資産運用業界において「ESG」、または「ESG投資」というキーワードはかなり耳にするようになってきている。ESGそのものはE(環境)、S(社会)、G(統治)の英語の頭文字をとったもの。

2006年に国連が機関投資家に対してPRI(責任投資の原則、責任投資原則)を発表し、署名の促進を図ったことにより、以降、多くの機関投資家や金融機関などが署名をし、ESG投資の流れが加速している。

また、日本の年金運用の一部を担うGPIF(年金積立管理運用独立行政法人、Government Pension Investment Fund)も2015年にPRIに署名し、年金運用業界においてもすでにESGは無視できなくなっている。

今回はそのGPIFにより2021年8月に開示された「2020年度ESG活動報告」や事業会社IRへの取材をもとに、機関投資家がどのような課題を認識しているのかについてみていきたい。

PRIが考える重大なESG課題とは

ESGの課題については、E、S、Gのそれぞれの領域で様々な課題があるが、実は当のPRIでもっとも重視している課題はEの中での「気候変動」である。

PRIの「責任投資のビジョン」の中で、PRIマネージングディレクターのフィオーナ・レイノルズ氏は次のように述べている。

「私たちは引き続き気候変動に特に注意を払います。直面しているESG課題の中で気候変動を最優先すると繰り返し述べています」

こうしたことからも、PRIは、貧富の差も関係なく、地球全体の市民が影響を受ける可能性のある気候変動に最も注意を払っていることがわかる。