キャリアと子育ての両立を目指す人は増えており、それを支える国の制度も充実してきていますね。
さて、育児と仕事を両立させるために時短勤務をしている方は、給料が減ることで、将来受け取れる年金額も減ってしまいます。しかし、子どもが3歳までの間なら、時短勤務によって給料が下がっても、年金額を減らさない制度があるのです。
この制度は申請しないと利用できないため、まずは制度について知っておくことが重要です。あなたの周りに、この制度を利用できそうな人がいたらおしえてあげるといいでしょう。
時短勤務者が知っておきたい二つの制度
子供が小さいうちは、保育園のお迎えなどがあるため、時短勤務にしたいという人は多いでしょう。育児休業から会社に復帰し、時短勤務で仕事を始めれば、当然給料は以前よりも下がります。しかし、社会保険料は、出産前の給料で計算されるため、時短勤務で少なくなった給料に見合わない保険料を払うことになります。
毎年9月の定時改定で社会保険料は見直されますが、それまでの期間、高い社会保険料を払い続けるのは大変です。そこで、改定まで待たずに保険料を軽減してくれる制度があります。この制度を利用するには『育児休業等終了時報酬月額変更届』を提出します。
1.育児休業等終了時報酬月額変更届
3歳未満の子どもを養育している厚生年金の被保険者が、育児休業が終了したあとに、給料の変動があった場合、被保険者の申し出によって事業主を経由して届け出ることで、給料に応じた社会保険料が差し引かれるようになります。
育児休業が終了したあとの3ヵ月間の給料の平均額に基づいた標準報酬月額が4カ月目から適用されます。(例:4月に時短勤務で会社復帰した場合は7月から適用)
利用するには以下の条件を満たす必要があります。
(1)従前の標準報酬月額と改定後の標準報酬月額に1等級以上の差が生じるとき
(2)育児休業等終了日の翌日の属する月以後3カ月のうち、少なくとも1月における「報酬の支払の基礎となる日数」が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上であること
(1)の標準報酬月額とは、社会保険料を計算しやすくするために、報酬額に区分を設けたもので、この区分を「等級」といいます。たとえば23万円以上25万円未満までは16等級、25万円以上27万円未満までは17等級というように分けられています。以前の給料と時短勤務後の給料に1等級以上差がないと利用できません。
(2)の補足として、パートなどの短時間労働者の日数については、3ヵ月のうちいずれも17日未満の場合は、そのうち15日以上17日未満の月の報酬月額の平均によって算定します。
時短勤務が決定した時点で、会社が書類を用意してくれる場合も多いようですが、事前に制度を知っておけば、気づかずに保険料を多く払い続けるという事態を回避できます。
この制度は保険料の負担を軽減できるという意味では大変有意義ですが、一方で、支払った保険料が少ないと将来受け取る年金額も少なくなってしまうという懸念があります。
それも含めて、時短勤務の間の年金額の減少を救済する制度が、『養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置』です。この制度を利用すれば、保険料は下がっても以前の給料に基づいた年金額を受け取ることができます。