売費では積極的な販売活動を実施し、広告宣伝費は、2021年8月に発表した新機能追加に関連するイベントや広告などを展開しました。業務委託費等は、活性化された営業及びカスタマー・サクセス活動の対応などを行ったため、第3四半期と比べて、それぞれ費用が増加しています。

人件費等は、従業員に対して、リモートワークにかかる手当として一時金を支給したことなどにより、第3四半期と比べて増加しています。

売上原価と研究開発費の合計は、プロフェッショナル・サービス及びその他事業の売上高に対応する仕掛の原価振替などの影響により、前四半期から2,400万円の増加となりました。

売上高と営業費用の推移

四半期の売上高と営業費用の推移は、スライドのとおりです。

従業員(アルバイト含まず)の状況

従業員は213名になりました。構成比はスライドのとおりです。

従業員(アルバイト含まず)の推移

過年度からの従業員数の推移は、スライドのとおりです。期初の計画どおり、HENNGE One営業及びカスタマー・サクセス職は、採用が順調に進みました。

以前の決算説明でもご説明したとおり、HENNGE One開発/研究開発職は、7割以上が日本人以外の社員で構成されており、これまでは海外からの採用を中心に、人員をまかなってまいりました。

しかし現在、新型コロナウイルス感染症の影響により、入国できない内定者がいるなどの理由により、前期末比で減少しています。研究開発活動には、現時点で大きな影響はないと考えていますが、引き続き状況を注視していきます。

また、第3四半期にプロダクトの強化を目指して組織変更が行われた結果、カスタマー・サクセス職の一部が事業開発と合流しています。今後も、人員採用は積極的に行う方針です。

キャッシュ・フローの状況(対前年同期比、12か月累計比較)

続きまして、キャッシュ・フローの状況です。当期は主にイベント、HENNGE NOW!などの広告宣伝費の支払いがあったことにより、営業キャッシュ・フローは前年と比べてマイナスとなりましたが、現金及び現金同等物の期末残高は前年度比で堅調に伸びています。

事業トピックス

事業の進捗についてご説明します。事業トピックスは、スライドのとおりです。

各種イベント開催

当四半期には、第2四半期に開催した大型デジタルイベントHENNGE NOW!のフォローアップや、2021年8月に発表した新サービスの認知向上を目的として、数多くのオンラインイベントを引き続き開催しました。

パートナー企業との連携

また、日頃からHENNGE Oneの販売にご協力いただいているパートナー企業さま向けにも、新サービス説明会をオンラインで開催しました。

パートナー企業さま向けのマーケティング支援策などもご紹介し、今後より一層パートナー企業さまと協力し、ユーザさまへのアプローチを質、量ともに上げていきたいと考えています。

HENNGE One新機能について

第3四半期の決算説明会で詳しくご説明しましたが、2021年8月にHENNGE Oneの新機能を発表し、2021年10月から発売しています。詳細の説明は省きますが、パンデミック下で新たに生まれたニーズに対応して追加された、3つの素晴らしい新機能を搭載しており、より大きな付加価値をお客さまに提供できるようになったと自負しています。

HENNGE One新ライセンス体系について

そして、この新機能追加の大型バージョンアップにあわせ、2021年10月から、ライセンス体系を刷新することを発表しています。高付加価値なセットプランでの販売をメインとしつつ、新たな試みとして、ライトユーザにも導入しやすい単機能プランも設定し、より幅広い層へのアプローチを試みます。

HENNGE One KPI(対前年同期末比)

次にKPIの進捗についてご説明します。HENNGE OneのKPIの前期比較は、スライドのとおりです。

HENNGE One KPIのハイライト(対前期末比)

前期末からの進捗は、スライドのとおりです。

HENNGE One平均月次解約率の推移

平均月次解約率は0.25パーセントとなりました。引き続き、非常に低い水準にあると考えています。

HENNGE One契約企業数と契約ユーザ数の推移

契約企業数と契約ユーザ数の四半期ごとの推移は、スライドのとおりとなっています。契約企業数と契約ユーザ数は、ともに順調に推移しているという認識です。

HENNGE One ARRとARPUの推移

ARPUも引き続き上昇傾向にあり、ARRも順調に推移しました。

以上、2021年9月期の業績について、ご説明申し上げました。

2022年9月期の方針

小椋:2022年9月期の業績見通しについて、ご説明します。2022年9月期の方針は、2021年9月期を踏襲し、引き続き積極的なマーケティング投資を行い、ニューノーマル下で拡大する機会を捉えることで、HENNGE Oneの中期的なARR成長を加速します。

マーケティング投資は、引き続き新サービスの認知向上のための広告宣伝を実施します。こちらは、インターネット、雑誌広告、交通広告、テレビCMなどを含みます。このようなものを実施していくほか、新型コロナウイルス感染症の終息の可能性も考慮し、リアルイベントやオンラインイベントでの露出を図るなど、一点集中ではない、状況を踏まえた多層的な顧客アプローチを試みます。

人員計画としては、今後の成長のための全方位的な採用を行い、全社で50名以上の純増を目指します。2021年10月から販売を開始する新プランの販売促進のため、営業職とカスタマー・サクセス職を中心に増強しつつ、人員が充足するまでは業務委託も並行して活用していくことで、顧客対応のためのリソース確保を最優先します。最優先としているのは、これが特に既存のお客さまの来期(2023年9月期)の新プランのご利用促進に効いてくると考えているためです。

連結業績見通し(通期)

通期業績見通しについては、スライドのとおりとなっています。HENNGE One事業については、前期に実施した大規模イベントからの流れを活かして、中期的に20パーセント以上での成長を目指します。

そのため、当期においても積極的なマーケティング活動を実施していくものの、前期のような一点集中型のマーケティングイベントの開催というよりは、多層的なマーケティング活動を実施していきたいと考えています。これらの活動の結果、今期の営業利益や当期純利益は増益を見込んでいます。

連結売上高の推移(通期)

事業別の売上高の前期までの実績および今期の見通しは、スライドのとおりとなっています。

営業費用(売上原価+販管費)の推移(通期)

広告宣伝費と広告費を除いた営業費用の前期までの実績および今期の見通しは、スライドのとおりです。当期については、前期と同程度の水準で広告宣伝投資を積極的に行っていくほか、人材採用や業務委託等、来期以降の成長加速のための費用投下を積極的に行っていく予定です。

Vision

最後に、当社の成長戦略についてご説明します。

HENNGEのビジョンは「テクノロジーの解放」です。私たちは、テクノロジーの力を信じています。テクノロジーが大好きで、テクノロジーが世の中をよくしていくと強く信じています。この力をできるだけたくさんのお客さまに届けることによって、世の中を少しでもよい方向に動かしたいというのが私たちの思いです。

HENNGEは創業以来25年以上、このテクノロジーの解放を理念として掲げており、さまざまな分野、さまざまな方法でテクノロジーを解放してきました。その結果、SaaSはテクノロジー解放のための最もフェアで洗練された効率的な手段であるという考えに至っています。そのため、私たち自身もSaaSを提供しておりますし、お客さまのSaaS活用を通した変革を応援していきたいと考えています。

LTV最大化

このようなテクノロジーの解放を通して、私たちがお客さまに届けているテクノロジーの総量、私たちの理念の実現の証左となるのがLTV、ライフタイムバリュー、すなわち私たちが保有している契約の総価値です。

私たちの成長戦略は、このLTVの最大化を目指しています。

現在、平均契約年数「Y」と売上総利益率「r」はすでに高い水準にあります。よって、LTVの最大化にはARRの最大化が必要であるという状況です。そのため、私たちは、直近の営業利益の水準にはこだわり過ぎることなく、将来への投資を積極的に行い、ARRを積み増していきたいと考えています。

ARR最大化

ARRは、さらに3つの要素に分解できると考えています。契約者数の「N」、平均ユーザ数の「n」、ユーザあたり単価のARPUです。

成長戦略の進捗

HENNGE Oneにおける3つのKPIの実際の推移は、スライドの表に示すとおりです。HENNGE Oneを主力とする当社グループのビジネスは、基本的にサブスクリプションモデルです。当期中に獲得した契約は解約されない限り積み上がっていき、翌期以降の売上の基盤となっていきます。ご覧のとおり、HENNGE OneのARRは順調にかつ安定的に積み上がってきていることを確認していただけると思います。

しかし、ここであえて課題をお伝えするならば、このARRの成長率が低下してきていることが挙げられます。実際に、2020年9月期までは年々減少する傾向がありました。この課題に対処するために、2021年9月期の期初より、「2021年9月期を底として、ARRの成長速度に変曲点を作り出す」とお伝えしてきました。

「なかなか簡単なことではありませんが、COVID-19のパンデミックによって、今は企業の行動様式が大きく変化しており、パンデミックの終息後にSaaSやクラウドの利用が拡大していくことが間違いない状況が生まれそうです。そのため、チャレンジするには今こそが最適なタイミングである」とお伝えしてきました。

変曲点を作り出すためには、このような機会をとらえて、全国のディシジョンメーカー、パートナー企業さまなどのより幅広い層にHENNGE Oneの強みやHENNGEブランドを認知してもらうため、2021年9月期において積極的なマーケティング費用の投下を行いました。その結果、2022年9月期以降の「N」およびARPUの両方に作用する変曲点が作り出されていくと考えております。

これらの活動は2022年9月期から実を結ぶ予定でしたが、実はこれまでの継続的な営業カスタマー・サクセス活動によって、スライドからもおわかりのとおり、2021年9月期でARR成長率が微増するという結果となってしまいました。

これにより、お話がわかりにくくなってしまいましたが、引き続き、2021年9月期の成長率の水準を底とするような成長トレンドを、2022年9月期より作り出していきたいと考えています。

2022年9月期以降の成長戦略

実際に、2021年9月期の大規模なマーケティング広告投資と2021年10月の新サービスの販売開始によって、当社のARRは間もなく新しい成長トレンドに入ると考えています。

今後、2022年9月期以降もこの新しい成長トレンドを加速させて、「N」とARPUの両方に作用するような新しい上昇を作り出すことによって、CAGR(年平均成長率)を20パーセント台中盤とする、中期的なARR成長を実現します。まずはHENNGE OneのARR100億円以上の水準を目指していきます。

お客様の変革を応援するHENNGE One

HENNGE Oneは2011年に単一の機能からなるサービスでスタートして以来、機能を徐々に追加し、これまで5つの主要機能と1つのオプションからなるIDaaSとして展開してきました。

今回新たに3つの新機能を追加しましたが、今後もお客さまに届けるテクノロジーの総量を最大化するために、SaaS活用の分野で必要となる機能をどんどんと追加していき、SaaS活用によるお客さまの生産性向上を強力にバックアップしていきます。

SaaSプラットフォームとしてのHENNGE One

HENNGE Oneは、お客さまがSaaSを活用すればするほど価値が高まる種類のIDaaSです。今後も私たちは、日本全国の企業でクラウドサービスの利用が拡大する流れを後押しするとともに、そのような流れの中でSaaS各社との連携を深めながら、SaaSプラットフォームとしての成長を図っていきたいと考えています。

以上、駆け足でしたが、当社の2021年9月期の通期決算についてご説明いたしました。

本日はお忙しい中、ご視聴くださいまして誠にありがとうございました。

質疑応答:新プランの立ち上がり方について

質問者1:1つ目の質問は、セットプランと新プランの立ち上がり方について、MAUとARPUに関して、どのような効果の出方をイメージしているのか教えてください。第1四半期からすぐ立ち上がるのか、それとも徐々に浸透していくのか、現在のイメージをお願いします。

小椋:ARPUは、2段階で効果が出てくると考えております。

現在は、レガシープランとしては2019年6月以前にあったプライシングプランと、2019年6月から2021年9月までのプライシングプランがあり、それに今回の2021年10月以降のプランが加わると3種類のプライシングプランがあるという状況です。2つのいずれかのレガシープランが適用されている既存ユーザさまについては、継続してレガシープランをご利用いただける期間があるため、私たちとしては徐々に新プランに移行してくださることを期待している状況です。

基本的には、2021年10月から契約を開始する新規のお客さまは、新しいプライシングプランが適用されます。これが1段階目の効果と考えています。その傍ら、2023年9月期までは、レガシープランがまだ存在するのですが、この2年の間に少しずつ新しい機能を魅力に感じて新プランに移行してくる既存のお客さまがいらっしゃるというのが、それまでの動きになると思っています。これが2段階目です。

したがって、2022年9月期については、基本的には新規のお客さまが新しいプランで流入してくる流れのため、2021年9月期と同じような傾向で、ARPUの上昇を見込んでいます。

仮に新プランの評判がとてもよく、新規のお客さまだけではなく既存のお客さまも今期多数新プランへ移行してくださるとすれば、ARPU上昇に多少は寄与するかもしれませんが、私たちとしてはARPUが実際に上昇することが織り込めるのは2023年9月期からだと考えています。

質疑応答:営業費用の増加分について

質問者1:とてもよくわかりました。2つ目は、今期の計画のうち、営業費用の増加分の中身に関してです。今期は営業職やカスタマー・サクセス職など、いろいろと人員を増やされるということなので、採用費と人件費が増えると理解してよろしいでしょうか?

天野:はい、おっしゃるとおりです。

質疑応答:下半期のトップラインについて

質問者2:1つ目は、トップラインについての質問です。第3四半期に地方でのSSOニーズのある中小企業が伸びたというご説明があり、第4四半期でどれくらい継続するかを注視していくというお話しだったと思いますが、こちらがやはり伸びなかったのかというところと、今後どのような見方をしているのかうかがわせてください。

小椋:第3四半期と比較して第4四半期になにか傾向が変わったという状況ではなかったと思っています。

一方で、第4四半期は、当社にとってちょうど新プランへの切り替えの時期であり、2021年10月以降によりよいサービスラインナップでのご案内ができるということもあったため、営業としてもお客さまの新プランへの需要と緊急度をうかがいながら運転した状況です。したがって、勢いがあったかなかったかという話ですと、一様に第3四半期とは比較できないと考えています。

引き続き、引き合いや営業活動は活発に動いていると認識しており、私たちとしては、特に第3四半期と比べてなにかの勢いが落ちた感じはありません。第3四半期はわりと刈り取りの時期だったのに対して、第4四半期は10月以降を見据えてバランスを取った活動を行ってきた状況です。

質疑応答:既存ユーザの新プランへの移行について

質問者2:2つ目は、先ほど「2023年から、新プランへの移行というのが既存ユーザから出てくるのではないか」というお話がありました。

足元でも、すでに既存ユーザからの移行は進んでいるのでしょうか? もし進んでいるのであれば、どのような動機やモチベーションで移行するというお話があるのか教えてください。新機能を3つ追加していると思いますが、そのあたりも踏まえておうかがいできればと思います。

小椋:具体的な数字は申し上げられないのですが、8月に新プランを公表し、お客さまにご案内してまいりました。既存のお客さまに対しても、新プランのご案内をしたり、あるいはニーズに応じてセミナーを行ったりしました。10月も継続してそのような活動を行っており、反応としては概ねご好評いただいています。

3つの新機能については、今まで練りに練ってきたと言いますか、まさに情報システム担当者が必要だと思うものを出しており、興味を持ってもらえるという状況にあります。

中には、「今すぐにでも使いたい」というお客さまもいらっしゃる中で、今期もいくばくかのお客さまには、新プランに先行して移行していただけるだろうと思っています。

どの機能がよいかと言いますと、とにかく3つの機能、いずれも破壊力があると自負しております。そちらをテーマにセミナーなどを行うと多くのお客さまに来ていただきご評価をいただけている状況で、私たちとしては好感触を得られている状況かと思っています。

質疑応答:中長期のマーケティング戦略について

質問者3:2点お願いします。1点目は中長期のマーケティングに関してです。御社のサービスがいずれある程度の認知度を得た時点で、ネットワーク効果のようなものが働き、安定した成長軌道に乗ると思っています。御社としては中長期の視点で、あるいは成長率が下がったタイミングで、再度マーケティングの変曲点を作るような動きを想定しているのかどうか、お考えを教えてください。

小椋:将来については、なんとも申し上げられませんが、例えば新しいサービスを出し、より新しいマーケットにアプローチしていくようなことになれば、そのようなことも考えられる、という可能性しか今はお伝えできません。

私たちはもともと、マーケティングに関してわりと保守的で「使ってみて効果が出たら、改善しながら継続する」タイプのため、突然大幅に増やすということは今のところは考えていません。

質疑応答:半導体不足やハードウエアの供給遅れの影響について

質問者3:2点目の質問です。昨今言われている半導体不足や、ハードウエアの供給が追いつかないという問題は、御社の業績にリスク要因として影響を与えるのでしょうか? もし、影響などが聞こえているものがあれば教えてください。

小椋:含蓄のある答えをしたいところですが、私たちはクラウドベースでビジネスを行っており、ハードウエアを直接販売していないため、正直に言いますと、今のところは販売に影響がある状況ではないと認識しています。

一方で、例えば新入社員が入社しパソコンを調達する等という時に、納期が延びてきているという情報は、他社からもいただきましたし、当社も経験しているため、そのようなことがなんらかのトリガーとなり、クラウドサービスの導入自体も少し先送りになる、少し遅延するといったことは、考えられなくはない気がします。基本的には、直接的ではなく間接的なリスクの1つだと認識しています。

質疑応答:トップラインについて

質問者4:トップラインについて、今回の第4四半期で契約ユーザが3.2パーセント増、ARPUが0.9パーセント、HENNGE Oneの売上高の伸びが5.5パーセントと、少し乖離がある気がしますが、要因を教えてください。

天野:ご案内している、当社の「2021年9月期 通期決算Q&A」の中の「事業の進捗について」で、それぞれのARRの構成要素についてコメントしています。期中において、前期と比較して若干デコボコしているのが、通期で見ると、複数の要因によって増減率が変わってきているというところがあるため、ご認識のとおり、すべてが同じように増えたり減ったりするというものではありません。

例えば、平均ユーザ数は第3四半期で中小企業向けの販売が進んだ一方で、第4四半期に関しては、大手企業への販売が進み微増しています。

ARPUの上昇傾向については、ご案内した資料にも記載がありますが、新規契約の単価が引き続き上昇傾向にあるというところで、少し上昇してきています。

質問者4:どうしても、デコボコしてしまうという感じですか? 

天野:そうですね。「n」については、会社のほうでは、特にコントローラブルなものではないと認識しているため、積極的に企業数を増やし、ARPUを上げていくことに注力しているところです。

質疑応答:他社製品との競合について

質問者4:最近、SaaSマネージメントのようなツールが増えてきている印象があります。現時点ではバッティングはしないと思う一方で、シングルサインオンがオーバーラップしていることから、「将来的にはどうなるのか」「ぶつからないのか」という懸念も少し出てきています。

また、従来から主だった競合はいないというスタンスだったと思いますが、将来的なところを含めて、そのあたりに変化はないでしょうか? 新規のお客さまが競合他社の製品と比較検討する時もあるのではないかと推測しているのですが、そのようなところに変化はないでしょうか?

小椋:1点目のSaaSマネジメントでの競合についてです。将来は別として、今はSaaS黎明期です。私たちがいま最も注力しているのはマスゾーン、これからSaaSを導入してワークスタイルを変革していく層であり、ほとんどの企業はまだここに該当している状況だと思います。

そのため、私たちから見るとSaaS管理などのツールは、もう少しアドバンスドな要求や二ーズに見えている状況です。そのようなアドバンスドなお客さまがツールを必要とする場合には、協業していくことももちろん可能だと思っている一方で、私たちが今注力したいのは、SaaSを使った働き方をするための第一歩を超えるところのお手伝いです。まずはその部分をお手伝いしていくため、今のところ直接バッティングするような市場ではないと思っています。

仰っていただいたサービスが私が想像しているようなサービスだとすれば、もしかすると将来的にも、バッティングするのではなく、むしろ協業していくタイプのサービスかもしれません。

競合環境に変化はないかどうかについては、一言で言うと「変化はない」というのが正直なところです。加えてひしひしと感じているのは、今回の新機能の投入によって、私たち自身がいわゆるIDaaSから少し違うステージに来ているということです。

もともとお伝えしているように、私たちの狙いは「テクノロジーの解放」で、お客さまにできるだけたくさんのテクノロジーを届けるために、まずはSaaSを使ったワークスタイルに移行してもらう、そのための障害物を全部取り除きたいというのが私たちの思いです。

この思いの中核にあるのはIDaaSで間違いないのですが、その周りにあるものもどんどんと取り込み、今回3つの新機能をさらに取り込んだ結果、今までにないような、SaaSを使ったワークスタイルのイネーブルメントのプラットフォームに、少しずつ位置づけが変わってきたと感じています。特に、今回の新機能の投入によって、競合との差別化は非常に強くなり、性質が大きく違うものに変化しつつあることを感じている状況です。

そのため、私たちから見ると、あまり競合の状況には変化はありません。また、今までより多くのいろいろな強い競合に当たるようになったり、海外企業とたくさん競合するようになったりするようなことも、特に観測していません。

質疑応答:「HENNGE」という名前について

質問者5:「HENNGE」という名前に関する質問です。最近、コンシューマーのコンテンツ業界などを見る機会があり、プロモーションの上では名前が非常に大事だと感じました。特に、聞いてすぐにサービスの中身をイメージさせられるものが最高だと思っています。

その点で言いますと、失礼かもしれませんが、御社の場合は「『HENNGE』というクラウドサービスって何だと思いますか? 」と聞いて、「IDaaSです」と答えられる方はなかなかいないのではないでしょうか?

「HENNGE」という名前を選んでいる理由や、「このような思いを込めてやっています」「お客さまにこんなイメージや認知を付けてもらいたい」といったことについておうかがいしたいです。

小椋:私たちも、新しく「HENNGE」という名前にした時は、非常にいろいろな議論がありましたが、私たちや創業時の経営陣がすごく大事にしていたのは、「まず我々自身が変化し続けることが、結局のところお客さまに対して価値を提供することになる」という思いの部分です。

私たちがお客さまに提供する価値が何なのかと言うと、「テクノロジーの開放」です。つまり今まで手の届かなかったテクノロジーに手が届くことによって、今までできなかったことができるようになり、新しい価値が生まれるというところが、私たちがお客さまにもたらしたい価値です。

それによって、お客さま自身が変わっていくことで、さらには世の中全体が変わっていき、トランスフォーメーションが起こることを期待しています。

これは勝手な期待をしていたということではありません。私たちの社名が「HDE」だった時代からサービスを提供していますが、私たちはお客さまがクラウドを使った働き方に変わった瞬間に、少し失礼な言い方になってしまうかもしれませんが、それまではかなりオールドスタイルな文化だった会社が、クラウドによって急に引っ張られて強い会社に変わっていく、何か現代風のすごい強みがありそうな会社に変わっていくみたいな、お客さま自身が変わって、すごくよくなっていく様子を私たちは数多く目の当たりにしてきました。

2011年から2016年くらいの間にあった第一次クラウドブームの頃に、そのようなことがたくさん起こりました。それを見て、「我々自身も変わっていかないといけない。もしかしたら我々よりもお客さまのほうが早く変わっているかもしれない。」と思いました。

私たち自信も変わっていかないと、お客さまに提供する価値自身を我々が先に見つけにいかないといけない。先に失敗して、学び、価値を見つけてそれを届けるためには、我々自身がお客さまよりも早く変化し続けないといけませんし、「我々自身がお客さまにその価値を届けないといけない」という思いが非常に強くなりました。

このように「HENNGE」という社名の中にはいろいろな意味を込めていますが、つきつめて言いたいことは、「我々自身がまずトランスフォームを続けます。それによって、お客さまがトランスフォームできるための種を必ず見つけます」という決意であり、それによって、社会全体がトランスフォーメーションを続けられる社会になるように、少しでも貢献できればよいという思いです。

確かに「HENNGE」と聞いた時に、それがIDaaSであることは想像がつきにくいですが、私たちが目指しているところは、IDaaSではなく、お客さまのワークスタイルを変革するようなお手伝いができる、そんなパートナーであることです。

そのための、今、中核機能で、一番お客さまが直面する障害がアクセスセキュリティであり、IDフェデレーションです。もちろんその他の課題もたくさんあり、それらを全部まとめて本当は解決していきたいというところが思いとしてあります。

「HENNGE」という名前からサービスまでは確かに遠いですが、この全体のストーリーをお客さまにご理解いただけるように、これからも頑張っていきたいと思います。

小椋氏からのご挨拶

小椋:本日は本当にお忙しいところ、たくさんの決算説明会がある中で、私たちの決算説明会をお聞きくださいまして、本当にありがとうございました。

私たちは、今まさに日本の企業が課題としている、生産性の向上を実現できるようなSaaSワークスタイルへの変換のキーを、お客さまに届ける会社です。

お話ししたとおり、かつては本当にただのメールセキュリティのようなところからスタートして、IDaaSとなり、今まさにSaaSを使ったワークスタイル全体をお手伝いできるようなサービスに少しずつ変わってきているところです。この活動を通して、たくさんのお客さまに新しい働き方を届けることで、社会全体の生産性を上げていきたいと思っています。もちろんそれが私たちの利益につながり、ひいてはN、ARPUの向上につながって、私たち自身の収益にもつながることを目指しています。

パンデミックが終息に向かいつつある今、これからいろいろな会社がSaaSを使ったワークスタイルに移行するという本当に序盤のところにいるため、少し気の長い話にはなってきますが、私たちはここを主軸に頑張っていく所存でございます。ぜひ長期的な視点で応援いただけたら幸いです。本日はご参加ありがとうございました。

記事提供: