2021年5月19日に行われた、NTN株式会社2021年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:NTN株式会社 取締役 代表執行役 執行役社長 CEO(最高経営責任者) 鵜飼英一 氏

2021年3月期決算説明会

鵜飼英一氏:NTNの鵜飼でございます。本日はお忙しい中、当社の決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。また、日頃より株主、アナリストのみなさまにはご支援をいただき、この場をお借りして厚くお礼を申し上げます。

①2021年3月期 決算の概要

私からはポイントと今期の重点施策を説明します。2021年3月期の売上高は5,628億円でした。新型コロナウイルスの影響を大きく受けたことで、前期比14パーセントの減収となりました。営業利益はマイナス31億円の赤字、前期比ではマイナス107億円の減益となりました。一方で、比例費や人件費、経費などの固定費削減を進めたことで、下期は黒字となりました。

特別損益は45億円で、内訳としては特別利益が115億円、特別損失が70億円です。特別利益は、助成金収入と第4四半期に実施した投資有価証券の売却が含まれています。特別損失は、第1四半期に計上した異常操業度損失と第4四半期に実施した北米の製造子会社における減損などを計上しています。

一方、バランスシート関係では、当期売上が減少する中、棚卸資産の削減を進めました。前期末比で、為替を除いて132億円を削減しました。この結果、フリー・キャッシュフローは185億円の黒字となりました。棚卸資産や設備投資の削減、投資有価証券の売却により、前期比では366億円改善しました。

また、スライド下のグラフに記載のとおり、第4四半期は、自動車と産業機械のOEMを中心に需要が回復しました。加えて、費用削減も押し進めたことで、1月28日に公表した業績予想を上回って着地しました。

①2021年3月期 決算の概要(一覧)

資料4ページは、今説明した内容を一覧にしているので、後ほどご確認ください。

②2021年3月期 事業形態別の概要

事業形態別の概要です。アフターマーケットは、新型コロナウイルスによる市況低迷を受け、代理店の在庫調整も加わり、減収減益となりました。

産業機械は、建設機械、航空機、鉄道車両、工作機械の需要が減少する中、農業機械や風力発電、変減速機の需要は増加しました。そのため、減収は他事業と比べて少なく、不採算型番の値上げや撤退も奏功したことで、減収増益となり、年間では黒字化しました。自動車は、コロナ禍で当社主力の自動車顧客が大きく減産したことで、当社の売上も大幅な減収減益となりました。

スライド中段は、売上高と営業利益の事業形態別増減をグラフで示しています。ご説明しましたとおり、全事業の中では産業機械の減収幅が少なく、増益となりました。

スライド下の表は、上期・下期に分けて業績を示しています。売上高はアフターマーケットを除いて下期で増収となり、営業利益は下期で全事業において増益となった結果、営業黒字を達成しました。

③2022年3月期の業績予想

2022年3月期の業績予想についてご説明します。売上高は6,600億円、前期比17パーセントの増収を予想しています。コロナ禍の継続や半導体供給不足の影響もありますが、全事業で需要回復を想定しています。

アフターマーケットは、全地域でコロナ禍からの市況及び需要回復を想定しています。産業機械は、建設機械、農業機械、風力発電、変減速機を中心に需要増加を見込んでいます。

自動車は、半導体供給不足の影響を懸念していますが、コロナ禍による減産からの回復を想定しています。なお、半導体供給不足による自動車販売への影響は、上期にマイナス80億円の減収と、下期に挽回生産によるプラス30億円を織り込んでいます。ネットすると、通期ではマイナス50億円の影響を想定しています。

営業利益は150億円、つまり前期から181億円の増加を予想しています。これには、足元の鋼材価格と物流コストの急激な上昇に加えて、需要の急回復局面に伴う人件費などの増加をあらかじめ織り込んでいます。

鋼材価格などの上昇や固定費の増加によって、2022年3月期は損益分岐点が一時的に上昇する見込みです。

④事業別施策:アフターマーケット事業

事業形態別の施策を説明します。まずは、アフターマーケット事業についてです。スライド上段は、2021年3月期の実績と2022年3月期の予想です。

スライド下段の今期に注力する重点施策については詳しくご説明します。中期経営計画「DRIVE NTN100」Phase2の3年間で、NTN再生と将来の成長に向けた重要施策を実施していきます。その中でも、アフターマーケット事業の販売拡大は全社利益の改善において重要な位置付けとして進めています。

今期は特に、「供給力の強化」と「技術サービス対応の強化」「ハード+ソフトの強化」に取り組んでいきます。「供給力の強化」では、この3月末時点で30億円超の標準品在庫を確保しており、在庫即納システム「FIRST」を通じて、グローバルの補修需要に対応していきます。需要が回復傾向にある中、対象型番の見直しや追加、海外生産の拡大による在庫拡充を進めていき、需要獲得による販売拡大に努めます。

「技術サービス」では、オンライン技術セミナーの開催やカメラ付きヘッドセットを活用した遠隔技術支援サービスを拡充していきます。一例として、カナダの取り組みがお客さまから評価されており、新興国を含めて展開していきます。

「ハード+ソフト」の強化では、「ポータブル異常検知装置」をはじめ、モニタリング装置を活用した新たなビジネス創出を進めていきます。この3年間で確実に販売を拡大できるよう施策を進めます。

④事業別施策:産業機械事業

スライド下段をご覧ください。産業機械事業の重点施策についてご説明します。中期経営計画で産業機械OEMの主要業種を「つくる」「育てる」「稼ぐ」にカテゴリー化して、カテゴリーごとに施策を展開し、経営資源を投入しています。

「つくる」に分類した新領域事業では、新たにソリューションビジネスセンターを新設しました。また、事業本部内組織の改編を行い、ロボット関連事業、CMS事業などを推進していきます。

成長が期待できる「育てる」領域では、変減速機、風力発電の販売拡大に取り組みます。変減速機では、これまで導入してきたRV減速機の市場シェアをさらに拡大させることに加え、ハーモニックに代表される波動減速機の需要獲得を推進します。

今期も引き続き原価低減の活動を推進し、「稼ぐ」領域における利益改善を進めていきます。需要が急回復する局面を予想しており、不必要な費用を出すことなく、確実な利益獲得につなげていきます。

④事業別施策:自動車事業

スライド下段をご覧ください。自動車事業の重点施策についてご説明します。自動車事業売上の8割を占める基盤商品「CVJ」と「ハブベアリング」に関しては、調達改革による比例費原低を強力に進め、既存品の利益率を向上させます。EVを含めた新規案件についても利益の出る確実な量産立ち上げを推進します。

固定費に関しては、全社で取り組む生産改革による生産性向上を前倒しで進め、早期の製造固定費低減を推進していきます。間接部門の固定費については、設計を含めたRPAの活用を拡大し、人件費を圧縮します。

これら基盤商品の収益、体質強化を確実に実行することで、中長期では高収益商品、顧客へのシフトなど、ポートフォリオの最適化を進めていきます。

環境対応やEV・電動化対応の開発などを強化するとともに、これら商品の受注獲得に注力し、自動車事業の成長を実現していきます。

⑤ESG経営の推進

中期経営計画となるESG経営の推進をまとめた資料です。当社は、ESG経営を強化しています。「新しい技術の創造と新商品の開発を通じて国際社会に貢献する」という企業理念の実践を通じて、世界を取り巻く社会的課題の解決に貢献したいと考えています。人と自然が調和し、人々が安心して豊かに暮らせる「なめらかな社会」の実現を目指します。

昨年、SDGsなどの国際目標の達成に向けたマテリアリティを特定しました。今期は、それぞれの目標値を設定し、ESG経営を推進していきます。

ESGに関する取り組みの詳細は、当社の統合報告書である「NTNレポート」や「ESG説明会資料」で詳しくご説明していますので、後ほどご確認ください。

⑥「なめらかな社会」の実現、 カーボン・ニュートラル達成に向けた取り組み1/2

「なめらかな社会」の実現と当社のカーボン・ニュートラル達成に向けた取り組みをご説明します。当社は、商品やサービスの提供とエネルギーを使用する製造工程などの両面から、CO2排出量の削減に取り組んでいます。

スライド左では、グリーンエネルギー拡大に向けた当社の貢献についてご説明します。風力発電や水素エネルギー関連、自然エネルギー商品、EV・電動化をはじめとした領域で事業拡大を進めています。

風力では、洋上を含めた超大型発電装置で当社の独自技術を用いた軸受と状態監視システムを提供し、安定稼働を支えています。

水素エネルギー関連では、水素化社会の到来に備えています。水素をつくる、貯める、運ぶ、使用するなどの各場面で特殊環境に適応した商品の技術開発を進めています。

自然エネルギー商品では、グリーンパワーステーションや「エヌキューブ」など独立型電源供給システムの販売を通じて、グリーンエネルギー創出に貢献しています。EVや電動化の対応については、このあとご説明します。

スライド右では、主に製造工程、事業所におけるエネルギー削減の取り組みを紹介しています。熱処理における効率化を進め、使用するエネルギーも石油から天然ガス、電気へと環境負荷の低減を進めていきます。将来的にはCO2排出ゼロとなるアンモニアや水素の導入を検討しています。また、事業所に太陽光や風力発電装置を設置し、グリーンエネルギーの活用を拡大することで、年間1万トン相当のCO2削減効果を出しています。

⑥「なめらかな社会」の実現、 カーボン・ニュートラル達成に向けた取り組み2/2

関連するトピックスをご紹介します。グローバルで進む電動化について、当社の取り組みをご説明します。グローバルでカーボン・ニュートラルに向けた動きが活発化し、その達成に向けて自動車をはじめ、産業機械の各分野で電動化が加速しています。このような背景の中、当社では自動車と産業機械の両分野を横断した「電動化プロジェクト」を上期に発足させました。これにより顧客ニーズの迅速な取り込みと技術を結集した商品開発を推進します。

自動車と産業機械の両分野で電動化が進展する中、スライド右で示したとおり、基盤商品と新商品の双方で電動化に対応した商品開発を強化させていきます。

昨今では、電動効率の向上に伴うボールベアリングの需要が拡大しています。駆動モータや変減速機の効率化を目的にボールベアリングの高機能化が求められており、開発と生産に注力していく考えです。

技術開発では、高速化、耐電食、静音化を軸に開発を強化するとともに、高機能品と標準品の生産再編を進めることで、需要獲得と利益拡大の両立を実現します。秋の中間決算でこの取り組みの進捗をご説明したいと思います。

また、当社では、環境効率の高い商品を世に売り出すことによる環境貢献度を指数化しています。スライド下のグラフでは、1998年当時の商品をお客さまが使い続けた場合と比較して、年間で約150万トンのCO2削減効果が出ていることを示しています。詳しくは、「NTNレポート」をご覧ください。

この5月末にはTCFDに賛同を表明する予定です。今後は、気象変動におけるリスクと機械の分析を進め、各種シナリオを策定し、公表していきます。私からの説明は以上です。

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