「老後2000万円問題」の盲点

前項では60代で貯蓄2000万円以上ある人の割合を見ましたが、実際に老後生活2000万円で足りるのでしょうか?

金融審議会「市場ワーキンググループ」(第21回)厚生労働省提出資料から該当部分をまとめました。

【夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯】

今の生活費と比較するとどうでしょう?

このオレンジ枠の部分が、「2000万円」という金額の根拠です。

ただしこの試算では、注意すべき3つの落とし穴があります。

  1. 介護費用が含まれていない
  2. 住居費が1万3656円で計算されている
  3. 収入と支出は世帯によってそれぞれ異なる

生命保険文化センターの調査によると、85歳以上の約6割が要介護認定を受けています(※2020年7月時点)。

また、LIFULL介護のデータを参考に、「入居時費用のある有料老人ホームに5年間入居した場合」を想定して計算すると、必要となる金額は1900万円強です。長生きリスクを考えると、介護費用はある程度準備しておく必要がありそうですね。

さらに、賃貸派の方は老後の生活費の中に「家賃」も含める必要があるでしょう。そして、ご自身がどのような老後生活を送りたいかによっても、必要な金額は変わります。

さきほどのモデルケースによる試算は、あくまでも「必要最低限の老後生活費」。公益財団法人生命保険文化センターのデータによると、ゆとりある老後を暮らしたい場合は、月々生活費が36万1000円必要という調査結果も。

「2000万円だけで足りる世帯」は、そう多くはないことが考えられますね。

まずはご自身の「いまの生活費」をモデルケースの計算式に当てはめてみると、ざっくりとした不足金額が出ます。そこに「3つの盲点」を考慮しながら、全体でいくら不足するのかを把握できるでしょう。