日本では金融知識に自信がある人は7~8人に1人
ファイナンシャル・プランナーの仕事をしていると、たまに、「日本ではまだまだ金融リテラシー(お金の知識・判断力)が高いとは言えない」とか、「金融リテラシーを高めないといけない」といった話を聞くことがあります。
ここで1つ質問です。
「私は金融知識に自信がある」と思っている人がどのくらいいるか、ご存知でしょうか。
以下に紹介する調査によると、自信がある人の割合は、日本では13%なのだそうです。7~8人に1人といったところです。対して、米国では自信がある人の割合は73%ということでした。
自信の度合いはあくまで自己評価ですから、実際に金融知識があるかどうかは別問題かもしれません。しかし、共通の正誤問題の正答率でも、米国の方が10%ほど高いとのことですので、自信の有無の差ほどではないにしても、全体的に金融リテラシーを高める余地はまだまだありそうです。
日本初の大規模な金融リテラシー調査
今年の6月頃、一部の新聞で「最も金融リテラシーが低い県は山梨県」といった記事を目にした方もいらっしゃるかもしれません。その出典元になっているのは、金融広報中央委員会から公表された「金融リテラシー調査(2016年)」です。
これは、18歳以上の25,000人を対象に金融知識に関する正誤問題を問いてもらい、その正答率をもとに、いろいろな切り口で分析された調査でした。金融リテラシーに関しては国内初の大規模な調査というだけあって、地域特性などのあたりは、読み込むほどに味わい深い調査結果となっています。
金融リテラシーが高い人の特徴
この調査では、金融リテラシーが高い人(=正答率が高い人)には、以下のような特徴があるとしています。
【金融リテラシーが高い人の行動特性・考え方】
- 金融・経済情報を見る頻度が高い
- 家計管理がしっかりしている
- 金融商品購入時には、他の金融商品と比較している
- 金融商品購入時には、ウェブサイトでの調査や金融機関等への相談を行い、商品性を理解した上で購入している
- 資金計画を立てている
- 緊急時の資金的な備えを持っている
- 損失回避傾向や横並び意識は低めである
また、正答率が高い人ほど、株式等のリスク性資産に投資する人が多い傾向にあるようです。
総じて、やっぱりというか、想定通りの調査結果ではありますが、いろいろと示唆に富んでいる内容でもあります。
金融リテラシーが高い人ほど商品比較をし、商品性を理解しているけれど・・・
最も着目したいのは、3と4の、金融商品を購入する時に、他の商品と必ず比較しているかどうか、商品性を理解した上で行っているかどうか、という点です。同調査の内容を少し詳細に見てみることにします。
【株式を購入したことがある人の割合】
高リテラシー層(以下、高リテ層)55.3% 低リテラシー層(以下、低リテ層)11.3%
注:調査では、正答率の上位約20%を高リテラシー層、下位約20%を低リテラシー層と定義されています。
【他の商品と比較した人の割合】
生命保険加入時: 高リテ層61.1% 低リテ層48.5%
借入時: 高リテ層64.6% 低リテ層42.4%
資産運用を行う時: 高リテ層71.8% 低リテ層44.4%
【商品性を理解せずに購入した人の割合】
商品性を理解せずに投資信託を購入: 高リテ層18.3% 低リテ層53.2%
商品性を理解せずに外貨預金等を購入:高リテ層11.9% 低リテ層48.3%
高リテラシー層ほど、金融商品を購入する時に他の商品と比較し、商品性を理解した上で購入していることは一目瞭然です。
低リテラシー層のうち、よく分からないままに株式というリスク性の高い金融資産を購入したことがある人が10%以上いることも心配なところです。ところが、高リテラシー層であっても、商品性を理解しないまま投資信託や外貨預金等を購入したことがある人が10%以上存在していることは注目に値する点です。
あくまで推測になりますが、販売側から勧められるままに購入してしまうケースがあることや、いくら調べたり説明を聞いたりしても理解が難しい金融商品が増えていることが考えられそうです。
商品比較と、理解できるまで調べることが高い金融リテラシーを得る第一歩
調査では、高リテラシー層は損失回避傾向が低いとされています。つまり、リスクを恐れずにリターンを追求する傾向が強い層と言えます。ですが、商品性を理解しないまま投資をすることと、リスクを恐れないこととは異なります。
自身の金融リテラシーを高めること自体は目的ではありません。あくまで、自らの資産を守り、投資のリターンを高めるための手段です。一方で、金融商品の購入などの実際の行動をしながら身につけていく性格のものでもあります。
年末はボーナスシーズンということもあり、何かと金融商品の勧誘が多くなります。ふるさと納税やNISAなど、「今年の枠は今年のうちに」ということを意識する機会も増えますし、年明け1月から対象者が拡大する個人型確定拠出年金(iDeCo)についても、各金融機関とも口座獲得に向けて積極的になっています。
気持ちがざわざわするかもしれませんが、既に金融リテラシーが高い人も、そうでない人も、商品比較と、理解できるまで調べることを怠らずに臨んでいきたいものです。