2021年7月17日に行われた、株式会社メニコン 個人投資家向けIRセミナーの内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社メニコン 代表執行役社長  田中英成 氏
フィスコ マーケットレポーター 高井ひろえ 氏

個人投資家向けIRセミナー・講演会

田中英成氏(以下、田中):本日はオンライン開催のため、参加者の表情などがわからず、「お話ししていることを理解していただいているかどうか」などの感覚をつかむことができません。そのため非常に難しく、少しギクシャクしたご説明になるかもしれませんが、さっそく進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

今日は、一般の投資家のみなさまに、メニコンについてよく理解していただくために、昨年度の業績や今後の成長戦略、またメニコンの歴史など、いろいろなことを織り交ぜながらお話をしたいと思います。

2021/3期通期連結業績・2022/3期業績予想

昨年通期の連結決算は、スライド中央にあるとおり、売上高・営業利益ともに過去最高となりました。成長率としては、売上高は前年比2.0パーセント、営業利益は前年比15.3パーセント伸長しました。

新型コロナウイルス感染拡大中の1年から2年の間、大きな影響を受けるかと思いましたが、おかげさまでその影響から早く脱出でき、このような業績を上げることができました。

我々を応援してくださる投資家のみなさまのご支援に加え、それに応えようとする社員たちの努力により、このような業績につながったと考えています。さまざまなステークホルダーのみなさまに感謝申し上げます。

今期、2022年3月期の着地も過去最高益を予想しています。伸長率としては売上高が前年比15.1パーセント、営業利益が前年比11.0パーセントと、かなりアグレッシブかつチャレンジングな数字とも思えますが、「これくらいがんばらないといけない」という意気込みで、今年も進んでいきたいと思っています。

配当

田中:配当についてですが、今年は普通配当30円に加え、記念配当5円で、合計35円とさせていただきました。

記念配当については、実は弊社は今年が創業70周年のため、それをみなさまにも知っていただき、70年の歴史に感謝するということで設定したものです。そこで、今年の配当は35円で決定しました。

株価推移

田中:スライドにあるグラフは、メニコンの株価の推移です。途中で株式分割をしていますが、このように右肩上がりとなっています。かなり堅調に上がっており、現在は8,000円を窺う状況です。

株価形成については、世の中の経済の動きやコロナ禍もあるため、当然「何が起こる」と約束できるものではないですが、さらに伸ばしていくための経営努力を鋭意続けていきたいと考えています。

1951年創業

田中:70周年とお伝えしましたが、ここから少し歴史についてお話しします。スライドの写真右側に写っている男性は私の父で、弱冠20歳の時のものです。左側の女性はアメリカ軍の将校のご婦人とうかがっており、ご主人は大尉だったのではないかと思います。

この写真がどこで撮られたものかと言いますと、戦後の父の就職先である、名古屋市の中心の栄にあった「玉水屋」という老舗の眼鏡屋です。300年近い歴史がある、江戸時代から続いていたお店に、父は丁稚奉公していました。

父はあまり働くことが好きではなく、「丁稚奉公なんてとてもじゃないができない」という気持ちでいたようですが、手先が器用だったことを買われて、お客さまから非常に人気のある眼鏡屋の職人として成功したのです。弱冠20歳で店長代理人のような仕事をしていたと聞いています。

ある日、常連の奥さまが父に「アメリカにはコンタクトレンズがある」という話をしました。「コンタクトレンズ」という言葉は、眼鏡屋にいるため父も聞いたことはありましたが、敗戦直後の日本で、アメリカの最先端技術であるコンタクトレンズを見るなどとてもできませんし、おそらく国家機密的なもののため、敗戦国の若者がそれを手にすることはできません。

それをこの女性が一言話したことにより、父は非常に興味を持ち、「コンタクトレンズをぜひ見せてほしい、今持っているのですか?」と聞いたところ、「持っている」と言ったそうです。「見せてくれ」と懇願したものの、「決して見せられない」ということで、見ることはできませんでした。

そのことがショックで、「アメリカ人に作れるものが自分に作れないわけがない」という直感により、この日から「自分で作ろう」と研究に燃えるのです。

高井ひろえ氏(以下、高井):「ご自分で作る」という発想がすごいですね。

田中:父は戦争中、今の中学校にあたる、当時の尋常高等小学校に通っていた14歳でしたが、学徒動員で軍事工場に駆り出されていました。そのため、まともな勉強をほとんどしておらず、もちろん英語もしゃべれません。しゃべれないのに、この時アメリカ人女性と会話が成立しているところが不思議です。

これがレジェンドと呼ばれる人の不思議なところです。そのような意味で「父はレジェンドである」と僕は思いますが、英会話を成立させて、頼んだが見せてもらえず、「アメリカ人に作れるなら自分で作ろう」というとてつもない発想の中で、なんとわずか3ヶ月後に、コンタクトレンズのプロトタイプを自分で手作りしてしまうのです。

高井:3ヶ月ですか?

田中:そうです。それを自分の目にはめて実験までしたところ、意外と痛くなく、見たこともないものにもかかわらず成功してしまいました。

高井:大発明家ですね。

田中:見ておらず、真似したのではないから「発明」ですよね。それから自信を深めて、今度は「プロトタイプではなく商品化していこう」と考え、1年後には商品化に成功しました。

高井:すごいスピード感ですね。

田中:もちろん今の時代と比べて、許認可などの背景もまったく違う中でしたが、成し遂げてしまいました。これがメニコンの始まりです。

父は自分で開発したものを研究機関へ持ち込み、「評価してくれ」とお願いしましたが、当時の研究機関はもちろんコンタクトレンズを見たことがないのです。さらに、自分たちの研究していたものは、父の研究開発していたものとはまったく違ったため、父が持ち込んだものがコンタクトレンズだと最初は認めてくれませんでした。

しかし、それを実験的に患者さんにはめたら、なんと「よく見えて痛くない」と歓喜の声が上がりました。これが日本中に衝撃的に広まり、日本のコンタクトレンズの普及の最初になったということです。おとぎ話のような、創世記のお話です。

そのようなことがあってメニコンは1951年に創業して、今年で70周年を迎えました。

創業70周年

田中:スライド右側にあるのは70周年のロゴマークで、「メル助くん」が「70」という字に乗っています。このマークを使って、いろいろなところでキャンペーンを展開していきます。

弊社の70年の歩みの中で、父が取り組んだように独創的な発想でものをクリエイトしていく、不可能と言われることに挑戦していく、そのようなことを社是・アイデンティティとして、今日に至っています。

2001年メルスプラン開始

田中:スライドにあるとおり、これまでにたくさんの商品を出してきました。2001年からサブスクリプションというシステムを取り入れ、月々の会費を払うことで使える定額制サービス「メルスプラン」を開始して、さまざまなサービス提供やトラブルシューティングを実施しています。

これらの商品と「メルスプラン」は、メニコンの両輪です。商品がハード、定額制サービスがソフトとして、ハードとソフトの両輪で業績を作っています。

メニコンは「メルスプラン」にあらゆる商品のカテゴリを包括しています。例えば、これまで使われてきたハードコンタクトレンズから、主流になっている1DAYディスポーザブルタイプのレンズ、若い人に人気のあるカラーコンタクトレンズまで、あらゆるジャンル・ニーズに合わせた商品がラインナップされています。「メルスプラン」の加入者は130万人を超えており、非常に長い20年の歴史の中で強い支持を得ています。

マーケットに支持されるしくみ

田中:なぜ「メルスプラン」がこれほど支持されるかと言いますと、「メルスプラン」を考えたのは日本経済が非常に疲弊していた時代で、デフレスパイラルの中でものの価格がどんどん下がっていた時でした。

その結果として、市場は疲弊して、価格競争の中で誰も得をしませんでした。消費者のみなさまにとっては安くものが買えてよいかもしれませんが、いろいろなサービスが省略されたり、高度管理医療機器であるコンタクトレンズを取り扱う上で、安全性への配慮が欠けたりしてしまう残念な時代でもありました。

コンタクトレンズのユーザーが目の障害を起こすという弊害まで出てきてしまい、「これをなんとかなくしたい」という思いを持ち続けた僕自身が、ある時突然思いついたのが「メルスプラン」です。

「メルスプラン」を取り扱う販売店にとってもWin、消費者のみなさまにとってもWin、メーカーである我々メニコンにとってもWinという、「Win-Win-Win」の関係がぐるぐる回るビジネスモデルであることに気づきました。そのビジネスモデルは多くのディーラーやエンドユーザーの支持を受けて、今に至ります。

価格競争をせずに販売店の利益が確保され、価格競争に振り回されていたメーカーのメニコンの利益も確保されることで、販売店はエンドユーザーに対する真のサービス提供に力を入れることができます。それにより、従業員のモチベーションやモラルの向上につながり、ユーザーが欲する真のサービス、言わば心のこもったサービスを、エンドユーザーの方は受けられるようになるのです。

利益によって、メーカーも新商品の開発や製品のさらなる品質向上に投資できるようになり、結果的にエンドユーザーが安心して商品を使い続けることになります。その仕組みが回ることが「メルスプラン」の最高のメリットであり、「Win-Win-Win」ということです。

売上高の推移

田中:「メルスプラン」を開始した2000年以降ですが、スライドのグラフの赤いところが「メルスプラン」の会員による売上です。現在は会員134万人とあります。青いところは従来型のビジネスモデル、つまり物販での販売による売上です。

推移を見ていただくと、もしデフレの時にメニコンが「メルスプラン」を始めなければ、売上は青いところだけで、メニコンは2008年くらいには倒産していたかもしれません。

現在は赤い部分が全体の半分以上を占めており、いかに「メルスプラン」が安定的にメニコンの収益を作っているかがわかります。「メルスプラン」は先ほどお伝えしたようなメリットがあるため、エンドユーザーの方がほとんどドロップアウトしません。つまり、非常に効率的な囲い込みができていることが、この業績を作っている大きな理由です。

裏を返すと、「メルスプラン」の会員数が固定化されていれば、来年の売上や利益が予測できると言えます。それを踏まえ、メニコンの業績が急激によくなる場合はそのままでよいのですが、急激に悪くなるようなマイナス効果は、しっかりと抑え込むことができます。

その効果は今回のコロナ禍においても出ていますし、2011年の東日本大震災の時も「メルスプラン」によって業績が変動することなく、堅調に収益を伸ばすことができました。

メルスプラン20周年

田中:創業70周年と同時に「メルスプラン」も20周年を迎えたため、同時記念として弊社が契約しているタレントの浜辺美波さんが、特命宣伝部長に就任しました。プロモーションとしていろいろなキャンペーンを展開しますので、ぜひご期待ください。詳細はホームページ上に記載されますので、ご覧いただければと思います。

グローバルに事業を展開

田中:「メニコンは、これからどのように事業を展開していくのか」についてです。国内メーカーとしてはトップシェアだと思いますが十分ではなく、海外に目を向けると、売上はそこまで高くありません。現在、海外現地法人はヨーロッパを中心にアジア、アメリカにありますが、これらの業績をどんどん伸ばしていかなければいけないと考えています。

さらに、海外はまだ手を付けていないところが多くあります。例えば南米やアフリカ、東欧などです。そのような意味で、経営としては夢がたくさんあるということです。

海外売上高比率

田中:スライドは海外売上高比率ですが、国内が82.4パーセントとなっています。そのため「海外の売上比率がまだ低い」「メニコンがいかにドメスティックな会社か」ということになるのですが、少し言い訳をすると、国内が伸びているのです。国内の伸びが非常に好調ということで、海外の比率が相対的に上がっていかないという現象が起きていますが。決して海外が下がっているわけではありません。

スライド右側の青色のラインで囲った四角の中を見ていただけるとわかるのですが、海外売上高比率は、前年よりも3.5パーセント伸長しています。しかし、国内の伸びがそれに近いと言いますか、それ以上に伸びてしまうため、残念ながら、海外比率は相対的に見ると伸びていないということになります。そのような意味では、先ほどお伝えしたとおり、まだまだ海外に伸ばす余地があるということも、ぜひ期待していただきたいと思います。

コンタクトレンズ業界は成長?衰退?

田中:「コンタクトレンズ業界は成長するのか、衰退するのか?」というのは、みなさま非常に興味のあるところでしょうし、どの産業もそうですが、少子化と高齢化という問題は避けて通れないものです。しかし、コンタクトレンズ業界で言いますと、少子化は進んでいる一方で、近視人口は増えているのです。また高齢化が進めば、いわゆる老視(老眼)の人口も増えていきます。

そして、昨今では「カラーコンタクトを使いたい」という若い人が、新しいマーケットを作っているということもあります。スライドには、心配ごとを記載しています。

マーケットは継続して成長

田中:スライド右下に「中国ではオルソケラトロジーレンズの需要が拡大している」と記載していますが、まず中国では近視人口が非常に多いのです。大学生のほとんどが近視ではないかと言われています。これは、実は中国に限らず日本もそうですし、アジア全体もそうです。またヨーロッパでも、近視人口は増えており、パソコンやスマホを使っている影響だと考えています。

また、中国の場合は「近視を抑制したい」という政府方針があります。近視が進むと、思わぬ目の病気を併発することがありますので、それを止めないと医療費がパンクしてしまうためです。習近平国家主席が言及したことだと思いますが、このような国家戦略の中で、「近視進行を抑制しなさい」という政府方針が出ています。その影響を受けて、弊社のオルソケラトロジーレンズを応用しようという動きがあり、業績が伸びています。

オルソケラトロジーレンズ売上の伸長

田中:オルソケラトロジーレンズ市場の大きな伸びに牽引され、弊社の業績も伸びています。オルソケラトロジーレンズは、寝る時にはめて、起きたらはずすという、普通のコンタクトとは真逆の使い方をします。これにより、髪の毛に寝癖がつくように黒目の表面に癖がついて、ピントの合う位置が変わり、一過性で近視が治ったようになるのです。

中国では、それを繰り返していくことで、近視の進行を抑制する可能性を模索しています。これは世界中で行っているのですが、本来オルソケラトロジーレンズという商品は、昼間にコンタクトや眼鏡を使わずに過ごすための道具です。

視覚から五感へ事業領域を拡大

田中:メニコンは、コンタクトレンズ事業にさらに力を入れていきます。そして、近視進行抑制事業についても果敢に研究を続けていこうとしており、いずれはもっと大きなビジネスチャンスがあるだろうと考えています。

また、それ以外に、人間は五感で物事をいろいろ感じ取っています。例えば嗅覚、聴覚、味覚、そして触覚の5つの感覚器が非常に大事です。

ごはんを食べている時にただ「味がおいしい」というだけではなく、視覚によって、さらにおいしく感じることができますし、美しい音楽が流れていれば、気持ちよくごはんが食べられます。そしてすてきな香りが加われば、さらにおいしくなるでしょう。舌による触覚もありますし、お皿に触るといった行為などもあり、結局五感で楽しんでいるということです。

これからメニコンが事業を拡大していきたいもう1つの野心として、視覚を中心にした五感のすべてについて、何かもっとサービスを展開できないかと考えています。現在、新規事業としてこれらを開発する方針を出しています。

【ヘルスケア・ライフケア】サプリメント

田中:すでに取り組んでいるのが、サプリメント事業です。これはもちろん、将来の健康を獲得していくためのものです。その中には、効能効果を謳うことができる機能性食品もありますし、通常のサプリメントもありますが、こうしたサプリメントをいろいろな方面に展開していこうと考えています。

【ヘルスケア・ライフケア】食品事業

田中:食品事業では、板橋貿易という会社がメニコンのグループ傘下に入ってきました。ここは従来行っていた事業をさらに伸ばしていこうということで、例えば、中国に対してお米や海産物、魚の輸出事業を行っています。

【ヘルスケア・ライフケア】動物医療事業

田中:人間の目だけではなく、動物たちの目もケアしていこうということで、動物医療事業を行っています。スライド左側のヨークシャー・テリアは正面から見ると、明らかに白内障で瞳が白くなっています。盲導犬も白内障になってしまうため「白内障になった盲導犬の晩年を、見えるかたちで過ごさせてあげたい」という思いから始めたものが、今はこうした実際の事業である動物医療として、展開されています。

また、犬用の眼内レンズだけではなく、さまざまな動物用の検査機器をはじめとした、その他の医療機器も販売しています。

【ヘルスケア・ライフケア】ペットライフサポート

田中:さらに動物医療を発展させていく中で「動物と生涯過ごせる」「犬とともに生きる」ことを実現させるサービスを展開するため「&D」という事業を開始しました。犬だけではなく猫もそうなのですが、人間の都合で作られて販売され、いらないからと捨てられ、結果的に殺処分になってしまうという、非常に気の毒な命があるからです。

医療も大事ですが、犬たちのケアはそれだけではありません。「気の毒な命を一つでも守り続けたい」「守ってあげたい」という思いから、こうした部分も応援していこう、きちんと事業化していこうということで、始めていきたいと考えているものです。これについてもホームページに記載がありますので、詳しくはそちらをご覧いただければと思います。

【ヘルスケア・ライフケア】環境ビジネス

田中:環境問題を考える上で、我々がコンタクトレンズの洗浄液を開発する際に、偶然発見した酵素を利用して農業分野に貢献していこうという商品群が「アグリ革命」と呼ばれているものです。「新特別急酵」は畜ふん分解に使うものであり「アグリ革命」は稲わら分解に使うものです。我々の考え方としては、これらの売上の一部を、トキの保護に使っていこうということです。

廃プラスチック削減への取り組み

田中:コンタクトレンズは、プラスチックで作られています。昨今プラスチックの削減が謳われている中で、弊社の「SMART TOUCH」という商品では、すでに使用するプラスチック量を80パーセント削減しています。

しかし、どうしても使わざるを得ないプラスチックは存在します。残念ながら、他のものではなかなか代用できないものが多いのです。医療機器は使える材料がかなり限定されてしまうため、仮にいくら環境によくても、代用できません。人間の目の安全性を最優先にしなければいけないということで、そのような意味で、なくせないプラスチックがあります。

そうであるならば「なくせるプラスチックはもっと減らそう」と考えました。メニコンの社屋の間には屋根のないところがあり、雨が降った時には、今までビニール傘を使っていたのです。風が吹くとすぐ壊れてしまいますし、使えなくなれば捨てるしかなかったのですが「それをなんとかなくしたい」ということで、今、社屋間移動は和傘を使っています。

これは岐阜県の和傘なのですが、岐阜県にはメニコンのメイン工場が2つあります。そうしたつながりもありますが、メニコンは独創性と挑戦と創造性から匠の技を生み出してきたということで、「伝統工芸である和傘の匠の技も同時に守れないか」という考えがあり、環境に対する考え方の発信にもなるため、オリジナル和傘を作りました。「将来は何かこれでビジネスができないか」ということも考えながら、取り組んでいるところです。

株主優待内容(2021年3月31日現在株主様)

田中:株主のみなさまには、そうしたメニコンの商品や社会貢献事業の中から、株主優待をご用意しています。ぜひみなさまのご理解を得て、こうした寄付にも株主優待をご利用いただければと思います。

インターネットラジオ「Menicon Radio」

田中:現在、私はインターネットラジオにも取り組んでいます。無料配信で、2週間に1回、新しいものを配信しています。1回の番組は15分程度です。その中では今日お話ししているようなメニコンの歴史や、業績のことにも少し触れますし、先ほどのような社会貢献、文化活動事業などについても、いろいろなかたちで報告していますので、ぜひお気軽に聴いていただきたいと思います。

インターネットラジオはもう20数回連載しています。全部聴取するのは大変ですが、楽しい内容になっていると思いますので、ぜひ第1回から聴いていただければと思います。

Vision2030に向けて取り組む事業ドメイン

田中:2030年の長期ビジョンです。中間点である2026年では、先ほどの新規事業的な部分で100億円の売上、またコンタクトレンズ関係のビジョンケアは、1,300億円の売上を目指していきたいと思います。そして2031年には、これをさらに上回り、みなさまに夢を与えるような経営を実現できればと考えています。

以上で説明は最後になります。ご清聴ありがとうございました。メニコンはこれからもがんばっていきますので、株主のみなさまにはぜひ今後も変わりない応援、ご声援をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

高井:「メルスプラン」で業績をV字回復させて、その後もさまざまなビジネスアイデアで会社を盛り上げ、環境分野などの分野でも縦横無尽に貢献されていて、すごく熱いお話をありがとうございました。

質疑応答:近視進行抑制への取り組みにより近視人口が減ると、売上高の減少に繋がるのでは?

高井:事前にお寄せいただいたご質問をご紹介します。「近視進行抑制治療によって近視人口が減ると、コンタクトの売上減少につながってしまうのではないかと思います。ビジョンについて詳しくお聞かせください」というご質問です。

田中:先ほどお話ししたように、少子化が進むと確かに若い人が減ります。最初からコンタクトレンズを始める人の数が減るようにも思えるのですが、実は近視の進行の始まりも早くなっていることと、近視人口そのものが増えていることを考えると、対比としてはそこまで変わらないと考えています。

ただ、日本のような先進国は全般的にそのような傾向があるため、今までのような近視を補正するという考え方だけでは、確かにマーケットはシュリンクしてしまうと思います。

そこで、カラーコンタクトレンズ、オルソケラトロジーといった新しいマーケットの拡大や、付加価値の高い商品、遠近両用のようなもので高齢者を取り込んでいき、マーケット全体を維持、もしくは拡大していくということです。

海外売上高を見ると、まだまだ我々が手をつけていないところはたくさんあります。特にベトナムやフィリピン、インドなどもそうですが、若い人たちがものすごく多いです。そのようなところは、いずれいろいろな社会インフラが整備される状況になると、一気に日本を超えてしまうようなビッグマーケットになると思います。こちらも視野に入れながら、戦略を立てていきたいと考えています。

質疑応答:海外で今後、売上を伸ばしていくための取り組みは?

高井:今お話があった海外での展開について、「今後、海外で売上を伸ばしていくための取り組みを、より具体的に教えてください」というご質問もいただいています。

田中:海外売上の主流として、ヨーロッパでは、1DAYはどんどんとシフトしている状況で、これはアメリカでも同じです。もちろん、日本もそうなのですが、これからは1DAYの差別化、商品の差別化にさらに取り組んでいく必要があります。

先ほど本編の中でも、弊社の「フラットパック」は環境に優しいといったお話をしましたが、「フラットパック」は、要は「SMART TOUCH」機能があり、封を開けると外面側が必ず上になります。つまり、つまんで装用することで汚さない面が必ず目に触れることになります。そのため、非常に衛生的で安全となります。

実はこれは他社ではまだできていない技術であり、1DAYの大きな差別化となるポイントです。そして、これを全面的に世界へメッセージとして発信していくことで、まだまだメニコンは勝てるチャンスがあると考えています。その戦略を「SMART TOUCH戦略」と言っているのですが、今後展開していきたいと考えています。

高井:私もコンタクトレンズのユーザーなのですが、確かに、つける面をわざわざもう1回洗ってからつけるのがすごく面倒だと思っています。

田中:煩わしいですよね。朝の忙しい、1分でも惜しい大事な時間で、コンタクトレンズの内面側を汚してしまって、それをまたすすいだりするのは面倒ですし、時には裏と表とわからなくなってしまう時もあると思います。

高井:おっしゃるとおりです。

田中:これは実際に僕がコンタクトを使っていた時代にそのような経験がありました。はめる瞬間に一瞬指から落ちそうになったので直そうとすると、裏か表かわからなくなりました。

ただでさえ急いでいるのに、慌てるとまったくわからなくなるのですよね。慌てて、スッとはめるとなんだかゴロゴロするなと思い、確認すると裏返しになっている、といった流れです。そしてまた外して、としているうちに、実はレンズをどんどん汚しているわけです。

それをなくすことができる、いわゆるストレスフリーな取り扱いができるという意味で、この「フラットパック」、そして「SMART TOUCH」という機能は非常に重要になります。今は弊社の1DAYに対して、そうしたものをどんどん取り入れていこうと商品開発を進めている状況です。

そして、先ほどお話があった、中国においての近視進行抑制ということがありますので、海外戦略の大きな柱のもう1つが、オルソケラトロジーレンズの普及になります。

高井:オルソケラトロジーレンズは気になったため、調べて見ていたのですが、すごく可能性を感じました。

質疑応答:「メルスプラン」ユーザー数拡大のための取り組みは?

高井:続いて、「『メルスプラン』のユーザー数拡大のための取り組みについて、詳しく教えてください」というご質問が来ています。

田中:「メルスプラン」については、さらに商品を投入して、ユーザーの方々のさらにきめ細かいニーズに応えられるようなラインアップを行っていきたいと思います。さまざまなサービスを付加していき、やはり長く続けていきたいという気持ちを持ってもらえるように、いろいろと展開していきたいと考えています。

質疑応答:「SMART TOUCH」はメニコン独自の製造技術?

高井:ライブ中にお寄せいただいたご質問をご紹介します。「『SMART TOUCH』は、他社ではまねできないような御社独自の製造技術なのでしょうか?」

田中:おっしゃるとおりです。いろいろな特許的なものもありますし、実は非常に製造上難しいです。コンタクトレンズは、お椀のかたちをしていますよね?

高井:そうですね。

田中:ソフトコンタクトレンズについて言いますと、お椀のかたちをしているものが、実は液体の中に沈んでいるのです。最近はハードコンタクトレンズも同様です。例えば、みなさまはお風呂に入った時に桶を沈めようとする場合、空気が入ってしまうため、桶は凸面が下でないと沈まないと思います。 

空気が入ったまま沈めようとすると、ボコボコと空気泡を出さないといけません。製造ラインの中でもそのように、水の中で凸面を上にすると沈めることができないのです。

これは非常に難しい技術になります。それを我々は、いろいろなノウハウを活用することで実現できるようになりました。この研究開発だけで3年くらいかかっているのですが、それを行ったことで弊社は「SMART TOUCH」を商品化できました。

また、「フラットパック」は実は薄い一次包装パッケージですので、そこに凸面を上にして、ある意味、張り付いているかたちになります。封を開けた時にポップアップと言って、張り付いているものがレンズのかたちになるように少し盛り上がらなければいけないのですが、その技術も難しいです。その上、そもそもペッタンコの中には水がほとんど入らない状況です。 水ではないのですが、少ない水分のような液体でレンズの品質を維持しなければいけないということも、難しい技術です。

そのため、いわゆる我々の「SMART TOUCH」「フラットパック」の領域に入ってくるには、参入障壁が非常に高いということになります。

高井:ユーザー側からして「なんだか便利だな」と感じるものの裏側には、本当に大変な努力があるのですね。

田中:おっしゃるとおりです。背景には研究開発などによる非常に大きな努力があります。

質疑応答:競合他社に対するメニコンの優位性は?

高井:次のご質問は、「コンタクトレンズ業界において、競合他社に対する御社の優位性について教えてください」と来ています。

田中:競合他社もそれぞれ強みをお持ちですので、そうした強みと真っ向から勝負しても、あまり得なことはないと思われるかもしれません。 

しかし我々は、その中でも独創的なものを開発していくところに特化することにより、今まで進んできたことは強みだと感じています。

研究開発と販売がいわゆるマーケティング上の川上から川下として、一貫して取り組まれています。市場と非常に接点が多いことは、我々にとって大きな強みだと思いますし、それが差別化として、特に日本国内においては販売するネットワークをいくつも持っており、ユーザーと直接会話することが可能になります。これも非常に大きな差別化のポイントであり、強みだと思います。

高井:確かにそうですね。コンタクトを買う場所の選択肢はいろいろとありますが、たまにハズレのように自分に合わない、ゴロゴロしてしまう、といったこともあると思います。しかし、メニコンで買えば安心ということは1つのポイントかもしれません。

田中:何度もお伝えしますが、コンタクトレンズは医療機器ですので、当然、個人の相性があり、たとえメニコンのレンズでも合わない方はいらっしゃいます。

その時弊社の場合は、直営店や子会社の販売店などを持っており、実はメニコン以外のレンズも販売できるなど、あらゆるレンズを持っています。もちろんメニコンのレンズを最適に処方するという技術は持っていますが、それで合わなかった場合でも弊社の直営店に来てくださった方に他のレンズできちんと対応することができます。

そうした販売店への信頼感が、「メニコンのレンズを欲しい」と思う方を結果的に増やしていく連鎖になっていくと思っています。

質疑応答:オルソケラトロジーレンズはメニコン独自のもの?

高井:次の質問は、「オルソケラトロジーレンズは他社も取り組んでいるのでしょうか? また、今後日本でも普及していくのでしょうか?」と来ています。

田中:世界中のいわゆるライバルメーカーが、近視進行抑制やオルソケラトロジーというマーケットへ注目しており、決してメニコンだけが行っているわけではありません。

国内でもすでに取り組んでいるメーカーがいます。しかし、弊社のレンズの品質や実績は、今世界の中でも群を抜いているのではと考えています。

さらに、新しい商品についても、研究開発にどんどん取り組んでいくといった意味で、マーケットの川上から川下までを持っています。そのため、市場のいろいろなニーズに応える、オルソケラトロジー関連に関しては、研究開発ができるところが恐らく差別化となり、リードしていけるのではと考えています。

質疑応答:今後のM&Aの考え方は?

高井:最後の質問です。「中期経営計画の達成のために、M&Aの積極的な活用も考えられます。同業、異業種でも構いません。今後はどのような企業でのM&Aを想定されているのかについて、お答えできる範囲内で教えていただきたいです」ということです。

田中:M&Aについては、これはインサイダー情報ということになりますので、全部においてお答えできない部分になります。

高井:そうですね。

田中:あってもなくてもお答えできない部分ですが、考え方としては、M&Aは、縁がなければできないことになります。

10年くらい前は一時期「M&Aはかっこいい」といった風潮がありました。テレビドラマでも、M&Aのことがそのように取り扱われたり、「敵対的買収だ」「TOBだ」と話題になっていたりしましたが、そのようなものは成功しないです。

敵対的買収をかけて、仮にそれで買収できたとしても、それが本当に2つの会社にとってハッピーかと言いますと、そうではないような気がします。

「お互いがWin-Winの関係で合併する」ことが一番重要で、このように合併するから事業が「1+1=2」以上の効果を出していくわけです。

ところが、敵対的な買収などで力ずくで買収すると、「1+1=2」にならずに、結果が1.5になるなど、世の中ではたくさん起こっているのではないかと思います。

ですので、M&Aは、1つの選択肢としてもちろん必要に応じては取り組んでいかなければいけないと思いますが、無理矢理行うものではないというのが私の考え方です。

高井:本日は田中社長のアグレッシブなアイデアや、印象に残った言葉として「これから経営については夢がいっぱいです」というお話もお聞きできました。これからも、とても楽しみに拝見させていただきたいと思います。

田中氏から個人投資家の皆さまへのメッセージ

田中:先ほどお伝えしたように、株主のみなさまと一緒に夢を実現していきたいと思っています。弊社をこれまで以上に応援していただき、できれば長く株を持っていただいて、長きにわたって弊社を支えていただければうれしく思います。よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

ライブ中に寄せられた質問と回答

セミナー当日は時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:単純に考えると「コロナ→外出規制→コンタクト使用機会減」となるのかと思いますが、好調の要因が気になります。本日のセミナーで理解を深めたいと思い、楽しみにしています。

回答:プレゼンの中でもご説明しましたが、当社の売上高の半分以上をサブスクリプションサービスであるメルスプランの売上高で占めています。コロナ禍でも、メルスプランの退会率は上がらなかったことが業績好調だった理由の1つです。

また、中国で近視進行抑制のためのオルソケラトロジーレンズやレンズケアへの需要が伸びたこと、2019年度に買収したイタリアの子会社の売上高が加わったことが海外での売上伸長に貢献しています。さらに、コロナ禍のために主に営業や研究活動に係る移動費の未使用等による、販売費および一般管理費の効率的な使用も寄与しています。

<質問2>

質問:ヘルスケア・ライフケア領域では、メルスプランで培ったサブスクのノウハウを活かしていくのでしょうか?

回答:プレゼンの中でもご紹介した「&D」という犬のライフサポート事業では、サブスクリプションのノウハウを活かしています。

<質問3>

質問:欧州、北米、アジア、それぞれの市場の特徴を教えてください。

回答:欧州、米国とも1日使い捨てや定期交換タイプなどソフトコンタクトレンズが主流ですが、不正角膜矯正用などの特殊形状を含むハードコンタクトレンズのユーザーも一定の割合でいます。

いずれの市場でも1日使い捨てが最も大きな伸びを見せており、欧州の一部の国では売上規模の50パーセントから60パーセントを占めるに至っています。定期交換タイプでは、欧州、米国いずれも1ヶ月交換タイプが多いです。

中国では若年層にカラーコンタクトレンズが人気で、使い捨てコンタクトレンズ市場の50パーセントをカラーコンタクトレンズが占めます。また、特に中国で近視進行抑制のためのオルソケラトロジーレンズの需要が伸長しています。

<質問4>

質問:オルソケラトロジーレンズのように、今後も何か副次効果のある機能コンタクトレンズの展開をしていく計画でしょうか? お話しできる範囲で教えてください。

回答:視力矯正以外のコスメティックな要素を持つカラーコンタクトレンズにおいては、2020年に1日使い捨ての「1DAY FRUTTIE」を市場に導入、今年5月には「1DAY メニコン Rei」をメルスプランへ導入するなど、力を入れています。若年者に需要の高いカラーコンタクトレンズに加え、老視に対応した遠近両用、乱視用などの機能性コンタクトレンズにおいても、今後も開発を続けてラインアップを拡充していきます。

<質問5>

質問:メルスプランについて、1年以上継続される方の割合を教えてください。また、解約理由で最も多いのはどのような理由でしょうか?

回答:1年以上継続される方の割合については、申し訳ありませんが開示していません。解約理由としては、コンタクトレンズの使用をやめる、使用する頻度が減ったというものが多いです。

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