春節は中国文化圏最大のイベント

春節(中国の旧正月)のシーズンがやってきました。今年は1月27日から2月2日までの7日間が休みとなります。中国国内は爆竹の煙に包まれ、この時期だけで600万人が海外に向かうと言われる一大イベントです。

同時に、個人消費も大いに盛り上がります。最近はモノの消費に留まらず、コトの消費も拡大していますが、当然、個人のふところ具合が消費に影響することになります。

2017年は元安の影響で中国人の出国は前年並みの600万人程度に留まるという報道もありましたが(日本経済新聞1月26日朝刊)、タイ、日本、米国などへの観光客が大枚はたいてご当地の景気にプラス効果をもたらしてくれることを願わずにはいられません。

ところで、筆者は過去20年間、化学アナリストとして年明けから春節までのアジア市場での汎用化学品の市況に注目してきました。市況が強ければその年は概ね景気が良く、弱ければ景気停滞に陥るという経験則がある気がします。

今年はというと、どうやら強そうな気配がします。日本株、とりわけ素材株も捨てたものではないように思われます。

なぜ化学品市況が強いとその年の経済が強いのか

春節の始まる前、即ち前年末から年初にかけてのアジア市場の化学品市況動向を継続的に見てきた経験から、市況が強ければその年の経済は強く、逆に弱ければ弱いという、一見当たり前のような法則があることに気づいて20年。これがよく当たるのです。

では、なぜそうなるのでしょうか。まず、春節には14億人の中国人に加えて東南アジアを中心とした華僑が、ものすごい規模で個人消費を動かすのです。であるならば、事前に大量の物資、食材などを調達・準備する必要があるのではないかと思われます。

現場の生産者、商売人は個人のふところ具合に敏感であり、エコノミストと言われる人々よりも実は経済に対する洞察力が優れていると筆者は考えています。彼らがモノを買えば個人消費材(衣食住)に深く関連する化学品の需給と市況に大きな影響を及ぼすはずです。

実際のところはどうかというと、建材に使われる塩化ビニル樹脂、合成繊維の原料であるベンゼン、あらゆる製造業に広い需要の裾野を持つ苛性ソーダ、タイヤ素材の合成ゴムの原料であるブタジエン等、多くの化学品の市況がアジア市場で10月から11月にかけて高騰を開始、現在でも高値更新中です。

また、化学品以外の鉄鋼、非鉄金属、繊維製品など他の素材市況も同様に強い動きを見せています。

春節後の市況動向のカギを握るのは在庫投資

ここで、春節が終わったら旺盛な消費が終了するわけですから市況は軟化するのではないかという素朴な疑問が湧きます。普通に考えればそうなのですが、“饗宴”後の影響で短期的には売上高が減速するものの、生産者はまだまだ消費は強いと判断すれば払底した在庫を補填する行動に出ると思われます。即ち在庫投資に向かうはずです。

したがって、春節が終わってしばらくしても市況が堅調に推移するとすれば、現場の生産者、商売人が在庫投資に動いているという証左ではないでしょうか。ここを確認できれば冒頭に述べた2017年の、少なくともアジア・中国圏の景況感は強いと判断してもいいのではないかと考えます。来る3~4月の市況動向が注目されます。

2017年は世界全体の経済の明るさが増す年に

1月25日にはNY市場でダウが初の2万ドル突破を記録するなど、2017年は好スタートを切った印象です。トランプ大統領の影響は未知数ですが、欧州、中国の景気も回復傾向を強めているほか、原油高によって落ち込んでいた新興国の経済も持ち直す可能性があります。

また、IMF(国際通貨基金)、OECD(経済協力開発機構)などの世界機関による2017年、2018年経済見通しも明るさを指摘しています。

筆者は1月23日付けの個人投資家向け経済金融メディアLongine(ロンジン)のレポートで、「値上げのアナウンスで始まった2017年市況産業の行方と株価動向」を分析しましたが、大型の化学株、鉄鋼株、非鉄株、総合商社株に追い風が吹き始めたと判断しています。

日経平均株価は円/ドルとの相関度が高いと言ってしまえばそれまでですが、景気敏感、アーリー・サイクルとしての素材関連銘柄に注目したいと考えます。

 

石原 耕一