2021年8月23日に行われた、株式会社クロス・マーケティンググループ2021年6月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社クロス・マーケティンググループ 代表取締役社長 CEO 五十嵐幹 氏
2021年6月期決算説明会
五十嵐幹氏(以下、五十嵐):みなさま、こんにちは。ただいまご紹介いただきました、株式会社クロス・マーケティンググループ代表取締役社長の五十嵐幹でございます。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
本日の説明会は、前段と後段に分かれています。前段では、2021年6月期通期の決算の内容についてご紹介し、後段で中期経営計画をご説明するという流れです。まず、2021年6月期の決算概要です。
事業セグメントと主なグループ企業
最初に、グループの事業内容についてあらためてご説明します。グループの内訳としては、31社の連結子会社と、2社の非連結会社があります。事業セグメントとして、グループ全体の33社で、下記の3つの事業をメインに推進しています。
まず、一番大きいセグメントである、デジタルマーケティング事業です。こちらは、SI事業から広告代理店業務、セールスプロモーションメディアまで、デジタルマーケティング全般にサービスを提供しています。
データマーケティング事業では、消費者データを収集しており、そのプロセスの中でインターネットリサーチというサービスを提供しています。直近では、データマーケティングの領域ということで、消費者アンケート以外のデータも数多く取り扱っており、いわゆるPOSデータや、お客さまが保有するCRMデータを統合してデータを取りまとめるという業務を行っています。
インサイト事業は、データマーケティング事業を通じて収集したデータを分析し、マーケティング課題を発見して、何らかの提言を行うというコンサルティング事業です。
クロス・マーケティンググループは、主たる事業として、この3つのセグメントで事業展開をしている総合マーケティング会社です。
当社グループのビジネスモデル
次に、当社グループのビジネスモデルについてご紹介します。当社は、もともとネットリサーチの会社として創業しました。データマーケティング事業において、生活者のデータを効率的に収集する仕事で創業しているということです。
したがって、データを集めてくる、特にインターネット上でデータを集めることに関しては、創業以来もう18年取り組んでおり、豊富なノウハウがあります。自社でも大規模なアンケートパネルを運用し、グループ全体で約470万人のデータを管理しています。
こちらの規模は、日本最大級であるということと、非常に大規模なメディアを運用しているということもあり、データバイアスも非常に低くなっています。そのため、マーケティングリサーチが必要なさまざまな会社さまに活用されています。
大規模なデータベースから抽出したデータを活用することで、インサイト事業が成り立っています。ですから、当社はいわゆるファクト(事実)に基づいてマーケティングの課題を分析する会社だといえます。
こちらに関しては、専門家集団が存在しています。いわゆるリサーチャーという人材です。弊社では国内だけでも150名体制、グループ全体では300名体制の規模の専門家集団を抱えており、日本でも有数のリサーチャーのスペシャリスト集団です。
これらのインサイト、マーケティング課題の抽出・提言に基づき、次のデジタルマーケティング事業ということで、特にデジタル領域におけるマーケティング課題に対して、施策・実行まで総合的にサポートします。当然システム開発した後の保守・運用業務、そしてデジタルプロモーションをトータル的にプロデュースしていくのがこの事業です。
私たちの強みとしては、豊富なWebアプリのシステム開発の業務経験があるだけではなく、自社のプロモーションネットワークとして、アンケートパネルを通じて各種大手メディアとお付き合いもあることです。シングルソース化された、約800万人のプロモーションデータベースを保有しています。こちらを活用して、プロモーションするかたちです。それぞれの事業については、後ほど詳細にご説明します。
デジタルマーケティング事業(事業内容)①
まず、デジタルマーケティング事業の1つである、システムインテグレーション事業についてご紹介します。こちらに記載のとおり、金融機関向けの証券アプリや、カード会社のアプリの開発の実績が豊富にあります。特に金融系とECの取引系のアプリケーションの豊富な開発実績を有しています。
実際、オンライン証券会社の各種金融機関で、オンライン証券子会社を持っています。そのうち、会員登録数の60パーセントが何らかのかたちで私たちが提供したアプリを使っています。その他、近年カード会社にも数多くの採用実績があります。セゾンカードさまを含めまして、いろいろなかたちで金融機関にご活用いただいています。
デジタルマーケティング事業(事業内容)②
次は、メディア事業です。昨年年末に買収してグループ入りした、ドゥ・ハウスという会社についてです。こちらは、日本最大級のサンプリングメディアであり、会員数が約100万人存在しています。こちらのサイトを通じて、年間のサンプリングとしては約120万件の配布を行っています。
年間150社、600商品以上を紹介しており、食品メーカーや消費財を提供している会社が口コミを集めて、まず初期の販売をブーストしたり、もしくは実際のトライアルを行います。そして、実購入に結び付けたいというかたちで、初期のブーストをするためのメディアになります。こちらに関しては、日本最大級のSPメディアを保有しています。
デジタルマーケティング事業(事業内容)③
次は、ネット広告事業の領域になります。先ほどお伝えしたとおり、リサーチ会社ならではのネットワークを組んでいます。約800万人に対して、いわゆるメディアのアライアンスを組んでいます。リサーチデータの収集も含めて、約2,000項目の詳細なプロファイルデータを保有しています。
消費者の行動において、プロファイルに基づいた詳細な配信ができるということで、非常に競争力のある商品に仕上がっています。
データマーケティング事業(事業内容)
次は、データマーケティング事業です。こちらは、先ほど口頭でお伝えした、私たちが保有している自社パネルになります。電通グループのCARTA HOLDINGSと合弁事業になっています。こちらを通じて、自社パネルとしては約224万人、提携パネルを含めて約246万人で、業界最大級の約470万人のアンケートパネルを保有しています。
先ほどお話ししたとおり、通常のプロファイル以外に、さまざまなユーザー行動履歴データやアンケート結果の項目があり、同様に2,000項目くらいのデータベースを保有しています。
より効率的に、いわゆる消費財メーカー、耐久消費財メーカーを含めた、消費者と接点がある会社のマーケティングデータの基礎収集として活用しています。日本国内だけにおいても年間1万以上の案件調査を取り扱っているということで、業界最大級の実施実績になっています。
インサイト事業(事業内容)①
次にインサイト事業です。こちらは日本のみならず、世界11ヶ国に拠点を構えており、主たる拠点はUSです。欧州はイギリスに、アジア圏内は大体9ヶ国に展開しています。私たちの狙いは、日米欧のグローバル企業が、次の主戦場であるアジア大陸でマーケティングデータを収集できるよう、調査インフラを整えることです。
こちらを活用するかたちで、総合的ななマーケティングリサーチのサービスを提供しているのがインサイト事業です。
インサイト事業(事業内容)②
近年はDX化の流れがあるとはいえ、消費者の行動はデジタルだけでは測れない部分があります。食品メーカーの味覚テストや実際のパッケージテストなど、見て触って体験してもらわなければわからない調査も数多く存在しています。そのため、引き続きデジタルでは代替できない領域にもインフラを保有しています。
グループインタビュー業務や海外におけるコールセンターを含めて、年間業務実績はインタビューだけでも1,300グループあります。会場調査もほぼ毎日行っている状態で、年間業務実績は360本にのぼります。デジタルだけではなく、総合的にマーケティングのコンサルティングサポートをするために、このようなインフラも保有しています。
インサイト事業(事業内容)③
当社では、インサイト事業の根幹を支える、時系列のデータベースを保有しています。30年間、消費者を継続してトラッキングしており、長期にわたる活動動態変化をきっちり自社データとして抑えています。
こちらを活用することによって、それぞれの案件ベースでの生活者の理解を進めるだけではなく、過去を遡ってどのような差が出てきたかを統合的に分析できるようなデータベースも保有しています。
直近では新型コロナウイルスの影響がありますが、新型コロナウイルス発生以降に21回と、毎月にわたるトラッキング調査も実施しています。そのデータは行政にも提供しており、実際コロナ禍における生活者の変化についてのデータベースも保有して配信しています。
Executive Summary
これらの事業概要を受けて、2021年6月期の通期連結決算概況の概要をご説明します。
前提条件として、今年は決算期変更を行っており、例年であれば1月から12月が決算でしたが、今年は半年に決算期変更しているため、1月から6月の実績です。すなわち、半期実績での決算ということです。
まず、ポイントをご説明します。1月から6月の累計業績は過去最高売上・過去最高利益を計上しています。売上高は前年同期比で約140パーセント、経常利益は前年同期比で約600パーセントに達しています。
当然、昨年の1月から6月は、新型コロナウイルスの発生初期から緊急事態宣言という流れによる大きな影響もありました。これらの影響を受けながら、まず業績をV字回復させたということと、その過程の中で、特にデジタルマーケティングの領域など、新規事業も数多く種を蒔いて拡充に成功したということがあります。
また、海外での大型案件の計上と、各拠点の固定費削減等を進めて、1月から6月の累計でKadenceグループ全体の黒字化を達成しています。というのも、みなさまも昨年の状況をご存じだと思いますが、海外のほうが日本以上に新型コロナウイルスの影響を受けました。数多くの先進国、新興国において厳しいロックダウンが行われたこともあり、調査業務全体がいったん停止となっていました。
しかし、今期の1月から6月はその影響も緩和されて、実際に調査も再開できています。昨年は海外の事業部門は赤字計上していましたが、V字回復させることができ、1月から6月の段階で黒字化を達成しています。
今後に関しては、デルタ株の影響もありますが、引き続きトレンドは回復過程と見込んでいます。
これらの結果を受けて、2021年1月から6月の間で、第1四半期で1回、期末配当予想の上方修正を行いました。決算期末でも配当予想を0.3円上方修正し、結果的には4円で、投資家のみなさまに還元を行う予定です。
連結決算概要(2021年1月~6月)
これらを踏まえて、実際の数字面をご紹介します。セールスプロモーションメディアであるドゥ・ハウス社の新規連結寄与と海外黒字化もあり、1月から6月の6ヶ月間の業績は過去最高売上と利益を計上しています。前年同期比で、売上高は77億円から107億6,000万円となり、139.7パーセント、営業利益は1億7,000万円から10億1,000万円となり、607.5パーセントとなっています。
昨年の1月から12月の通期実績の営業利益さえも半期で稼ぎ出すような体質の強化と、新規事業の創出が行われた1月から6月になったのではないかと考えています。
21年6月期営業利益差異(前年同期比較)
これらの営業利益に対する影響をご説明します。日本では昨年4月に緊急事態宣言が出されましたが、そこから急速な経営体制の強化を行いました。コストダウンするところはコストダウンし、リモートワークを導入すべきところは導入し、海外拠点に関しても閉鎖するところは速やかに行うということで、一気に調整に入っています。このようにスピーディに対策を行えたことも、利益を生んだ1つの大きな要素です。
また、データマーケティング事業は、海外事業を除いて外注費削減を含んだ変動費の削減を行いました。一方で、コロナ禍で人の接触がある従来型の調査がデジタルにシフトしたこともあり、その分、ネットリサーチ比率が上がったため、利益率の改善も見られています。それらも含めて、前年同期比で3億9,000万円の増益効果が発生しました。
海外は先ほどの説明どおり黒字化で、大幅な固定費の削減と、経済動向の回復も含めて調査が再開できるようになったこともあり、インサイト事業は海外も含めて前年同期比で2億3,000万円の増益です。
また、デジタルマーケティング事業は全体の好調を受けて、粗利増に伴いプラス1億4,000億円です。
その他として、4月以降は会社の固定費削減に努めています。主たる理由として海外従業員の減少、日本本社スペースの20パーセント削減などがあり、リモートワークに対応したコスト削減を実施しています。これらを通じて、プラス1億6,000万円の増益効果が発生しました。
一方で、投資すべきところには積極的に投資しようと考えています。デジタル広告を中心に販促費を増加させることと、ドゥ・ハウス社を含めて、自社メディアの会員数増加策をとることを狙いとして、6月にテレビCMを実施しています。これらを含めて将来の収益確保も見込み、1億5,000万円の投資を実施しています。
また、新規連結になったドゥ・ハウス社の影響で、半期で7,000万円増益となったこともあり、これらの複合結果によって、営業利益が10億1,000万円まで到達しました。昨年に比べて減らすところは減らして効率化を進め、投資すべきところは投資した1月から6月であり、決してコスト削減要素だけでの増益ではないことをご理解ください。
2017年以降の1-6月の業績推移
これらを受けて、1月から6月の累計業績予想は過去最高売上・利益となり、前年同期比77億円から107億6,000万円へと伸びています。成長率としては、前年同期比で売上高が139.7パーセントで、営業利益が607.5パーセントとなっています。
デジタルマーケティング事業①
次にそれぞれの事業セグメント別の状況についてお話しします。まず、デジタルマーケティング事業です。デジタルマーケティング事業全体に関しては、コロナ禍の影響もありましたが、比較的産業として順調に推移した期になりました。また、ドゥ・ハウス社の新規連結寄与もあり、既存の事業会社の2ケタ増収を含めて、売上・利益ともに大幅に増加しています。
売上高は前年同期比21.2億円だったものが倍増の43.5億円です。半年間で達成してきていることで、このセクターは前年同期比206パーセントでした。
営業利益についても、先行投資を乗り越えながら、177パーセントという結果になっています。グループ全体としての主力事業であるデジタルマーケティング事業が、大きく進捗した半年であったと思っています。
データマーケティング事業①
次に、データマーケティング事業です。こちらに関しては、まずV字回復させ、営業利益をきっちり上げる体制を作っていき、筋肉質にしていくことを施策の中心として行いました。
また、調査比率に関しても、ネットリサーチ比率が上昇し、粗利率が向上しました。そして、全体の組織のDX化も含めて、生産性の改善等により、利益は堅調に推移しています。また、セグメント利益も前年比218パーセント、10.6億円と、大幅に改善することができました。
こちらの進行期に関しては、筋肉質な状態がキープされつつ、増収効果が出てくるとご理解いただければと思います。
インサイト事業①
次にインサイト事業です。こちらもデータマーケティング事業と同様です。国内外ともにコロナ禍の影響で、顧客獲得の推進が緩んでいました。しかしこれが進んできていることと、ネット系のマーケティングリサーチのサービスに切り替えが進んだことによって、業績が回復しました。その結果、粗利率や生産性も向上しました。
こちらも、売上高に関しては、前年同期比112パーセントまで回復してきています。営業利益に関しては、前年同期比222パーセントで、筋肉質な体質強化がだいぶ図られました。
デジタルマーケティング事業②
次に、2021年1月から6月において、どのようなことが行われたのか、ご紹介したいと思います。まず全般として、事業全体は大きくデジタルマーケティング事業のサービス拡充を図ってきた半年になっています。
最初は、D&M社とサイカ社との取り組みについてです。一緒にテレビCMの空き枠販売をスタートしました。こちらに関しては、当社が保有するデータサイエンスの技術を活用して、より効果的な広告枠の販売・提案を行うことで、広告効果を最大化させていくサービス設計になっています。
データマーケティング事業②
近年、メディアのコミュニケーション主体として「LINE」が活用され、若者を中心にコミュニケーションが活性化されています。そこで、マーケティングリサーチ会社として、「LINEリサーチ」のオフィシャルパートナーにも認定されています。
自社パネルのみならず、「LINE」の会員さまを活用することで、特に若年層を中心とした幅広い調査が可能になっています。インターネット調査の弱点であった、若年層調査に対しても補完している関係性の中で、ネットリサーチにおけるサービス拡充も図っています。
デジタルマーケティング事業③
次に、クロス・コミュニケーション社を通じて、「SPACESHIPS ~D2C BREAKTHROUGH PARTNER~」というサービスを提供開始しています。こちらに関しては、近年コロナ禍も含めまして、D2Cビジネス、EC市場が昨年来かなり成長してきています。
これらも含めて、当社が保有しているノウハウの結合として、消費者調査に始まり、デザイン・実際のシステム開発・ブースト活動ということで、広告メディアのプロモーション提供、CRMの分析を行っています。これらを一貫して、トータルパッケージとして提供していこうと、「SPACESHIPS」と名付けて、積極的な拡販に入っています。
こちらに関しては、弊社ならではということで、総合マーケティング会社としてリサーチ機能を内在化しており、システム開発ができる事業グループ会社があります。また、広告領域においても専門の事業会社を有しているため、初めて一貫してトータルプロデュースできる状態になりました。こちらに関しても、積極的に拡販に入っていきます。
デジタルマーケティング事業④
また、マーケティング会社ということで、自社で実証実験をしながらよりよいサービスを作っていくため、D2Cブランドを買収し、運営を開始しています。
お客さまの事前実験的な要素もあり、アクセサリーや女性向けファッション、ビジネスカジュアル的なD2Cのサイトとなります。こちらを運営し、ノウハウを蓄積し、トライアルしたものを、お客さまによりよいかたちで出していく名目で立ち上げました。
デジタルマーケティング事業⑤
メディア事業において、D&M社とドゥ・ハウス社の共同で、9月から開始となる「チャレモール」を作っています。近年、月額課金型のサブスク的なD2Cビジネスの領域がかなり拡充されており、そちらの拡販を図るため、ECモールを立ち上げ、拡販しています。
こちらの優位性に関して、当社はすでに会員数100万人の「モラタメ」というメディアを保有しており、800万人の自社ネットワークがあります。早期の立ち上げが可能と考え、こちらに関しても、セールスプロモーション機能の強化として取り組んでいます。
インサイト事業②
当社が保有しているデータベースについてご説明します。インサイト事業において、過去の蓄積データにおいて、ネットや特にBIツールを通じて外部への提供を考えています。30年間の生活者データ「CORE BI」を作り、外部から自由にデータを見られるかたちで、サービスを提供しています。
2022年6月期連結業績予想
これらの結果を受け、2022年6月期の業績予想は、グループ全体におけるDX/デジタルシフトへの取り組みを推進し、後ほど発表する中期経営計画で、売上高300億円達成に向けて、過去最高売上・最高利益を目指します。
売上高は、通年決算で約230億円です。デジタルマーケティング領域に関しては約100億円で、主力事業として拡充していきます。データマーケティング事業が70億円、インサイト事業が60.4億円、営業利益は19億円を予定しています。
株主還元・配当金額
株主還元および配当金額についてご説明します。2021年6月期の期末配当を0.3円増配し、4円の配当を予定しています。2022年6月期の年間配当金に関しては、通期で配当金8.2円(中間4.1円、期末4.1円)と増配を予定しています。
基本的な配当方針の考え方は、配当による株主還元を安定的に継続していくため、今後の事業投資の計画などを鑑みながら、事業拡大とともに、原則配当性向15パーセント前後を目安に継続的に増配する計画です。
足早ではありますが、2021年6月期の通期決算についてご説明しました。引き続き、中期経営計画についてご紹介します。
会社概要(2021年6月末時点)
当社は、決算発表と同時に、中期経営計画「DX Action 2024」について、3ヶ年計画、3ヶ年のゴールを開示しています。こちらについてご説明します。
まずは、あらためてグループ概要をご紹介します。株式会社クロス・マーケティンググループは、創業2003年4月1日、本年度で18年経った企業グループです。連結子会社は31社、従業員数は1,354名です。国内の人員が843名、海外の人員が511名おります。
代表取締役紹介
次に、私の経歴を含めて自己紹介します。私は1973年生まれで今年48歳になります。「どのようなかたちでビジネスキャリアをスタートさせたのか」というと、当時、非常に珍しかったベンチャーキャピタルという業界に新卒で入社しました。
1990年代のベンチャーキャピタル業界は、まだインターネット産業が立ち上がってくる手前の時期でした。私は投資担当者として、流通からフランチャイズビジネス、半導体まで、幅広い業界に対して投資活動を行いました。また、投資活動を通じて2,000名を超える経営者と会い、IPO支援も含めて活動してきました。
その後、インターネット・バブルの背景もあり、2000年を契機にベンチャービジネスのインターネット企業を立ち上げ、役員に就任しました。その後、29歳でクロス・マーケティングを設立し、合計で22年間、企業の役員としての経験があります。
また、事業経験に関して、ネット・バブルの崩壊からリーマンショック、東日本大震災、コロナ禍と、4回ほど大きな経済変動を乗り越えながら会社の業績を伸ばし、それに応じた対策を適宜打ってきました。経験年数に見合った実績をご理解いただけると思います。
今は東証一部上場企業の経営をしていますが、外部の要職として、オンライン英会話の東証一部上場企業の株式会社レアジョブの社外役員、業界団体の一般社団法人日本マーケティングリサーチ協会の副会長を務めています。
企業理念
企業の全体的な方針についてお話しします。2019年12月期、新型コロナウイルスの影響が始まる前にグループが全体で約30社になり、「グループ全体の方針を一本化していこう」「総合マーケティング会社としてのあり方を、ビジョンとしてきちんと掲げていこう」ということで企業理念である「未来をつくろう。」を策定しました。
私たちの本質は、消費者データを含め、消費者の意見を取り込みながら未来をつくっていき、意思決定支援をすることです。これらを含めて、「未来に対して自分たち自身も挑戦していく」「お客さまの挑戦を支えていこう」ということで「未来をつくろう。」のクロス・マーケティンググループのミッションを進めています。
クロス・マーケティンググループとは
グループの概要についてご説明します。先ほどご紹介したように、データマーケティング事業で消費者のデータ収集を行い、近年は消費者アンケートのみならず、POSデータ・CRMデータと結合させながら、マーケティングのファクト収集をしています。
それをインサイト事業を通じてコンサルティングし、マーケティング課題の抽出・提言を行います。実際にデジタルマーケティング事業において、それをデジタル領域の市場で実行支援まで徹底的にサポートを行い、PDCAサイクルを回すことを、グループ全体としてサービス提供しています。
事業の変遷
中期経営計画の基本骨格についてご説明します。もともとネットリサーチで創業した会社が、総合マーケティングリサーチ会社になり、近年はマーケティングソリューション、総合マーケティング会社としての業態構築を行ってきました。
ここから3年間は「マーケティングDXソリューション」として、マーケティングのみならず実行支援まで総合的にトータルサポートをDXの中において推進していきます。
グループ全体としても「マーケティングDXソリューション」を掲げ、グループで一丸となって進んでいく方針です。当然、こちらの事業の変移は、私たちの会社の基本方針「成長を追求していく」ことも含めて、事業領域の拡充を積極的に行ってきました。
業務経験がない領域に関しても、周辺領域かつ市場ポテンシャルが大きいところは自分たちで自己変革を行ってきました。過去を含めると、約11社のM&Aを行っており、より大きな市場、成長ポテンシャルがあるところに進出していく気構えでビジネスに取り組んでいます。
主要な事業展開 及び 実績推移
主要な事業展開及び実績推移に関してはスライドのとおりです。2008年のリーマンショックの時に、会社が東証マザーズに上場したわけですが、その時の売上高が27億円になっています。
現時点で、進行期において約300億円の売上を目指す会社まで来ています。そちらに至る課題は、先ほどお伝えしたとおり、ネットリサーチ会社から総合マーケティングリサーチ会社、そしてクロス・コミュニケーションを含めたITソリューション事業会社の買収、海外展開です。
近年はネット広告事業の自社での立ち上げ、ネットメディアの買収などを行いながら、積極的に事業領域の拡充を行ってきました。
当社グループの強み
もう一度、当社のグループの強みを確認します。当社のグループの一番の強みは、やはり消費者データを大規模に保有しており、それをハンドリングできる会社であることです。ファクトに基づいて、マーケティング提言をしていくことができます。また、マーケティング実行支援に関しても、外注よりもフルラインで内製化されたかたちで有機的にソリューションとして提供できることが強みです。
そのため、創業以来、「マーケティングリサーチ会社」というイメージが強かったのですが、すでにDXカンパニーとして、最大の事業セグメントの売上規模がデジタルマーケティング事業にシフトしています。また、進行期においても、売上高100億円ということで、最大の売上高セグメントに変更します。
また、売上高100億円の規模に関しては、そちら単体でも上場できる規模のマーケティング事業になるため、そのくらいの資産を有している企業グループであるということです。
長期ビジョン
長期ビジョンに関しては、このようなかたちで整理をさせていただいています。スライドの中央に、マーケティングリサーチの会社としての一番の肝である、消費者理解について、「Whyの解明」と書かれています。そこを起点に、広告やマーケティングリサーチ、その他システム開発などのファンクションを通じて、いろいろなサービスに対して昇華させていきます。こちらを「マーケティングDXソリューション」というかたちで、総合的にプロデュースしていくことが、今回の中計の一番の骨子になっています。
国内DX市場の将来予測
外部環境です。国内DX市場の将来予測は、エリアを通じてかなり発表されていますが、非常に大きく伸びていく市場であると認識されています。2019年度から2030年度にかけて3.8倍、約3兆円市場に到達するということで、非常に有望な市場になっています。
デジタルD2C市場規模推計と予測
また、当社の「SPACESHIPS ~D2C BREAKTHROUGH PARTNER~」を含めて、デジタルD2C市場・EC市場に対してのソリューションサービスとしても、市場規模の推計と予測に関して、2025年まで2015年比の2.3倍、約3兆円まで市場が到達すると言われています。こちらの市場に関しても、引き続き強いニーズがあります。
国内リサーチ市場の市場規模推移
一方、国内リサーチ市場の市場規模に関しては、安定成長をしています。昨年は新型コロナウイルスの影響があり、2,200億円まで、約100億円減少していますが、2019年は約2,300億円まで到達しています。進行期を含めて、前年比から回復してきているということで、急成長ではないのですが、安定成長をしている市場です。
ESOMARによるリサーチ市場の定義変更と世界のインサイト市場規模
また、マーケティングリサーチ産業には海外のESOMARという団体があります。こちらはヨーロッパの市場調査業界で、昨年、従来のマーケティングリサーチ市場の定義変更を行いました。インサイト産業、インサイト市場というかたちで定義変更を行っています。
これはどのようなことかと言うと、以前はいわゆる消費者アンケートから発生するものが、マーケティングリサーチ市場と定義付けされていました。しかし最近は、「Salesforce」や「Adobe」などのCRMツールがそうなのですが、顧客データ理解ということで、テック系の企業も消費者理解という産業に参入してきています。
そのような意味では、マーケティングリサーチ産業自体も概念拡張、いわゆるテック系のことも含めて総合的に変わっていかなければいけないということで、「テック+マーケティングリサーチ産業」を総称して、インサイト産業というかたちで区分変更を行っています。
これらも含めて、逆に私たちも新規参入余地があり、インサイト産業という区分変更が行われることによって、従来型のグローバルのマーケティングリサーチ市場の5.2兆円を概念拡張した結果、約10兆円と従来比プラス5兆円の大きな市場に変更します。
そのような面で、従来型のマーケティングリサーチ会社もテックの技術を活用することで、より大きな成長産業に対して市場進出が可能となり、非常に着目している市場です。
中期経営計画の指針
中期経営計画の概要に関しては、冒頭にご説明したとおり、基本指針として「マーケティングDXパートナー」を推進していきます。
中期経営計画数値目標
中期経営計画数値目標の1つの到達点として「Triple Three」を銘打っています。時価総額は、2021年6月末の137億円から300億円に引き上げ、グループ連結売上高は190億円から300億円に引き上げ、連結営業利益は18億円から30億円に引き上げます。これら3つの目標をこの3ヶ年で達成しようと考えています。
中期経営計画の位置づけ①
中期経営計画の根幹について、重複してご説明していますが、グループ全体としてDX活動をすべての事業領域で行っていきます。「DX Action」を軸に将来の更なる飛躍への土台を作っていく3ヶ年になります。
中期経営計画の位置づけ②
中期経営計画の位置づけに関しては、「Stage3 成長期」に入っています。「DX Action」として、グループの資産を土台にデジタルDX領域の強化を軸に更なる飛躍を目指します。
また、自社が保有しているパネルデータは、自社パネル約500万人、提携パネル約800万人ありますが、これらのデータベースインフラを活用し、自社が保有するシステム開発能力、データサイエンティスト的な要素を持ち併せるリサーチャー約300名体制の育成を活かしたかたちで、3つの主力の事業分野に対してグループ共同であたっていく活動を中心に行っていきます。
グループの資産・インフラ基盤
今お話ししたことは、スライド下段にあるとおり、グループ全体の営業基盤として5,000社、約7万2,000窓口の法人取引があります。こちらに関してクロスセルを徹底的に行っていき、データベースを活用していくかたちで成長を加速させていきます。
各セグメント施策及び数値目標
3年後の数値目標についてご説明します。デジタルマーケティング事業に関して、2021年の売上高68億円を120億円へ引き上げ、データマーケティング事業に関して、65億円から80億円へ引き上げ、インサイト事業に関して、59億円から70億円へ引き上げ、新規事業/M&Aの売上高は約30億円を想定しています。
そして記載のとおり、グループ全体として、それぞれ細分化したDXの推進を行っていく施策を順次活用しています。
新規事業開発方針
新規事業開発方針に関して、M&A以外は自社内サービスとして小規模な新規事業を複数立ち上げながら既存事業の成長とともに、グループ全体で事業の成長を牽引するサービスを開発していきます。1件あたり3,000万円前後を目安にフィジビリティスタディを高頻度に実施する事業方針で、「小さく生んで大きく育てる数を増やす」ことを基本方針としています。
過去の新規事業の取り組み実績について紹介します。今年、年間売上は約25億円ですが、「Data and Marketing」というネット広告ビジネスに関して、自社内立ち上げのサービスをスモールスタートで始めました。
その他、「NETSHOP FACTORY」「karada Laboratory」、セルフ型アンケートツール「QiQUMO」をスモールスタートさせながら、次の大きな事業分野になることを期待してサービスを開発しています。
M&A戦略
M&A戦略についてご説明します。グループの今後の成長に必要なビジネス領域に関して、積極的にM&Aを含めた投資を検討していくことで、各領域ごとにサービスメニューの拡充やネットワークの拡大強化、サービスの質の向上を目指します。
実際グループ内において、現在、現金約50億円を保有しています。毎年営業キャッシュ・フローでしっかり稼ぎ出せている部分も含め、成長資金として活用していきます。
グローバル戦略
グローバル戦略に関しては、まず1月から6月に景気が回復してきている状況があります。当然アフターコロナの景気回復過程では、日米欧のグローバル企業がまたマーケティング活動を積極推進していくこともあり、グローバルにおけるグループネットワーク拡大強化のタイミングを図っています。
今非常に回復過程にあるのが、やはりUS市場です。USはApple支社も含めてグローバルIT企業が非常に業績を伸ばしていることもあり、グローバルマーケティングのニーズが非常に高まっているため、短期的にはUSの強化を図っていきます。
そしてその後、未展開領域ということでアジアを、そしてさらには欧州をターゲットとしています。UK以外の欧州領域も、市場の成長タイミングを見計らいながら参入することを検討しています。
人材戦略
次に、人材戦略とSDGsについてご説明します。当社の基盤は、当然データベースです。モニターも含めたデータベースもありますが、最終的にはそれを活用する人材も、スペシャリストとして確保する必要があります。
それらも含めた人材戦略として、人材の育成強化への積極的な投資を行います。リサーチャーからのデータサイエンティストの育成強化に加え、エンジニアの拡充も考えています。これらを総合的に行うことで、事業基盤の強化を図っていきます。
SDGsへの取組み
SGDsの取り組みも順次検討しており、現時点で当社が提供しているSDGsについてご説明します。マーケティングリサーチならではの、世の中の状況を広くいろいろな方々に届けていくことや、新型コロナウイルスの調査も含めて、いろいろな生活実態調査を発表しています。このような各種SDGs領域に関して、順次自分たちが提供できることを拡充していく予定です。
株主還元施策
次に、資本政策等です。こちらは先ほどお話ししたとおり、配当性向の15パーセントを目安にしながら、安定した配当政策をとっていきます。
プライム市場上場維持基準適合へ向けて
また、プライム市場上場維持の基準適合へ向けての取り組みについてです。こちらは8月に通知を受けていますが、今不足しているのが「流通株式時価総額のみ」で、それ以外の基準はすべて満たしている状況です。
これを受けて、今の業績の成長も鑑みながら、プライム市場残留に向けて各種施策を打っていくことも含めて、より一層企業価値の向上に努めます。それだけではなく、積極的なIRやコーポレートガバナンスの一層の充足等の施策を打つことで、こちらの基準を達成していこうと考えています。
カルチャー・風土
次に、カルチャー・風土についてです。当社は2019年に、新しく「Culture Book」を作成し、約30社を束ねていくものというかたちで配布しています。ビジョンは「Just go for it ! やればいいじゃん!」ということで、ベンチャー精神で前向きに新しいことへ取り組んでいく姿勢を表現しています。
そして、その他各種行動理念や、管理職向けのナレッジやスタイルなど、いろいろなものを拡充しています。こちらは詳細を割愛しますが、後ほどの資料をご覧いただきたいと思っています。
以上、足早でしたが、ご説明いたしました。
質疑応答:中期経営計画の資本政策について
質問者1:中期経営計画のところで1点ご質問です。資本政策のところで、株主還元の施策についてはご説明がありました。投資と還元のバランスというところでいくと、投資については、ご説明があったM&Aも投資の1種なのかと思います。
しかし、それ以外に金額的にここまでいかないのかも知れませんが、投資については、先ほど人材育成に関しても投資するというお話がありました。そのため、何か少し補足で、このような部分も投資として考えていることがあれば教えてください。
五十嵐:こちらは大きな投資ではありませんが、日々継続して行っていく投資として、人材開発の投下をします。そして、グループ基盤であるシステム開発に関しては、毎年1億円くらいを経常的に投下して大規模なシステム開発を継続して行っており、その費用は原価・販管費の償却費負担として計上しております。
それ以外に関しては、適宜業績動向に応じたかたちで広告宣伝費の増額を行います。昨期は非常に好調な結果も受けて、ドゥ・ハウス社のテレビCMも含めて取り組んでいます。こちらに関しては、将来収益の確保ということも含めて、機動的な判断を行っていきたいと思っています。
質問者1:1つ確認です。もちろん環境もあると思いますが、M&Aは明確にこの中期経営計画で行い、それ以外は、システム活動支出が年々少しずつ減価償却という意味では増えていき、人材開発も少し意識して取り組んでいくのでしょうか? また、広告宣伝は、今お伝えしたように適宜判断して変動していくということでよろしいのでしょうか?
五十嵐:はい、おっしゃるとおりです。
質疑応答:今後提供するサービスがどのように変わっていくのかについて
質問者2:1、2点おうかがいしたいです。中期経営計画の中で、事業展開が変わっていくというお話があったと思います。これから戦う競合や提供するサービスがどう変わっていくのか、もう少し詳しく教えていただけないでしょうか?
五十嵐:まず、既存事業に関しては、マーケティングリサーチ市場が約2,000億円ということで、非常に安定成長していますが、大きな成長が見込める市場ではありません。こちらには、筋肉質にキャッシュフローが生まれる状態を作っていくということで、既存事業に関しても、競合は変わりません。
一方、デジタルマーケティング事業は、当然ネット広告代理店や、EC支援をしているメンバーズ等も競合になってきます。上場企業でいくと、Orchestra Holdings等です。いわゆる、デジタルマーケティングをSIの立場から支援している会社も競合になっていくかたちです。一方、伸びが非常に大きな市場であることも含めて、参入機会が非常に大きいと思います。会社の軸足としては、こちらを中心に事業戦略を組み立てていくかたちで意思決定をしています。
質問者2:プロダクトという意味ではどのように変わっていくイメージなのですか?
五十嵐:基本的に、プロダクトというかたちでは、すでに金融機関向けのアプリ開発も含めて、中間的なアプリケーションを保有しています。また、メディアに関しても、ドゥ・ハウス社を含めて、大規模な既存メディアのインフラが整っています。こちらをサービス拡充、横展開していくことによって、より広範囲にしていきます。
また、D2C市場に関しても、すでに受託開発実績として、大規模なECサイトを運営しています。こちらをマーケティング的な視点で、サービスとして結合し、トータル的にアウトソーシングの全体的な実証活動を行っていきます。
基本的に国内であり、海外においてはマーケティングリサーチの拠点になるため、その他の事業は取り組んでいません。
質疑応答:デジタルマーケティングに影響する情報の質について
質問者3:1点だけおうかがいします。調査において、オンライン比率を高めたため、さらに高めていくというお話があったと思います。オンラインの調査が増えると、情報の獲得効率は上がりますが、定性的な情報とはとれないため、調査の質が変わってくるかと思います。デジタルマーケティングにその影響が出てくると思うのですが、どのようにお考えでしょうか?
五十嵐:すでに業務インフラとしては、定性的な情報をとれるように成立しています。一方、お客さまのニーズは変わってきており、やはり定性的なデータでも、オンラインを活用したインタビュー、もしくはSNSを含めたかたちでの定性的な情報分析のほうに次第にシフトしています。
そのようなかたちで、従来、絶対対面で必要なマーケティングリサーチが、DX化の流れを受けて、手法としては採用していますが、手段が変わってきているということです。そのため、実際グループインタビューの件数も、オンライン化比率は上がったことを含めて、実施件数は減っていません。