つまずきは2017年10月の値上げから?

鳥貴族はかつて大阪でも郊外にある居酒屋として知られていました(現在も本社は大阪市)。その後、国内のデフレ経済の進展もあり、先述した通りメニューが単一価格で提供されコストパフォーマンスの高い居酒屋として人気となります。2014年7月のIPO後に店舗数は急拡大しました。

その後、売上高は2014年7月期146億円から2017年7月期293億円と3期で倍増しました。ただし2017年7月期は出店の増加にともなう販管費の増加から増収減益となったことなどを受け、2017年10月に全品280円を298円に、28年ぶりの値上げを実施しました。

当時、利用者の間で賛成と反対で大きな論争となった鳥貴族の値上げでしたが、それだけ当時の鳥貴族が人気だった証です。ただし今振り返れば、値上げがつまずきの第一歩ということになります。

結果的に鳥貴族は値上げでバブル的な人気が落ち着きました。一時は店に入るのに何時間も待つ必要のあった繁華街の人気店ですら、予約なしで入れるようになり風景が一変します。そして値上げにより売上の拡大はなされながらも、利益額の減少が続きました。

それでも2019年7月期は新規出店を止めて店舗のスクラップ&ビルドを行い、経営状態が上向き始めます。しかし新型コロナウイルス問題が2020年に入り発生して、2021年7月期Q3は経常利益▲20億円の赤字を計上するに至りました。

コロナ禍で目標を下方修正 新業態に20億円の投資

【出典】株式会社 鳥貴族ホールディングス「中期経営計画(2021年8月~2024年7月)」

2017年10月の値上げは当時の景気状況及び同社の経営状態を考えれば妥当な判断だったとも考えられますが、結果的に同社の経営の潮目が変化する出来事となってしまいました。