財務省の財政制度等審議会(財務省の諮問機関)は5月21日、新型コロナウイルスへの対応や社会保障などの財政健全化をまとめた建議(意見書)を、麻生太郎財務相に提出しました。
特に社会保障の見直しについて、75歳(後期高齢者)が急増する2022年度からの3年間は「一貫した改革努力」が必要としました。
ただ財政審の建議と聞いても、なかなか耳慣れないのではないでしょうか。そこで今回は財政審の建議の意味や、建議のなかでも我々の生活に直結する社会保障の分野に絞って解説していきます。
財政審の建議とは
建議とは、立場が上の人や機関について、意見を述べることです。よく似た言葉に「答申」もありますが、これは上位の人や行政官庁の問い(諮問)について、意見を述べることです。
この建議書の内容が、政府が6月に決定する経済財政運営の指針、いわゆる「骨太の方針」に反映されていく、というのが通常の流れです。
それでは、建議書にはどういった内容が含まれているのでしょうか。
高齢者1人を現役世代2人以下で支える時代に
まず、社会保障全般については、「受益(給付)と負担の不均衡を是正し、制度の持続可能性を確保するための改革が急務。団塊の世代(1947~49年生まれ)が後期高齢者になり始める2022年度以降、歳出改革の取組を強化していく必要」があると提言されました。
この内容から、解説していきます。
「日本は少子高齢化が進んでいる」というのは聞いたことがあると思いますが、実は世界の中でも飛びぬけて急速に進んでいます。
財務省によると、2014年において、日本の総人口は1億2708万人。そのうち65歳以上の方は3300万人です。
65歳以上の方ひとりを20~64歳の方2.2人が支えていることになります。
ところが2022年度以降、団塊の世代が65歳となり、基礎年金の受給がはじまることなどから、社会保障の給付金は増大することが見込まれています。
2025年には、65歳以上の方の人口は3657万人に。65歳以上の方ひとりを20~64歳の方1.8人で支えることになると推計されています。
その後、2040年には第2次ベビーブーム世代(1971年~74年生まれ)が、全員65歳以上になるのです。
その間、20~64歳人口は急速に減少、2040年以降も減少が続くことが見込まれています。つまり、支えなければいけない高齢者が増え続けるのに対し、それを支える現役世代は減り続けるのです。
こうした状況を踏まえ社会保障、とりわけ費用の大きい医療と介護分野をどう見直していくかが喫緊の課題となっているのです。
それでは、さいしょに医療分野の提言について見ていきましょう。