ESG情報発信で苦労する発行体

では、当の発行体はどのように見ているのだろうか。

国内時価総額大手のIR担当者は次のように言う。

「ESG投資で示される課題は、企業が長年かけて「企業市民」として取り組んできた内容も多い。」

「投資家が欲しい情報が多岐にわたるため、対応するのに社内のリソース問題がある。サステナビリティ推進やESGの専門部署を置く会社も出て来ているもののまだ少数派。複数部署で対応が必要で、社内調整も複雑になってきている。」

「開示してあるデータは先に読み込んでから対話に来てほしい」

との意見もあり、ESG投資として一定の理解を示しながらも、企業決算会計のような資産運用業界の統一的な基準がないため苦労もうかがえる。

ESGはSDGsとも流れを共にする傾向にあり、今後はESGにどこまで対応できるかが上場企業に求められてきており、投資家のESG視点の銘柄選別が続くようであれば、その企業のバリュエーションや時価総額への影響も避けられなくなる可能性はある。

参考資料

泉田 良輔