レジ袋を詰まらせて窒息死する海鳥、漁網を飲み込んで死ぬクジラ、プランクトンと間違えてマイクロプラを食べる魚、鳥や魚の胃から発見されるプラ片など、本書は大量のプラごみが海洋を汚染し、海洋生物の大量死につながっている危機を生々しく伝えた警告書といえます。

このマイクロプラの主な発生源は、海洋に流れ出たレジ袋、コンビニの弁当箱、ペットボトル、漁業用のブイや漁網、発泡スチロールなどのプラごみです。それが波などの機械的な力および太陽光(特に紫外線)によって劣化崩壊し、5mm未満のプラ片や粒子になったものを指します。

そして我が国は、1人当たりのプラスチック容器包装の廃棄量が米国に次いで2番目に多いとされているのです(UNEP国連環境計画報告書「Single-Use Plastics: A Roadmap for Sustainability」2018年)。リサイクルの仕組みや手法も進化してはいますが、海に流れ出してしまったプラごみがあることを示す調査があります。

マイクロプラ汚染。海は使い捨て社会のゴミ捨て場

今年(2021年)3月下旬、房総半島沖約500キロの水深6000メートルの海底で大量のプラごみが見つかったと、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究チームが発表しました。

プラごみの密度は、1平方キロメートルあたり4561個。大量のポリ袋のほか、風船、歯磨き粉のチューブ、昭和59年に製造されたチキンハンバーグの袋も見つかるなど、自然界で分解されず、環境中にいつまでも残り続けるプラごみの厄介さを改めて感じさせます。

また、多摩川河口のハゼ、貝類、蟹などの生物からマイクロプラが検出されたり、鎌倉の海岸では2018年、死んだシロナガスクジラが打ち上げられ、その胃の中から大量のプラごみが見つかったこともニュースになりました。

さらに、プラごみにはプラを柔らかくして加工しやすくする可塑剤(食品用ラップフィルムが柔らかい理由)、紫外線でプラが壊れないようにする紫外線吸収剤、燃えにくくする難燃剤などの添加物が広く使われ、それらの中には、環境ホルモンと呼ばれる種類の化学物質が含まれます。

こうした添加剤が食物連鎖を通して人類にまで影響を及ぼすことを懸念する声もあります。マイクロプラスチック汚染の研究者である東京農工大の高田秀重教授によると、海鳥が食べていたプラスチック片から、紫外線吸収剤や臭素系難燃剤などの添加剤が検出されたといいます。

また、こうしたプラスチックから添加剤が移行して、海鳥の体内に蓄積することはすでに確認されているため、上記の結果とあわせて、食べたプラスチックから溶出した添加剤が、海鳥の体内に蓄積する実態が明らかとなったとされています。

環境ホルモンを溶出するプラスチックを、海洋生物が食べることによる漁業資源への影響も懸念されるところです。