2021年5月19日に行われた、住友金属鉱山株式会社2020年度決算・経営戦略進捗状況説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:住友金属鉱山株式会社 代表取締役社長 野崎明 氏

2020年度決算・経営戦略進捗状況説明会

野崎明氏(以下、野崎):みなさまこんにちは、社長の野崎でございます。みなさまには平素、当社事業に対し格別のご理解、ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。本日も新型コロナウイルス感染拡大防止のため、オンラインによる経営戦略進捗状況説明会となりましたことを、何卒ご了解のほどお願い申し上げます。

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さて、2020年度の決算ならびに2021年度の業績予想については先日発表済みですが、本日は、事業を取り巻く状況なども含めご説明したいと思います。

総括① 2020年度の振り返り(生産・販売・プロジェクト)

2020年度当初は、新型コロナウイルス感染拡大がどのように事業・業績に影響するか懸念されていました。新型コロナウイルスは想定を上回る深刻な状況ですが、当社事業の計数結果に関しては、概ねみなさまが想定された範囲内に収まったと思います。

これは、コロナ禍においても、生産現場が感染防止に努めながらきちんと操業できたことによります。素材・材料のプロデューサー、サプライヤーとして、安定供給をまっとうする役割が果たせた結果と評価しています。

中間期の説明会では、このような苦しい時期こそ事業プロセスの各段階での競争力強化の必要性をご説明しましたが、これらも一定程度実現できたと思います。また、当社へのサプライチェーンも平常どおり維持されたことは大きな要因であり、取引先の各位には大変感謝しています。

総括② 足元の経営課題

4ページ、足元の経営課題をご覧ください。いつも申していますが、当社のコーポレートガバナンスは企業価値の最大化と規律ある経営の両立としています。企業価値の最大化を実現するのは、成長戦略の推進と事業基盤の強化です。個別事業の成長戦略については後ほど触れますが、ここでは事業基盤に関わる部分について、足元で感じている経営課題をお話しします。

まず社会的課題が経営に及ぼす影響についてです。ここでは3点、カーボンニュートラル・DX・人材戦略を挙げています。この3つを対処すべき課題と考えており、次期の中計でもテーマに挙げたいと思っています。詳細については、後ほど触れる機会がありますが、問題意識として、カーボンニュートラルについては、これに対応できなければ選別されるリスクがあると考えています。 デジタルトランスフォーメーションについては、これを怠れば競争力を削がれる懸念がありますし、セキュリティ問題への対応も重要となります。3つ目の人材は、いつの時代も最優先の経営課題ですが、対応を誤れば企業として活力を失い、存続の問題に関わってきます。

これらは、いずれも住友金属鉱山のカーボンニュートラル、住友金属鉱山のDXとして、身の丈、実力を鑑みながら推進していきたいと考えています。

次に、当社事業に関連する固有、かつ足元での課題についてです。1つ目の進出先国の情勢は、我々の事業についてまわる問題ではありますが、特に足元では具体的に南米での資源産業への課税強化の動きなど、ある意味資源ナショナリズムの一形態と言える事態が起きています。

2つ目は競合技術の台頭です。例えば、低品位ニッケル酸化鉱からニッケルを抽出する技術について、当社はHPALを持っていますが、乾式製錬によりニッケルマット製造を行おうという動きが出ています。

ニッケル鉱石の品位、エネルギーコスト、スラグ処理、マットから先の精製技術など、いくつかの技術的、経済的、環境的課題があると思いますが、同様の懸念を指摘されていたNPI(Nickel Pig Iron:ニッケル銑鉄)がClass2ニッケルの主流となった事実もあります。当面、当社はHPALという環境負荷の少ない技術を磨く方針ですが、革新的な新製錬プロセスは常に探求しています。

最後は、今後の長期の課題になると思いますが、資源・素材の供給責任とコストアップについてです。環境重視社会の到来期待で、銅、ニッケルなどの非鉄金属の消費増大や成長も期待されています。事実、価格も上昇してきています。

今後、資源開発はより厳しい条件になると想定します。また、その生産、消費にかかるエネルギーはクリーンで、高コストなものを選ぶことになると思います。GHG(温室効果ガス)抑制のための新しい技術開発のための研究開発、環境対応の最適技術の導入のための投資など、コストも上がってくると思います。

リサイクルについても、集荷・分別のコストを含め、精製には一般に考えられているよりも手間がかかると思っています。素材・材料の供給を行う会社として、これらの課題に対処していく必要があると考えています。

総括③ 安全に対する取り組み

2020年度の実績について、まず安全に対する取り組みです。「重篤災害を起こさない」「働く者を傷つけない」、そのためには、地道な努力の繰り返ししかありません。しかし、スライドのグラフが示すように、実力は過去10年、頭打ちとなっています。

現在、現場が取り組んでいる三現主義などと矛盾しないもので、当社がまだ取り組んでいない手法は存在すると思っています。モデル職場など、限られた部分でのテスト導入により、現場を混乱させない新たな取り組みが考えられないか、担当部門に指示しているところです。

1)業績推移(2015年度~2021年度予想)

業績および業績予想について、お話をします。7ページをご覧ください。こちらは、2015年度から2021年度予想の業績の推移です。途中、会計基準の変更に伴い表示が変わっていますが、2015年、2016年は海外銅鉱山への投資の大型減損があったため、損益は大幅に悪化しています。しかしそれ以降は、税引前利益で1,000億円内外という状況になっています。

2)2020年度業績および2021年度業績予想

8ページは、2020年度の業績および2021年度の業績予想ということで、こちらに2019年度の実績も加えて記載しています。2020年度は、結果として過去3番目の業績となりましたが、新型コロナウイルスの影響もあり、当初は苦戦が予想されました。

したがって、なんらかの手を打つべきだと考え、直接的に収益を上げる手立ては難しいのですが、キャッシュフローの改善は知恵を出せばできるということで、対応を指示しました。

これに対して、戦略の遂行に影響しない投資の圧縮、先送り、操業に影響しない範囲でのOPEX(操業費用)の圧縮など、300億円近い改善を行いました。この中には、海外の銅鉱山の大胆かつスピーディーなコストカットの効果も大きく貢献しています。

一方で、相場上昇による棚卸資産の増加もありましたが、予算編成時から棚卸資産圧縮を指示していたため、こちらも相場要因を排除すれば100億円程度の圧縮ができたと評価しています。一部操業度が上がったことにより当初目標には達していないのですが、圧縮はできたということです。

3)税前損益分析 2020年度実績vs2019年度実績

9ページをご覧ください。9ページは、2019年度と2020年度の実績を比較した、要因別の滝グラフとなっています。相場要因でプラス248億円の好転ということで、銅精鉱の加工収入の下落、また地金販売の厳しい販売環境の影響を吸収して余りあるかたちとなりました。

昨年まで大きな課題であった生産数量未達は歯止めがかかりつつあり、コスト単価差も好転しています。材料部門も好転し、先ほど申したような経費等の削減、コスト削減の効果も生じています。

4)税引前損益分析 2021年度予想vs2020年度実績

10ページをご覧ください。2021年度については価格変動要因の影響が予想されますが、計画どおりに操業することが前提となります。主要価格の前提は銅が1トンあたり7,800ドル、ニッケルは1ポンドあたり7ドルで試算しています。

現時点で、依然として最も懸念されるリスクは、新型コロナウイルス感染症の拡大による操業停止です。これについては、万全を期してそのような事態にならないよう注意していきます。

5)財務状況の推移

財務状況の推移です。2020年度決算は、自己資本比率が59.1パーセント、ROAが5.25パーセントとなっています。ROAについては、中間期の実績は2パーセント程度でしたが、年度後半の収益アップを主因に5パーセント超まで改善しました。これは先ほど申し上げたキャッシュフローの改善策、棚卸資産の圧縮策がサポートしたものと考えています。

財務指標に関していつも申し上げていますが、大型の資源開発案件では、限られた時間の中で多額の支出の意思決定が求められます。成長戦略の推進実行のためには健全な財務体質を維持することが肝要と考えています。

また、今日、私どもが対応を求められている課題について、投資しても結果が収益に跳ね返らないものもあります。例えば、2021年度から導入した社内のカーボンプライシング制度は、CO2削減に寄与する投資のインセンティブにはなりますが、人為的に上乗せした部分が目に見えるかたちでは収益化しません。

私どもはTCFDに賛同しています。ただ、今後TCFDのシナリオ分析にあるリスク実現を回避する局面、例えば炭素負荷金のようなものが制度化された時に、それとオフセットする段階になれば経済性をはっきり表現できますが、それとて追加的に収益性をアップさせるものではありません。

これまで、企業は公害防止など事業継続のための投資を行ってきましたが、このカテゴリの投資はこれまでの延長線ではない伸びになると考えています。このような社会の要請に対応するさまざまな投資、支出に備えるためにも、しっかりと稼げる事業体質にしたいと思います。財務体質、資産効率の強化は、事業の一層の発展と持続性維持の役割を兼ね備えていると考えています。

6)設備投資実績(2020年度実績vs2020年度計画)

12ページは、2020年度の設備投資の実績です。計画比マイナス190億円ということで、351億円となっています。これは一般投資の圧縮、先送りや、計上時期のズレが主因です。成長戦略投資については、事業部門、研究開発部門とも、計画どおり推進しています。

7)設備投資計画(2021年度)

13ページは、2021年度の設備投資計画ですが、一転増加し、856億円で計画しています。この中には、カナダのコテ金鉱山の開発工事支出の本格化や、金属材料系で2020年度からずれ込んだ投資も含まれています。

8)設備投資・投融資計画(対18中計 比較)

14ページは中計との比較で、2019年から2021年の計画と、足元までの実績プラス計画を比較しています。投資は対計画で大幅減となっていますが、これは大型案件であるPomalaaプロジェクトのニッケル関連投資の意思決定がずれている影響によるものです。

いずれにしても、成長戦略投資の時期はずれますが、着実に実行していく予定です。

9)キャッシュフロー(2020年度実績)

15ページは、キャッシュフローの説明です。内容については省略します。

10)株主還元(配当予想:2020年度・2021年度)

16ページは株主還元についてです。当社は配当による株主還元を行っており、業績連動型を採用しています。今次中計期間中は、配当性向35パーセント以上を目指しています。

2020年度、2021年度の配当予想はすでにご案内のとおりですが、2020年度の予想は過去最高となっています。2021年度についても、今計画している数字はそれを上回るというかたちです。

1)QB2プロジェクトの状況(進捗・今後の予定)

成長戦略の推進状況です。18ページをご覧ください。これは、QB2、ケブラダ・ブランカ2プロジェクトの状況です。ご案内のとおり、新型コロナウイルス感染症の影響で、昨年建設をいったん中断しましたが、現在は再開しています。今年4月には、プロジェクト全体の進捗の中間点を突破したところです。

プロジェクトとしては、新型コロナウイルスによる中断から比較的早く再開にこぎつけましたが、現地への動員は、感染防止への配慮のため1万人弱でコントロールしています。直近の数字は、9,500人を超えたという報告を受けています。

このプロジェクトは、大型の港湾設備、淡水化装置、あるいはパイプラインを埋設するといったインフラ関係において難度の高い工事を要するプロジェクトですが、新型コロナウイルスの影響を除けば、順調に進捗しています。

2)Pomalaaプロジェクトの状況(検討状況・今後の取り組み)

19ページは、Pomalaaプロジェクトの状況です。依然として、諸手続きを準備している状況で、想定よりも少し遅れが出ています。Pomalaaについては、新型コロナウイルスの影響もあり、許認可、あるいはパートナーとの協議に若干の遅れが見られますが、許認可の取得については着実に進んでいます。

遅々とした状況ではありますが、進捗はしていますので、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。

3)電池材料増強の状況(現況・展望)

20ページは電池材料増強の状況です。電池材料については、2027年までに正極材で月あたり合計1万トン体制の確立を目指すということで、計画を立てています。

電気自動車(EV)の導入をめぐる各国政府の排出規制方針の打ち出し、あるいは自動車各メーカーの動向は、環境議論の高まりにつれて、より具体的、急激になっていると理解しています。当社は、既存顧客との情報連絡を密にし、各お客さま・マーケットの動きに感度を高め、タイムリーに対応していきたいと考えています。

そのような中で、2020年度はNCAの月300トンの増産投資を決定し、現在工事を行っています。引き続き、成長戦略を推進する所存です。

4)コテ金開発プロジェクトの状況(進捗・今後の予定)

21ページは、資源関係のコテ金開発プロジェクトについてです。2020年度は建設開始を意思決定し、工事に着手しています。ここまで、新型コロナウイルス感染防止のコントロール、工事進捗も順調に推移しています。

近隣の先住民との関係も良好で、鉱業国のカナダにおいても、新型コロナウイルスの中で建設に着手した有力プロジェクトと評価されています。建設開始時にはトルドー首相も駆けつけたプロジェクトとなっています。

加えて、周辺の鉱区もあるということで、権益鉱区内の探鉱も順調に進んでいます。

1)資源 ①菱刈鉱山の状況

足元の課題と重点施策についてです。23ページは菱刈鉱山の状況です。菱刈鉱山については、中計で計画したとおり、年間6トンの産金を行っています。

2020年末の可採金量は159トンとなっています。現在、下部鉱体という、温泉水位の下部を開発するために、マイナス80メートルのレベルで、お湯を抜く抜湯室を作る工事を実施しています。鋭意、温泉水位を下げているところです。

1) 資源 ②海外銅鉱山の状況(モレンシー、セロベルデ、カンデラリア)

24ページは海外銅鉱山の状況で、モレンシー・セロベルデ・カンデラリアの3鉱山について記載しています。いずれの鉱山についても、生産計画はご説明しているとおりです。

海外銅鉱山について、特に南米は新型コロナウイルス影響の注視が必要です。生産実績あるいは計画の変動など、当社が参加している公式のコミッティー(委員会)などばかりではなく、日頃のコミュニケーションから情報収集していきます。

一番のリスクは新型コロナウイルスの感染状況となりますが、先ほど申し上げたような、各国の鉱業税制等にも注意が必要な状況です。

1)資源 ③シエラゴルダ銅鉱山の状況

25ページは、シエラゴルダ銅鉱山の状況です。ピットが写っていますが、掘削が進んで深くなってきました。当社から派遣した支援チームの貢献もあり、生産についてはかなり落ち着いてきました。鉱石品位もアップが予想されているため、今期は銅生産も増産の予定です。本プロジェクトについては、持分権益について戦略的な選択肢の検討を継続しています。

2)製錬 ①国内製錬所の状況

26ページは国内製錬所の状況です。銅製錬の東予工場は、下期に約1ヶ月間の定期補修が予定されているため、生産計画は対前年で若干減となっています。

ニッケル工場の電気ニッケル、地金の生産計画は、原料調達あるいはフィリピンの中間品の生産状況を鑑み、5万7,000トンで計画しています。

硫酸ニッケルについては、外部販売向け、また電池材料向けの社内消費が用途ですが、2020年度はニッケル工場・播磨事業所合わせて過去最高の生産量の実績となりました。

日向製錬所については、1万3,700トンの生産を計画しています。

2)製錬 ②CBNC/THPALの状況

27ページは、フィリピンのコーラルベイ、タガニートです。生産計画は、コーラルベイが2万トン、タガニートHPALが3万3,000トンとなっています。当社ニッケル事業の中核的な中間原料ソースとして、安定操業を目指していきます。

足元では、フィリピンのコロナ禍は収まっておらず、当社のHPAL工場周辺の地域でも、感染はむしろ拡大している状況です。感染防止に努めながら、慎重な操業を継続していきます。

また、地域の中心的な産業として、地域・環境に配慮した事業を継続していく所存ですが、スライドにあるとおり、今年3月にフィリピン環境天然資源省の「2020年鉱物産業環境大統領賞」を受賞しています。2拠点が同時に受賞したのは初めてのことです。

3)材料 ①電池材料 市場動向・当社への影響等

28ページは電池材料、市場・当社への影響等ということで、2つのグラフを記載しています。スライド左側がEVの市場の見通し、右側が正極材の市場の見通しです。2021年度はマーケット全体が回復傾向にあるため、通常の生産販売を継続していく見込みです。

今年4月には、電池サプライチェーン協議会が発足しました。重要性を増してくる電池関連素材・材料のサプライチェーン確立、その他さまざまな取り組みのための協議会ですが、当社も参画しているところです。

3)材料 ②機能性材料 各事業/主要製品の状況

29ページは機能性材料についてです。スマートフォン、PC、テレビ、あるいは車載の機能性材料のマーケットは、堅調と見ています。また、2021年は通信の5G化が本格化するということで、結晶・粉体関係の使用量の増加も見込んでいます。この流れをうまくつかむとともに、将来のターゲット、あるいは、さらなる成長を見定めていきたいと考えています。

1)気候変動 GHG削減の取り組み

最後のパートになりますが、「2030年のありたい姿」実現に向けた活動の推進についてです。31ページは、気候変動でGHG削減の取り組みを記載しています。ここでは3点、TCFDシナリオ分析、社内カーボンプライシング制度、菱刈鉱山でのバイナリー発電導入を挙げています。

政府による2050年のカーボンニュートラル方針が決定されるなど、GHG削減という社会的課題を取り巻く環境は、日々刻々と変化しています。冒頭に申し上げましたが、顧客のサプライチェーンの中でもGHG削減の要求は高まっており、これに対応できなければ採用競争で劣後する、あるいはまったく採用されないといったリスクがあり得ると考えています。

また、電力多消費型の産業でもあることから、使用グリッド(電源)の構成の影響は大きいところです。しかし企業として、生産プロセスでより低炭素負荷を目指す、あるいはエネルギー効率を追求する、改善する努力は続けていきたいと思っています。

また、最適技術:Best Available Technologyの採用については、常に経営として考慮しますが、その時のための財務体質の維持・強化も今後の検討課題と考えています。当社の事業としては、社会レベルでGHG削減に貢献できる製品の開発・供給にも注力していきたいと考えています。

菱刈鉱山でのバイナリー発電は、CO2の削減効果としては限定的ではありますが、このような取り組みを一つひとつ拾い上げていくということです。

2)その他主要施策の進捗状況と今後の予定

その他の主要施策の進捗状況と、今後の予定についてです。資源の有効活用、従業員の安全・衛生としては、「DX推進委員会」の発足を紹介しています。当社はいろいろな事業・部門があるため、ビッグデータの活用や通信インフラの整備、あるいはRPAの活用など、拠点レベルですでに実行されているさまざまな取り組みがあります。

「DX推進委員会」では、まず、これらを網羅的に把握して漏れがないか、あるいは、他所にも展開できるものはないか考慮しつつ、事業のあらゆる局面で、経営効率化・安全増進などに寄与する取り組みを議論・推進したいと思っています。当然、すべての裏側にはセキュリティという問題が存在しているため、これも含めて議論をしていくつもりです。

多様な人材、人材の育成と活躍について、人材戦略はテーマだと申し上げましたが、これも「ありたい姿」の一角を占めるテーマです。私が考えているのは、確保・育成・活用の3区分です。

人材の確保では、キャリア採用の積極的な実施、あるいは将来の事業展開に向けた人的配置の確認・補充を行っていきます。育成については、すでに現存するメニューが各種ありますが、この内容を吟味するとともに、昨年、全社的に導入した「式年改革プロジェクト」など、実践での経験値アップを狙っていきたいと思っています。活用については、働き方改革、社員の多様化、あるいは定年延長などベテランの活用、このような制度変更に伴うものを多面的に検討します。現在、担当部門では、人事報酬制度の抜本的改正に着手しているところです。

サプライチェーンにおける人権は、すでに取り組んでいるところですが、昨年4月に「住友金属鉱山グループ CSR調達方針」を制定し、2020年度末現在、99パーセントの主要な取引先様から、コンプライスの状況について確認いただいています。今後は、デューデリジェンスの仕組みの構築に着手することになります。

私からの説明は以上となります。ありがとうございました。

質疑応答:Class2ニッケルからClass1ニッケルへの転換について

質問者1:3月3日に突然出てきた話ではありますが、青山鋼鉄集団によるClass2ニッケルからClass1ニッケルへのコンバージョン(転換)の件について、ご質問させてください。中国の識者に聞くと、コンバージョンコスト(転換コスト)はかなり高いということで、HPALやその他の製法に比べるとランニングコストが高く、環境負荷もあるということです。また、この技術を使うにしても、鉱石から一貫で手掛けないと事業として成り立たないため、インドネシアに限定された動きではないか、といった見方があります。

一方で、予想外の供給増加ということで、マーケットが少し混乱している部分もありますが、例えば、Pomalaaプロジェクトを進める上でのリスク有無や、ニッケルマーケット全体への影響を含め、御社の知見を教えていただきたいと思います。

野崎:まずニッケルにおける、我々の業界内におけるClass2とClass1の定義から説明させていただきます。Class1の定義はラストリゾートのある製品で、LMEで取引されるものがClass1と我々は考えています。ニッケルは需要の変動が非常に激しい製品であるため、ラストリゾートがないニッケルプロジェクトは不安があります。当社の場合、新居浜に精製工場を持っており、国をまたぐことにはなりますが、最終製品まで安いコストできちんと作れるという自信を持ちプロジェクトに取り組んでいます。もちろん、LMEの倉庫に積極的に売っていくという方針ではなく、必要とされるお客さまに販売をしていくということです。

Pomalaaプロジェクトの推進についても、我々は同じような考えを持っています。最終的にはClass1のマーケッタブルなメタルにするか、あるいは社内消費の硫酸ニッケルのような製品にするかといった作り分けはありますが、いずれにしても流通の心配がないところで事業を進めていきたいと思っています。Pomalaaプロジェクトについては、足元で20名超のエンジニアと事務方がここ何年も従事し、今も意識高く仕事しており、当社がこれを推進していく姿勢に変わりはありません。

酸化鉱からニッケルマットを作る製法は、これまでも行われています。我々も出資しているSorowako(ソロワコ)のPTヴァーレインドネシア、あるいは、今は中止している可能性もありますが、ニューカレドニアのル・ニッケル社のドニアンボ製錬所は、いずれもサプロライトと呼ばれるニッケル品位が比較的高い鉱石を利用したニッケルマットを製造しています。青山鋼鉄集団が使うニッケル鉱石の種類まではわかりませんが、鉱石に含まれるニッケル品位に差があれば、コストにはねかえってくるだろうと考えています。

NPI(ニッケル銑鉄)を作るのであれば、ニッケルも鉄も商品ということになりますが、NPIのニッケル品位(含有量)は10パーセントから20パーセントの範囲であろうと思いますが、ニッケルマットになると70パーセントくらいの品位が求められます。言い換えれば、鉄を押し出す形になり、ここで発生するスラグの処理等はコストとして考えられるということです。

そのような意味では、ご指摘のとおり一気通貫で最終製品まで作るのがビジネスモデルとしては一番美しいのですが、精製技術について硫酸ニッケルを作るか、ニッケルメタルを作るかでは仕上げ方がかなり異なるため、ここをどうするかが一つの課題だと考えています。もちろん中間品としてマットを販売することも考えられます。ただ、この場合も下工程のキャパがどの業者・どの会社にあるのかというところで、ニッケルの産業は比較的統合されており、自社で作った中間原料を自社内で消費するか、あるいは最終製品化するかが主流で、外部購入原料を受け入れる大きな余裕があるところは現状ないように思っているところです。

正直なところ詳細がよくわからないので、我々も注視はしていますが、説明の中でも申し上げたとおり、NPIのようにマーケットの主流になる可能性を全く否定できるわけではありません。当社としても注目していきたいところです。

質疑応答:ペルーとチリの資源ナショナリズムについて

質問者1:ペルーとチリでの資源ナショナリズムについて、お伺いしたいと思います。ペルーは、6月の大統領選の結果にもよると思いますが、鉱山の国有化を掲げる急進左派の動きがあります。また、チリでは鉱山業に対して累進課税制度を導入する議案が下院を通ったという状況です。「極端なことは起こらない」というのがマーケットの読みではあるものの、どのような想定をしておくべきとお考えでしょうか?

野崎:ペルーは大統領選の予備選が終わりましたが、それぞれの候補者が鉱業事業から国益を確保したいと言っており、本選挙が終わって法制化されるまで、どのようなかたちになるか注視しているところです。

チリについても、累進課税的なロイヤリティ法案が下院を通ったことは承知していますが、これは一国の税制の問題であるため、一企業、あるいは他国が口出しできることではないと思っています。しかし、本質的に自国資源の活用ということを考えたときに、あまり苛烈な税制がプラス、マイナスになるのかというご判断はあると思います。

この件は、日本企業もかなり関係しているため、業界団体である日本鉱業協会を中心に情報収集や対応について考えています。ここまで話が進んでいる以上、ゼロ回答ということはないと思いますが、合理的な着地点を望んでいるというのが正直なところになります。

質疑応答:ニッケル製錬でのCO2削減の対応の可能性について

質問者2:カーボンニュートラルに絡んだところで、御社のニッケルサプライチェーンも最終的にはEVに流れるものが多いと思いますが、そのような中で、ニッケル製錬でさらなるCO2削減のために、対応を求められる可能性は将来的にあるのでしょうか?

野崎:私の個人的な意見もありますが、必ず問われてくると考えています。特に自動車メーカーとの取引では、最終的に炭素負荷がどうかという問題は避けては通れません。当社の場合は、HPALという製錬技術で中間原料を作っていますが、これは、火力を用いない湿式製錬ですので、CO2排出量において非常に優秀な技術です。

現時点での問題は、我々が事業進出する先は未開の地が多いため、電力から作らないといけないという点です。これが、既存のグリッドから電力を取ることができるのであれば、電源構成にもよりますが、我々が使う規模の発電、小規模では、従来の考え方だと石炭火力が経済的にも有利だということになります。CO2の排出は、ここにかなり負担がかかっているのが実態です。少なくとも今我々が考えている新しいプロジェクト等では、発電は石炭火力でなく、もう少しCO2負荷の低い、例えばLNGのようなものも検討範囲に入っています。このようなことに取り組まないと、開発も難しいと感じています。

質疑応答:人材・人事制度の抜本的な変更について

質問者2:人材、人事制度を抜本的に変えるという話ですが、現在の方法のどんなところに問題があるのでしょうか?

野崎:どこに問題があるかというのは、非常に答えが難しいところです。現在、国全体を挙げて、社会的な労働の流動性を上げていくということになっています。新卒で入った会社でずっと勤めるのが当たり前ではない時代になりました。ステレオタイプ化してはいけないとは思いますが、かなりの割合でそのような考え方の社員が当社にも入ってきていると思います。

裏を返すと、これからはキャリア採用を積極的に進めないと、抜けていった人材の穴を埋められません。そのときにそのような方がいきなりポストに就くこともあるということで、能力に見合った処遇をきちんと設計していかないといけません。正直なところ、当社は業績連動ではあるものの、年功序列型の部分もまだまだ残っています。それを否定するわけではありませんが、そのようなところをうまく組み合わせていかないと有為な人材が採れず、人材が流出していくリスクがあると考えています。

また、今回の新型コロナウイルスにより、働き方自体がリモートワークが当然というかたちになりました。私は、新型コロナウイルスの影響がある前からリモートワークを進めるように言っていたのですが、以前は、育児や介護の問題で働きたくても会社に来られない人がこれから出てくるということで、このような人材を流出させると企業の人材確保ができないため、リモートを進めるという流れでした。

現状、世の中が少し進み、リモートのほうが効率がよいという考えも社会的には増えてきています。そのような人たちのルールや処遇関係を整備していこうと、人事部門でいろいろと検討しているところです。

質疑応答:電池材料の成長戦略の進捗状況について

質問者3: 電池材料の正極材について、月産1万トン体制を目指すということですが、お客さまの開拓状況、マーケティングの進捗状況を教えてください。

野崎:電池材料の成長戦略については、非常にお話ししにくいところです。お客さまが密接に関連しており、尚且つ個別の施策は当社の戦略をそのまま表現することになるため、平たく言うと「いろいろなことは考えていますが、まだ申し上げられることがあまりない」というのが実態です。マーケティングについても、お客さまの展開の状況はどうなるか、国内で展開されるのか、あるいは海外に展開されるのか、海外でもアメリカもあれば、ヨーロッパもある、中国もある、ということで、これに沿ったかたちでベストフィットな戦略を考えていきます。お話しできる日まで、お待ちください。

質疑応答:HPALが持っている環境面での優位性について

質問者3:青山鋼鉄集団が行おうしているニッケルマットへの転換について、御社のHPALなどのプロセスが持っている環境面での優位性を具体的に解説してください。

野崎:いわゆる乾式マット製錬との環境負荷の差についてご説明します。通常、我々が想定している「マット製錬」について、鉱石は酸化鉱ですので、酸を取るために石炭などを入れてロータリーキルンで予備還元をします。その後、電気炉に投入し電気で強還元を行ってニッケルと鉄の合金を作り、最後に転炉を使用し硫黄を投入してマットにするということです。

いずれも使うエネルギー量は非常に大きいと推測しています。当社のフェロニッケル工場である日向製錬所も、操業はかなり効率化していますが、使用する電力はかなり大きいものです。先ほど、電源面でHPALも苦労しているという話をしましたが、これがどうなるかということが大きなポイントだと思います。再生エネルギーで電気炉を動かすのであれば、ロータリーキルンの部分を補うことができるため、それで回収できるわけではないものの追加的にCO2を出さずに済むかもしれません。

しかし、ニッケル鉄の還元は、「電気の缶詰」と言われているアルミニウムを作るよりも電力が必要と言われており、再生エネルギーで全部賄うのはこれもコストがかかる話です。

質問者3:一般論としては、乾式製錬よりも湿式製錬のほうがCO2排出は少ないという理解で大丈夫でしょうか?

野崎:湿式製錬は液の中での化学反応の話で、エネルギーを使って強制的に還元するということではないため、その理解でよいと思います。

質疑応答:中長期でのフェロニッケル事業の見通しについて

質問者4:スライド資料41ページのフェロニッケルについてお伺いします。ニッケル銑鉄が世界の主流になっているところで、フェロニッケル事業について中長期でどのようにお考えでしょうか? 安定生産と効率操業によるコストダウンと記載されていますが、その余力はまだあるのか教えてください。

野崎:フェロニッケル製錬について、当社の事業はほとんどそうなりますが、コストダウンに一番寄与するのは安定操業ということです。日向製錬所では先ほど申し上げましたとおり電気炉でフェロニッケルを作っていますが、安定して均一レベルの電力負荷をかけることが、実は一番のコストダウンになります。

今後の国内のフェロニッケル事業の有り様については、日本はまだステンレス産業が非常に技術的に強く、製品の品質も高いです。業界として、かなり合従連衡が進んではいますが、操業はきちんとしており、その中で当社の不純物管理などを含めた高品質な製品はまだまだご用命があると考えています。具体的に「これを行うとコストが下がる」という手はあまりありませんが、限られた設備、鉱石供給余力がある中で、いかに安定的に操業を進めていくか考えています。

質疑応答:全固体電池向けの正極材開発の状況について

質問者4:スライド資料20ページの電池材料について、全固体電池の正極材開発を目的とした電池研究所の拡張と記載されていますが、全固体電池向けについてアップデートがあればコメントをお願いします。

野崎:全固体電池については、2020年代に導入の見通しと言われており、当社も数年前から開発組合に参画して正極材を研究し、自動車メーカー、電池メーカー、負極材メーカーなど周辺との中で適したものを作るべく努力しています。この研究を一層進めるために、新居浜の電池研究所の拡充と、設備の増設を行っているところです。

質疑応答:カーボンプライシングの考え方や、その対象について

質問者5:社内カーボンプライシングの考え方について、一般的にコストとして捉えられがちなところをプラスサイドとするということで、面白い取り組みと感じています。これを活かし、事例として燃料の転換などの話があったように、次期中計などで具体的にアクションプランとして予算化していくプロセスになると考えていますが、どの程度の予算になりますか? また、リサイクルのプロセス拡大も考えられると思いますが、具体的にはどのような対象があるか解説してください。

野崎:社内カーボンプライシングの予算規模については、正直なところまだ見えていません。社内において、次の中計でカーボンニュートラル、DX、人材戦略を掲げる、ということは、これに資源配分をすることだと言っています。経営がこのような考えだと理解してもらい、積極的な取り組みを促していきたいと思います。

製造現場はなるべくコストを安く、設備を長持ちさせるというのが身についています。これは大事なことではありますが、社会の要求はそれを超えるところがあり、サポートする制度にしていきたいと考えています。

カーボンニュートラルについて、リサイクルで貢献するというのはご指摘のとおりです。大きな取り組みとしては、リチウムイオン電池のリサイクルについて、パイロットプラントで研究を進めています。プロセスは決まっているため、より効率的に実操業で動かし、どのような機械とプロセスの組み合わせがよいか、今最終の詰めを行っているところです。

質疑応答:既存のパイプラインを超えた先の経営資源の配分について

質問者5:長い目線で、非鉄リーダーを目指すという大きな柱は変わらないと思っています。今のパイプライン上のプロジェクトとしては、QB2、コテ、ポマラと主要3メタルである訳ですが、今後、資源ナショナリズム強化のほか環境面での強化があり、国内でのカーボン負荷を考えると、ニッケルの国内での投資は許容されるのでしょうか? 経営資源の配分について、既存のパイプラインを超えた先でどのような方向感を持っているか教えてください。

野崎:非鉄リーダーとしてのプロジェクトのパイプラインは、非常に重要だと思っています。長期ビジョンでうたっていますが、銅権益、ニッケルの自社権益、金の優良案件、まずはこれを目指します。銅はほぼそれに近いところまで来ていますが、資源は減耗資産のため、いずれ主力が衰えてきます。そのときのプロジェクトを必ず仕込んでおかないといけないということです。プロジェクトは5年、10年かかるため、そのような視線で検討しています。

金については、海外でも自社操業鉱山を持ちたいと思っていますが、投資規模、操業の規模の面で金の開発がそれに合致するサイズと思っており、コテ金鉱山のあとも金の案件については有力なものを追いかけていきます。

ニッケルはPomalaaが実現しても15万トンには足りず、ここを埋める次の案件はHPAL技術ではないかもしれないと思っています。ニッケル鉱源探査を継続的に行っていますが、HPALに合う鉱石の種類、電気炉に合う鉱石の種類というのはそれぞれ異なるため、それらを見た上で、自分たちは新しいプロセスが必要かもしれないという視点での研究を指示しています。当然、後工程となる国内の工場も増強する必要がありますが、サプライチェーンとして電池材料向けであれば硫酸ニッケルのほうが適しており、その場合は電力消費面等で電解を行う電気ニッケルとは異なるということで、炭素負荷の問題でもいくぶん軽減できると考えています。

質疑応答:新しい電源ソースの利用の計画について

質問者6:カーボンニュートラルについて、新しい電源ソースなどを利用する予定という話ですが、1年、2年先の話ではなく、これから10年において、現在使っている国内製錬を含めた電源ソースでどのような計画がありますか? まだ固まっていないのは理解していますが、お考えがあれば教えてください。国内は石炭に依存している電源が多いと思いますが、どのような対策が考えられるでしょうか?

野崎:国内では公共の電源グリッドを使用しており、地域の電力会社から電気を供給してもらっています。国レベルでは、昨年から非効率な石炭火力発電はフェードアウトし、徐々により効率的な火力発電、例えばLNGなどに切り替えていくことで、個別の発電所がリストアップされ議論されていると認識しています。

電力の問題は非常に大きな問題で、エネルギー基本法の対応について国レベルで議論され、電源構成についてもそこであらためて議論されているところです。昨今の2050年のカーボンニュートラル、2030年の、対2013年で46パーセントのCO2削減といったところをにらんだ大方針が出てくると考えています。

当社の事業所の多くは愛媛県の新居浜にありますが、ここの地域の電力会社でもLNG発電の導入や、非効率な火力発電からの順次フェードアウトをおそらく考えていると理解しています。また、各電源のCO2排出量の係数があるため、そこで会社の排出量を計算していますが、我々の手が届かないところの話もあります。

質問者6:御社として、例えばカーボン・クレジットやCCSに参画することにより、オフセットするという考えはありますか?

野崎:カーボン・クレジット、炭素税の話も国レベルで煮詰まっているわけではないと理解していますし、CCSやCCUも技術的に非常に大きなチャレンジとなる問題です。したがって、個社で対応するレベルの話ではなく、世の中の流れを見て企業として対応していきたいと考えています。そのときのために、財務体質は強固にしないと事業の継続性が担保できないというお話をさせていただいているということです。

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