SmartNews社の件は何が問題だったのか

では、厚生労働省も適法としている行為で、渋谷区もバックアップしていた「5000人への職域接種」になぜ批判が集まってしまったのでしょうか。私見ですが、鈴木健CEOの「炊き出しの精神」発言が迂闊だったように思います。

「炊き出し」という言葉は「困窮した状況下にある多数の人を対象として、料理やその他の食料を無償提供する一連の行動」を意味します。

スマートニュース社が自費で調達したワクチンを無償提供する場合はかろうじて「炊き出し」に当てはまるかもしれませんが、ワクチンは公費での接種となり、企業側の費用負担はありません。企業が負担するのは「会場レンタルにかかる費用」です。

したがって、スマートニュース社が行ったのは「ワクチンを打つための場所を自費で準備した」というのが正確な表現でしょう。また、「炊き出し」という言葉には、渋谷区の近隣住民を「困窮した状況下にある多数の人」と見なす「上から目線」がぬぐい切れません。

それ以外の要素は「発表のタイミングが悪かったせい」と言ってよいと思いますが、「良いことをしている」という確信があるときほど、迂闊な言葉遣いをしてしまうことがあります。この言葉の選択ミスについては、我々も油断すると陥る可能性があるものです。本件を反面教師として、私自身もより慎重に言葉を選びたいと思います。

参考資料

當瀬 ななみ