最近の“中食”市場の急拡大によって、プラスチックを中心とした食品容器の市場にも活況感が出てきました。また、新しい容器の開発によって、逆に中食市場が刺激を受けるという場面も少なくないようです。
中食とは、外食と内食(食材を購入して家庭で手作りする食事)の中間に存在する概念で、ざっくり言うと家庭外で調理されたものを購入して持ち帰り食べるもののことです。その市場は、共働きや単身所帯の増加、高齢化、テイクアウト需要、宅配の普及などによって2030年頃まで成長加速が予想されます。
コンビニの陳列棚でチルドコーナーが拡大中
かつてコンビニでは、様々な種類やサイズの即席ラーメン(乾麺、お湯をそそぐ方式)が商品陳列棚で大きなスペースを占めていました。しかし、2010年代に入る頃から台頭してきたのが生麺タイプの冷やし中華麺に代表されるチルド系の商品です。その先鞭をつけ、チルドコーナーを大きく広げたのがセブン~イレブンです。
近年は電子レンジ加熱用の食品容器が登場し、110℃ぐらいまでの過熱には十分耐えられると言われています。また、チルド食品容器の構造も進化しています。顕著な例は、中皿の付いたタイプです。
たとえば、容器の底にはお米、中皿にはカレー(具入り)、そして蓋がついている2段構造の容器をお使いになった経験はないでしょうか。お米はお米、カレーはカレーで別々に温めることで、本来のカレーライスの臨場感が得られるというわけです。
また、丼ものや麺類などでも2段構造が採用され、格段にチルドもののバラエティが増えています。忙しいビジネスマンやビジネスウーマンも、コンビニや会社の電子レンジで温めるだけで、自席で手軽に、スマホを見ながら、それなりに満足感のある食事ができるというわけです。
このように、電子レンジの高い温度に対応できる食品容器の開発によって、コンビニの食品陳列棚の内容が大きく構造変化してきています。反面、いわゆる即席麺を主力商品とする企業にとっては、足元をすくわれる時代になりつつあるのかもしれません。
惣菜コーナーの充実を図るコンビニ
ファミリーマートではこの秋から惣菜売り場を増強し、「ファミデリカ」というブランド名でチルド惣菜を展開し始めました。従来パウチ式容器に詰められていた惣菜類が、小さな発泡用器に透明なフィルムを張った中身が見える容器でずらりと並んでいます。
惣菜市場の規模は年間3兆円と言われていますが、そのほとんどが食品および総合スーパーやデパ地下で売られてきました。それに加え、新たに広がりを見せているコンビニルートは、単身所帯、高齢者所帯、宅配などによる需要増加が続くと予想される2030年頃まで、大きくシェアを拡大するのではないでしょうか。
外食のテイクアウトにも食品容器が活躍
牛丼チェーンが力を入れているテイクアウトにも新しい流れが見られるようになりました。吉野家の「牛すき鍋膳」、すき家の「黒毛和牛弁当」など、いずれもテイクアウトを狙った新商品ですが、保温性が良く電子レンジで再加熱できる容器開発が商品化を後押ししたようです。
筆者も最近すき家の黒毛和牛弁当を賞味してみましたが、味もさることながら、見た目が豪華な食品容器や耐熱性のあるポリプロピレン補助容器が使われていることが印象的でした。
また、マクドナルドで提供するホットスープ(ミネストローネ等)類のカップは、耐熱性の高いポリプロピレン樹脂の発泡成形による新しい容器で、発泡されているので容器を触っても熱いと感じないのが利点です。こうした容器の開発が、新商品による市場開拓につながった面もあるのではないかと思われます。
サラダや果物の包装形態にも変化が
最近はサラダの容器も変わってきています。透明の容器にカット野菜が敷かれ、中皿にはマヨネーズやドレッシング、トッピングがセットされるなど、本格的なサラダが楽しめるようになってきました。
大手、中小を問わず、スーパーマーケットでは従業員の確保が大変な様子です。そのため、これまでスーパー内で行われてきたカット野菜の容器詰めは「セントラルキッチン」が代行して行うようになってきています。この転換時にサラダ容器の開発も手伝い、サラダ商品の多様化にも結びついているわけです。
果物の包装も、最近ではミカンやブドウなどがプラスチックの容器に入れて売られているのを目にしたことがあるのではないでしょうか。これまではスーパーで袋詰めを行ってきましたが、労働力不足を背景に産地で直接プラスチック容器に詰め込んでしまいます。スーパーの従業員は店に並べるだけでいいという省力化につながります。
食品容器のトップメーカー、エフピコ
このように、食品容器の進化は中食の様々な業態における変化をもたらしていますが、関連企業として注目されるのは、プラスチック容器を開発・提供するエフピコ(7947)です。広島県福山市に本社のある同社は、食品容器(トレー)のカラー化を初めて手がけたメーカーであり、市場でトップシェアを占めています。
プラスチックの食品容器はあまりにも身近な存在であるがゆえに、普段はあまり意識することなく使い捨てているのではないでしょうか。しかし、過去10年間のエフピコの株価推移を見ても、中食の拡大を支える重要な存在として成長を続けていることがよくわかります。
石原 耕一