音声流出だけが希望かも
日本とは異なり、北欧などの先進諸国の一部では、“所得・資産の精度の高い捕捉と再分配の実現"は合意形成が済んでいます。これは他にも、日本のコロナ禍における個人情報のデジタル活用が進まない現象等ともリンクしています。
なぜ、日本がずっと手前の地点で立ち止まっているのか。その大きな要因のひとつが政治・行政への信頼の欠如です。
ここで、冒頭の平井大臣の発言に戻ります。デジタル庁は「デジタル社会形成における10原則」を掲げています。いくつか列挙すると、「オープン・透明」「公平・倫理」「包摂・多様性」「新たな価値の創造」などです。
この今日的な原則と、組織トップの「脅しておいた方がよい」「完全に干す」という30年前のビジネススタイルから全く未更新の発言は、やはり違和感が強い。“なんだか信じられないんだよなぁ"と多くの人が思うのも自然な気がします。
前述の田崎史郎氏のTV番組コメントによると、問題の内閣官房IT総合戦略室の会議をオンラインで視聴できたデジタル庁職員は約90人とのこと。そこから音声が流出したらしい。
「会議の模様がダダ洩れで、セキュリティとか大丈夫なの」という意見もあるようですが、この音声流出には希望を感じました。“このトップの発言は問題だ"という価値観を持った職員がいるということですから。この音声流出は、ある種の公益通報に近いと個人的には思っています。
参考資料
- 田崎史郎氏、平井大臣「完全に干す」発言に「何が問題かまだよく分からない」(2021年6月14日、デイリー)
- DXレポート2 中間取りまとめ(2020年12月28日、経済産業省)
-
デジタル社会の実現に向けた重点計画(2021年6月18日、デジタル庁)
榎本 洋