2021年4~6月期のFPD(Flat Panel Display)露光装置の販売台数は、ニコン、キヤノンの主要2社で30台となった。コロナ禍に伴って渡航などに制約がまだあるなかで、据え付け・立ち上げ作業を計画どおりに進めた。21年通年では110台前後の販売が見込まれる(20年実績は52台)。

20年10~12月期から販売復調

 FPD露光装置は、液晶ディスプレーや有機ELディスプレーの画素を駆動する薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor=TFT)をガラス基板上に形成するのに使用される。TFTの回路パターンが書かれている原版であるフォトマスクに光を照射し、レンズを介してパターンをガラス基板上に露光する。

 これまでの2社合計の年間出荷台数は、14年の54台をボトムとして右肩上がりが継続し、15年は80台に増加。16年は129台、17年は149台、18年は142台と高水準で推移した。だが、液晶の供給過剰によってパネル価格が大幅に落ち込み、FPDメーカーの多くが営業赤字に転落した19年は90台に減少。これに新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけた20年は、投資計画の遅延や装置立ち上げエンジニアの渡航制限などによって52台にまで落ち込んだ。

 ただし、20年10~12月期からは、立ち上げ作業の現地化などが進んだ。コロナ禍で液晶パネルの需要が急増し、パネル価格の上昇などでFPD各社の投資意欲が復調したことも相まって、四半期ベースで30台の販売が継続している。

ニコンは13台販売

 ニコンは、21年4~6月期に13台を販売した。内訳は、10.5G用と5G/6G用が6台ずつ、7G/8G用が1台。前年同期はコロナの影響で出荷できなかったが、遅延していた装置の据え付けが順調に進捗した。中小型用、大型用ともに顧客の設備投資は堅調で、中小型用を中心に受注も堅調に推移した。

 通期(22年3月期)では45台の販売を計画している。内訳は、10.5G用が14台、7G/8G用が1台、5G/6G用が30台。大型用の販売は上期に集中し、10.5G用の需要は一段落する見通しだが、顧客サイトでの高い稼働率によって保守などのサービス収益も堅調に推移する見込みだ。

キヤノンは年間で倍増以上へ

 キヤノンも、グループ内で設置に必要な要員を確保し、コロナ禍で制約があるなか計画どおりに設置を進め、21年4~6月期に17台を販売した。今後、設置作業者の教育で現地化を加速させ、安定的に設置できる体制づくりに取り組む。通期(21年12月期)では、20年の32台から倍増以上となる68台の販売を目指す。

 また、世界トップシェアを持つ有機EL蒸着装置では、一部顧客の新規投資時期が見直されているため、21年の売り上げは前年をわずかに下回る見通し。ただし、有機ELは需要が堅調なスマートフォン、テレビなどで搭載モデルが増加しており、ノートPCやゲーム機などへの採用増で今後も成長が見込まれるため、大型パネル用装置の開発を加速させる考えだ。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏