2021年第2四半期のHSBCアセットマネジメントの投資見通しで、グローバル・チーフ・ストラテジストのジョー・リトルは以下の結論を提示しています。

  • 経済システムは立ち直り、経済成長率は回復しているが、市場は景況感の強さを織り込み済み
  • 期待リターンは過去1年間に大きく低下
  • 投資家は投資対象を新興国市場とオルタナティブ市場へ構造的に傾斜させること、バリュー株の復活に乗じて景気循環株への傾斜を強めることを検討すべき
  • 債券利回り上昇は最も大きな懸念だがリスクは限定的

経済成長見通し

当社は「復興する経済」という投資テーマを引き続き支持しています。アジア以外の地域の主要経済圏のいくつかで経済活動が再開され始めているためです。

しかし将来の経済成長に対する強い期待感がこれまでにすでに市場価格に反映されているため、今後の価格変動は投資家の期待感と比較してどの程度の好材料が出てくるのかということに左右されます。従って今後、投資家は慎重な資産配分を行うべきであると当社は考えています。

市場インプライド成長シグナルが上昇すれば、将来の経済成長に対するより強い信頼感が市場価格に織り込まれることを示します。現在の指数は、市場に織り込まれた経済成長率が新型コロナウイルスの感染拡大前の水準まで回復していることを示唆しています。

各資産クラスにおけるロング・ショート・ポートフォリオとボラティリティが同等のポートフォリオの推移。図表はグロース資産の投資収益とディフェンシブなマクロ資産の投資収益との比較を示す。


期待リターン

投資家の一般的な心理に関する広範な調査は、その全てが将来の市場リターンへの経済的信頼感と楽観的な見方が大幅に上向いていることを示しています。当社は、実際には投資家の強いセンチメントは常に期待リターン・モデルとは負の相関にあることを観察してきました。

当社調査では期待リターンが過去12ヶ月間にわたって大きく低下しています。大半の資産クラスのバリュエーションが中立ないし割高と考えられる水準に達しているためです。全体的にみて当社はグローバル債券の長期的な期待リターンは米ドル建てで年率約1%、グローバル株式は同4.4%と推測しています。


アセット・アロケーション

楽観的な見通しはすでに市場に織り込まれているため、投資家はそれぞれのベンチマークや「ホーム・ポートフォリオ」から大きくかい離したポジションをとることに慎重であるべきだと考えています。

しかし現在の低リターンの環境においてアウトパフォームを達成するための戦略として、中期的にミスプライシングが生じている一部の市場に、ある程度注力することを当社は支持しています。

現時点では当社はこうした市場の多くが「安全余裕率」を有する投資機会にあたるとは考えていません。月次動向を追跡している300の資産クラスの中では、アジアの債券市場に明らかに異例のバリュエーションが見られます。

また、インフラ投資などといった流動性の高いオルタナティブ資産クラスを通して、リターンを拡大することにも戦略的な機会が見いだせると考えられます。


当社は慎重ではあるものの、市場予想を上回るリスクが「循環的な上振れ」につながることもあると見ています。

米国ではバイデン大統領が打ち出した景気刺激策によって個人消費が上振れる可能性があり、当社はそれによって米国のGDPが2022年半ばまでには新型コロナウイルスの感染拡大前と同水準か、あるいは上回る水準まで上向く可能性があると考えています。

また、英国についても大きく滞積した需要を背景に経済成長が力強く反発することもあるとみています。一方、欧州に関しては今後12~18ヶ月間の見通しが極端に悲観的ではないかと考えています。

結論として、当社はバリュー株と景気循環株の期待リターンには歪みが生じているとみています。過去12ヶ月間にわたって欧州とASEANの市場に出遅れが見られた理由は、それらの市場でバリュー株や景気循環株の比重が大きいことや、テクノロジー株や優良株の割合が低いことにあります。

今年の残りの期間を通じての経済回復が予想を超える可能性もあると考えているため、資産価格にオーバーシュートが発生することもあり得るとみています。そのためバリュー株の回復の継続を生かすための循環株投資は、引き続き合理的であるとの結論を提示しています。

リスクとリターン

当社は債券利回りの上昇が経済の回復を妨げかねないという懸念を抱いています。その上で全体としては、米国債の利回りの上昇には基本的な制約がいくつか存在するとみています。

まず、インフレが長期的に緩やかな状態に維持されると考えられることです。次に、中央銀行の政策当局はインフレ見通しにおいて楽観的であり、資産買い入れや低金利政策をさらに長期化させることを約束し、また一段と革新的な金融政策を準備しています。

さらに、債券投資市場では米国10年債の利回りが、債券プレミアムが1%であることを示唆する目安水準の2%に接近しています。HSBCアセットマネジメントはこの利回りは現在のインフレリスクに十分に見合うものであるとの結論を提示します。

加えて、米連邦準備制度理事会(FRB)が緩和的姿勢であることと、世界的なマクロ経済の回復が米ドルの為替レートを緩やかに下押ししていることから、当社は、米ドル為替レートが踏み上げられるショートスクイーズが台頭するというもう一つのリスクも回避されるとみています。

したがって、復興する経済のモメンタムは維持されると確信しています。ただし回復は極めて重要な段階にあるため、マクロ経済や政策、新型コロナの感染状況をなお注意深く観察しています。

HSBC アセットマネジメントでグローバル・チーフ・ストラテジストを務める、ジョー・リトルは以下のように述べています:

「2021年第1四半期には、世界経済が回復モードに入り成長率を取り戻す中で、経済復興の動きが本格化しました。この動きは第2四半期にかけても継続するとみられ、経済活動の再開や繰延需要、財政刺激策が相まって、すでに堅調な企業利益見通しにさらに弾みをつけると考えられます。

しかし世界経済に関する楽観的な見通しはすでに市場価格に織り込み済みであり、景気循環型資産への投資を選好することは机上で考えるほど容易ではありません。私たちは独自の分析に基づき、また各国の中央銀行が低金利政策を長期化する姿勢にあることとインフレ率が長期的に上昇する可能性が限定されていることを勘案し、現在の低リターンの投資環境での経済投資では投資対象として新興国市場やオルタナティブ資産を基本的に重視することや、バリュー株式への投資を循環的に高めることがアウトパフォームにつながると見ています。」

HSBCアセットマネジメント チーフ・グローバル・ストラテジスト ジョー・リトル(Joe Little)