日本の年金議論の根本的な誤り
全世代型社会保障への筋道を考えてみます。大別すると、2つの方法論が存在します。ひとつは、現在の社会保障の枠組みを維持しつつ、現役世代向け施策をプラスする方法。当然、現在より高負担になりますよね。もうひとつの方法は、現在の社会保障の総額を変えずに、その内容を大幅に組み替える方法。
本来的には、この方法論の“2択”を詰めるべきなのだと思います。しかし、日本は常に本質的な議論を避ける傾向がありますから。個人的には日本において前者の高負担志向が果たして合意形成できるのか、少しギモンです。そして、後者の内容組み替え案を考えるならば、経済同友会案は非常に示唆に富んでいると思えるのです。
経済同友会案では、年金制度を清算した後の“その後"には触れていません。ただ年金負担(個人および企業負担)の全額とはいかなくても、ある程度を社会保障税等の名目で徴収し、新たな制度を構築するということは可能なはずです。
別に全部を現役世代に振り分ける必要はありません。高齢者や現役世代など、世代を超えて、求められるカタチに再設計するわけです。
日本の年金議論は、これも日本のお家芸ですが、年金問題に終始して部分最適化の話ばかりしています。本来は社会保障の全体最適化のなかで、年金制度を考えるというスタンスも必要な気がします。日本の社会保障費の約半分が、年金なのですから。
参考資料
- 急激に進展する少子高齢化社会に向けた持続可能な公的年金制度への抜本改革(経済同友会、2002年)
- 平成28年度 社会保障費用統計(国立社会保障・人口問題研究所)
榎本 洋